橋口 恭博 院長の独自取材記事
天保山内科
(鹿児島市/二中通駅)
最終更新日:2024/10/10

開業から50年以上の歴史を持つ「天保山内科」は、日本一低い山である天保山や甲突川に囲まれ、豊かな自然に恵まれた市街地にある。同院を率いる橋口恭博先生は、2010年に先代院長の父親から継承した2代目院長。日本糖尿病学会糖尿病専門医、日本内分泌学会内分泌代謝科専門医の資格を持つプロフェッショナルであり、豊富な経験を生かした糖尿病治療を中心に提供している。臨床検査技師や管理栄養士、糖尿病に関する専門的な知識を持った看護師など、専門的なスタッフが在籍する。治療では可能な限り薬に頼らず食事や運動へのアドバイスで症状に導くこと、そして「ほどほどに無理なく続けてもらうこと」を重視。患者同士の交流の場づくりにも取り組む橋口先生に、診療への思いを聞かせてもらった。
(取材日2024年8月20日)
糖尿病を専門とするスタッフの連携
開業から50年以上たつ、歴史の長いクリニックですね。

先代の院長である私の父が、1972年に当院を開業しました。父も糖尿病を専門とする医師でしたので、開業当初から一貫して糖尿病を中心とした診療を行っています。私自身は、医師として働く父の姿を見て育ち、一番身近な職業でしたので、同じ道を志しました。福岡大学医学部を卒業後は、熊本県や大分県の病院に勤務しながら、日本内分泌学会内分泌代謝科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医の資格を取得しました。その後、地元の鹿児島市に帰り2004年に当院で父と一緒に働き始め、2010年に院長職を引き継ぐこととなったのです。
クリニックの特徴を教えてください。
主に糖尿病を中心とした診療を行っています。臨床検査技師、管理栄養士、看護師、事務職員と、多職種のスタッフが連携しながら治療にあたっていて、日本看護協会糖尿病看護認定看護師の資格を持つ看護師や糖尿病患者の栄養について専門的に学んだスタッフも在籍しています。それぞれの専門性を生かしてさまざまな方法でアプローチし、患者さんをサポートできるところが当院の強みです。スタッフが患者さんへカウンセリングを行う相談室も設けていますので、医師には相談しにくいことがあっても、スタッフに気軽にお話しいただけるような環境づくりも心がけています。
来院される患者さんに特徴はあるのでしょうか。

風邪などの症状でいらっしゃる患者さんもいますが、ほとんどが糖尿病関連で受診される方です。脂質異常症や高血圧症、肥満症などの生活習慣病に関わる相談も寄せられます。年齢層としては、幅広い年齢層の方が来られていますが、50歳以上の方が多いですね。患者数の多い糖尿病ですが、鹿児島県は他の都道府県に比べると専門の医師が少ない地域特性があり、近隣にお住まいの方はもちろん、市外など多方面からお越しいただいています。
何事もほどほどに、無理なく治療を続けてほしい
糖尿病の治療において、どのようなことを大切にされていますか?

まず、患者さんにご自身の病態をしっかりご理解いただけるよう、説明を丁寧に行っています。糖尿病の患者さんには継続的に通院していただく必要がありますので、治療の重要性や、治療をしないことで生じるリスクについてお伝えすることも大切ですね。また、生活習慣が主な原因となっている場合は、できるだけお薬に頼らず、食事や運動の指導に力を注ぎ、改善を図るよう心がけています。そのためには、一人ひとりの生活背景を知ることが重要になりますので、患者さんの話にしっかり耳を傾け、その方に適した自己管理の方法を指導しています。実際に、当院ではカロリーの計算含めた食事の指導も行っておりますので、気軽にご相談いただけたらと思います。
患者さんに生活習慣の指導を行う際のポイントはありますか?
何事もほどほどに、頑張りすぎないことです。糖尿病は一度発症すると長く付き合っていかなくてはならない病気ですが、一生懸命に頑張りすぎてしまうと気持ちが途切れ、続けることが難しくなってしまうこともあります。痛みなどの自覚症状が少ないこともあり、治療をリタイアしてしまう方も少なからずいらっしゃいますが、放置することで網膜症が進行して失明したり、糖尿病腎症で人工透析が必要になったりするなど、合併症のリスクが高まってしまうのです。治療を継続してもらうためにも、患者さんにはほどほどでいいということを一番強調して伝えていますし、無理のない方法を一緒に考えていくことを大切にしています。
糖尿病の患者会も主宰されているそうですね。

はい。年に1回ですが「お散歩会」といって、患者会の皆さんで一緒に歩くレクリエーションのような催しを企画し、実施しているんです。来院の際に患者さんにご案内して、ご希望であれば参加していただいています。患者さんは、自分以外の人が糖尿病の改善のために普段どんなことに取り組んでいるのか、なかなか聞く機会がないと思うのです。私たちのような医療従事者と患者さんの間で取るコミュニケーションだけではなく、患者さん同士が情報交換をし合うことで、治療のモチベーションアップにもつながるのではないでしょうか。そういった場を提供することも、大切な治療の一つだと考えています。お散歩会にはもちろん、私やスタッフも参加するのですが、普段診察室では聞けないようなお話も自然とできるので、私たちにとっても良い機会となっているんですよ。今年は秋頃の実施を予定しています。
患者との信頼関係構築を重視した診療
患者さんと接する際に意識されていることはあるのでしょうか。

先代院長の父は古い時代の人間でしたので、患者さんにも厳しく指導をしていたようで、父を知る方からは「大先生にはよく怒られたものだよ」と言われることもあるほどです。私は指導させていただく際、患者さんから「先生と一緒に治療を頑張ろう」と思ってもらえたり、気持ち良く「また次回ね」と帰ってもらえるよう、良いところは積極的に褒めるように心がけています。糖尿病は長く付き合っていかなくてはならない病気だからこそ、患者さんとの信頼関係を築くことが大切だと考えているのです。またかかりつけ医として、糖尿病以外でも日常的な診療や健康管理のほか、骨代謝や血管内科の領域など、診療できる守備範囲をできるだけ広げられるよう、日々勉強に励んでいます。そうすることで、いくつものクリニックや病院へ通わずに済むようにして、患者さんの手間を減らすことができたらという思いです。
お忙しい毎日かと思いますが、どのようにしてリフレッシュされていますか?
九州は自然が多く、景色もきれいですので、外に出ることがリフレッシュになります。登山が好きで、2000mを超える山の経験はありませんが、九州中のさまざまな山に登ってきました。他にもロードバイクに乗ったり、ランニングやテニスをしたりするなど、体を動かすことが趣味ですね。逆に家でジャズを聴きながらのんびり過ごす時間も好きです。
最後に読者へ、メッセージをお願いいたします。

糖尿病の患者さんの「目標とする血糖値の数値に到達しない」「体重が減らない」といったお悩みの原因は、それまでの治療において生活習慣へのアプローチが不十分だったこととも考えられます。当院では、患者さんの暮らしを知った上で、無理なく続けられる治療をスタッフが一丸となって提案できるよう、これからも診療にあたっていきたいと思います。糖尿病に関して何かお悩みや困り事がありましたら、お気軽にご相談ください。まずはできることから一緒に行っていきましょう。