桑畑 昭洋 院長の独自取材記事
桑畑整形外科クリニック
(鹿児島市/鹿児島中央駅)
最終更新日:2021/10/12

閑静な住宅街の一角にある「桑畑整形外科クリニック」。「手術は最後の手段である」をコンセプトに、1985年にクリニックを開業した。院長の桑畑昭洋(くわばた・あきひろ)先生は、高齢の患者には、寝たきりにならないよう、できるだけ自分の足で歩く意識づけと筋力を鍛えるためのアドバイスを行い、来院した患者は全員診察することで、小さな変化も見逃さないよう努めている。和やかな雰囲気の中で丁寧な説明を心がけ、患者との信頼関係を築き上げてきた。開院して36年、地域で愛されながら診療を続ける桑畑院長の患者への思い、診療方針などを聞いた。
(取材日2021年7月7日)
「手術は最後の手段」を信条に患者に寄り添った診療を
開業したきっかけを教えてください。

鹿児島大学医学部を卒業後、指宿温泉中央病院や鹿児島市立病院で整形外科医長を務め、1985年に開業しました。以来、36年間この地で診療を行っています。もともと私には、「手術は最後の手段。できるだけ患者さん自身の治癒力を生かす診療を行っていくべき」という思いがありました。もちろん手術は症状を改善させるために必要な場合が多いですが、手術の選択肢を選ばないで済むような疾患も多いことから、自分で開業しようと決めました。開業時からこの近辺は、60歳以上の方が多い地域でした。その上、整形外科がほとんどありませんでした。今後さらに高齢者が増えたら、必要としてくれる人が増えるのではないかと考えたのも、こちらで開業した理由の1つですね。
クリニックの特徴を教えてください。
整形外科、リウマチ科、リハビリテーション科を中心に診療を行うクリニックです。開業した当時、鹿児島市では入院設備がない無床診療所が一から開業する例はあまりなく、珍しかったようです。先ほどもお伝えしたとおり、当院のコンセプトは、「手術は最後の手段である」ということ。すぐ手術するのではなく、できるだけ患者さんの治癒力を生かした治療を行います。週2回以上の通院が必要な患者さんで、障害があり公共交通機関が利用できない方に対しては、当院のマイクロバスで送迎を行っています。
患者さんはどのような方が多いですか?

患者さんの多くはご高齢の方ですね。ケガの治療以外は骨粗しょう症など、慢性疾患の方がほとんどです。高齢になると、バランス能力や歩行能力などが低下し、「運動器不安定症」という疾患を生じやすくなります。すると、転倒したり、階段の上り下りがしにくかったりという症状が現れます。当院では、こうした運動器不安定症を発症しないよう、投薬やリハビリテーションなどで加療します。筋肉などの衰えは、加齢によって避けられないものです。しかし、普段の姿勢や、運動の習慣などを意識していただければ、年齢を重ねてもご自分の足で歩ける可能性は高くなると考えています。
慢性疾患への治療、スポーツに特化した診療に取り組む
骨粗しょう症などの慢性疾患は、どんな治療をするのでしょうか。

骨粗しょう症は女性に比較的多い疾患といわれています。閉経を過ぎたあたりから骨が弱くなっていきます。骨粗しょう症かどうかは外見だけでは判断できないため、骨密度測定器にて、骨折の頻度が高い腰椎・大腿骨で骨密度を測定、検査診断しています。骨粗しょう症の判断基準として、「若い健康な女性の骨密度を100%として、自分の骨密度がどれくらいかを比較する」YAM値があります。YAM値が80%を下回ると注意が必要だといわれています。こうした場合は投薬をしたり、食事のアドバイスをしていくことになります。定期的に通院していただき、検査をしてデータを取り、骨密度が上がらないようであれば、薬を変えるなどの調整も行っています。
骨粗しょう症の治療のために、リハビリテーションも行っているそうですね。
食事療法や投薬はもちろんですが、骨を支える筋肉を鍛えることも大切です。そのため、運動器リハビリテーションを行っています。とはいえ患者さんがクリニックにいる時間はせいぜい1時間程度。残りの23時間は、ご自身が意識をして体を動かすセルフケアが必要となります。そのため当院では自宅でできる体操もご紹介しています。ただ、やはりお一人で続けるのはなかなか難しい部分もあるようですね。大事なのは、患者さんご自身の意識改革。「歩けるうちは歩きましょう」とか「姿勢はまっすぐにしましょう」と、指導しております。
スポーツに特化した診療も行っているとお聞きしました。

スポーツをきっかけにしたケガや故障に対応しています。ケガをしないために、どのように予防していけばいいかを指導したり、ケガの治療を行ったりしています。スポーツを行う際は、特定の筋肉に負担をかけないことが大切。例えば野球で肩や肘を痛めるのは、その部分の筋肉を酷使していることが主な原因です。私自身、長年野球をしていたため、経験者だからこそのアドバイスができますし、当院では理学療法や運動療法、そして生活指導にも力を入れています。
患者との信頼関係を築いていくことが大切
診療において、大切にしていることがありましたら教えてください。

患者さんとの間に信頼関係を築いていくことが大切だと思っています。来院される患者さんは、痛みなどで元気をなくしている方がほとんどです。まずは安心してもらうための和やかな雰囲気づくり。それに丁寧な説明を心がけ、患者さんに信頼していただけるように努めています。単に「その痛みは年のせいですよ」なんて言うと、もうよくならないのかとの不安を引き起こします。レントゲン写真や骨格模型も使いながら、患者さんが理解しやすい、わかりやすい言葉で伝えるようにしています。また、来院された患者さんはリハビリが目的の方でも、きちんと顔を見て「最近どうですか?」だけでも、お話をするようにしています。そうすると、患者さんの状況を把握しやすくなりますね。
患者さんとのコミュニケーションを大切にしているんですね。
整形外科にいらっしゃる患者さんは皆、体に痛みや不具合を抱えていて、つらい思いをされています。痛みというのは感覚です。感覚は、気持ちの持ちようである程度変わってくる場合が少なくありません。例えば痛い部分があっても、楽しいことや好きなことをしているときは、それほど意識しない場合もありますよね。なので、患者さんを笑顔にできるよう、楽しい話をすることが多いです。あまり大きな声では言えませんが、高齢の患者さんには、健康のためにいろいろ我慢するよりも、好きな食べ物も少しは食べ、楽しいことは積極的にするほうがいいですよ、と伝えています。つらそうだった患者さんが、にこにこしながら帰宅されていくのを見るのは楽しみです。
最後に、読者へのメッセージをいただけますか?

患者さんには「自分の体は自分で治すもの」と考えてほしいと思っています。もちろん、手術が必要な病気もあります。でも、いくら治療を施したとしても、ご自分に「治したい」という意思がないと、なかなか改善に結びつかない場合があります。特に、当院はご高齢の方が多いので、できる限りご自分の足で歩き、毎日を楽しんでいただきたいと思っています。そのためには、自宅でできる体操や運動なども取り入れてもらえたら。毎日朝昼晩10分ずつコツコツと行うのが理想ですね。そうすることで、筋肉はついていくでしょう。まずは「毎日を元気で過ごそう」という意欲を持ってもらえたらうれしいです。