團野 大宗 院長の独自取材記事
だんのクリニック
(宮崎市/田野駅)
最終更新日:2024/12/27
宮崎市中心部より県西の都城方面へ車で約30分の田野町にある「だんのクリニック」。長く地域に親しまれていた小村医院を團野大宗院長が事業継承し、2024年8月に開業した。地域に根差したクリニックとして、内科・外科を標榜し、さまざまな主訴に対応する。「田野町は医療機関が少ないので、体のことで困った時にはまず来ていただきたいです」と團野院長。必要に応じて専門医療機関へ紹介できるような体制も整えている。開業してまだ間もない團野院長に、同院の特徴とこれからの展望などを聞いた。
(取材日2024年11月25日)
長年にわたり、地域医療を支えてきたクリニックを継承
開業にあたり田野町を選んだ理由を教えてください。
こちらに来る前は西都市で勤務医をしていて、新規開業を考えて土地探しをしたのですが、なかなか見つからなかったんです。そんな中、業者の方にクリニックの継承には興味がないかと聞かれました。それはまったく頭になかったので、1回話を聞かせてもらおうということで、小村医院の小村先生にお会いしました。そこで、小村先生のお話をお聞きして、こちらの医療の内容が、僕がやりたかったことに近いなと感じたんです。いろいろ考えた結果、継がせてもらうことにしました。僕自身が兵庫県出身で、大学も岐阜県なので宮崎に縁があったわけではありません。2006年に延岡市へ来たのですが、それもたまたまでして、九州に来たのはそれが初めてだったくらいなんです。宮崎に初めて来た時、空が広いなと感じたことを覚えています。
実際に開業されてみていかがですか?
前の勤務先は西都市の市街地から離れた場所でした。周りは田んぼで穏やかな環境がこちらと似ています。ただ、当院の開業当初は全然のんびりとしていなかったです。新規開業だと、ゼロから始めて少しずつ患者さんを理解していく流れですが、僕の場合は事業継承でカルテごと引き受けたので、既存の患者さんがいる状態だったんです。皆さんの顔と名前を一致させないといけないし、どういうことで困っているのかを頭に入れないといけないし、てんてこ舞いでした。家族構成や子どもの有無、困った時に助けてくれる人がいるのかなど、患者さんの背景も含めて知らないといけない。そうなるには1年や2年での習得は難しく、これからだと考えています。その辺りは最初からわかっていて、小村先生がされていた地域のクリニックとしての役割をしっかりと引き継ぎ、地域の皆さんに頼っていただける存在になれたらいいなと思いながら日々の診療に向き合っています。
患者さんはどのような方が多いですか?
ご高齢の方が圧倒的に多いです。60代以降が多くて90代の方もたくさんいらっしゃいます。田野町の地域の方がほとんどじゃないかと思います。お子さんからご高齢の方まで、小村医院の頃から通われている人が、引き続き来てくださっています。受診理由としては、高血圧症、糖尿病、脂質異常症など生活習慣病の患者さんが多い傾向にありますね。
話をしっかり聞き患者の背景まで理解する医師に
医師をめざしたきっかけを教えてください。
高校1年生の時に阪神淡路大震災で被災しているんです。僕自身は避難所には行かなくて済んだんですけれど、避難している人が周りにもたくさんいたんです。そういった場所で、お医者さんが被災者に貢献しているのを目の当たりにしたことが大きかったと思います。他にも、同級生が自ら命を絶ってしまった経験があって、それを機に精神科の医師になろうと思っていたこともありました。最終的には地域医療を志すようになりましたが、そこに至る一つのきっかけとして震災は大きな出来事でしたね。
医師になってからのエピソードで何か印象に残っていることはありますか?
岐阜県にいた頃、下呂市の病院に勤めていたんです。そこから車で20分くらい行った所の、普段は誰もいない診療所へ週1回診療に行っていたことがありました。その時だけ開院する診療所で、地域の高齢者が受診されるんです。その時に、患者さんと話をしながら診療するのが楽しかったんですよね。大きな病院で手術をどんどんやっていくよりも、小さい病院でお話をしながら一つ一つ問題解決をしていくほうが僕には向いてそうだなと感じたんです。それまで働いてきた病院でも、訪問診療や、ご高齢の方と話す中で出てきた問題解決に頭を使っているほうが、感覚的に向いているなと思っていました。最終的に勤めた西都市の三財病院の医療は地域医療そのものでしたし、小村先生もこちらでそれをずっとやってこられていました。その診療所での経験、小村先生との出会い、そして今につながっているなと思っています。
診療の際に心がけていることを教えてください。
患者さんの話を聞くことです。話すのが「いつもの薬で」だけであっても、それはそれで良いと思いますが、「今日はこれを言いたい」ということもあるでしょう。ちょっと時間が長くなっても、話をじっくり聞くようにしています。これは12年くらい西都市の三財病院でやっていたことでもあるのですが、名前を見ただけで誰が誰の家族かということや、その他のつながり、背景まで把握することを大切にしています。そこがわからないと地域医療はできないと思っています。本人に連絡が取れない場合の緊急連絡先までも聞くようにしていましたね。ここが良いと思って来てくれて、僕に診てほしいと思ってもらわないと当院の存在価値はないという考えで、患者さんと信頼関係を築いていきたいですね。
困ったことがあれば一番に思い浮かぶ医療機関をめざす
こちらならではの診療はありますか?
僕自身、消化器外科出身なんです。消化器がんの手術などをしていたこともあります。他にもけがした箇所を縫ったり、脱臼を治療したりなど幅広く診ることができます。検査は超音波、血液、心電図、尿までの対応にはなりますが、当院ですべてを完結するのではなく、もっと検査が必要かどうかを判断して、総合病院などに紹介できれば良いかなと思っています。田野地区に医療機関はそんなに多くはありませんし、眼科・小児科・耳鼻咽喉科など、どこに行けば良いか判断する窓口になれれば、それも一つの存在意義だと思っています。他には、インフルエンザの診断に役立つ医療機器を導入しました。僕も子どもが5人いますが、痛みに弱い子もいて。インフルエンザの検査も嫌がって行かないんですよね。注射が怖いお子さんのために、鼻に噴霧するインフルエンザワクチンも取り入れています。怖がらずに来てもらえたらうれしいです。
お休みの日には何をされているのでしょうか。
先ほどもふれましたが、子どもが5人いるので、子どもたちと過ごしています。あと、大型犬3頭と、猫2匹を飼っているので、その子たちのお世話をしたりですかね。最近は忙しくてあまり行けていないのですが、海や川に連れていって一緒に過ごしたいなと思っています。時間があればゆっくり犬の散歩も行きたいですね。子どもがいる時間が趣味みたいなもので、今一番の楽しみです。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。
何か身体的なことで困ったことがあったら、だんのクリニックに行って相談しようと思い浮かべてもらえる医療機関になりたいと思っています。どんな不調でも良いんですけど、とりあえずここに行ってみようと思ってもらえるクリニックをめざしたいです。検査などの痛みにも配慮しているので、病院が苦手なお子さんにも来てもらいたいですね。田野町近辺だけでなく少し遠い場所からでも、幅広い年齢層の患者さんに来てもらえたらありがたいです。調子が悪くなって受診という流れではなく、ついでに来られるような場所にしていけたらとも考えています。自分の歯で噛んで、自分の足で歩ける人生を送ってほしいので、気になることがあればどんな些細なことでも構いません。早めに来ていただき、何でもご相談くださればと思います。