岸 昌廣 院長の独自取材記事
岸医院
(延岡市/延岡駅)
最終更新日:2026/03/03
宮崎県北部に位置する延岡市。延岡城跡で知られる城山公園を眼前に臨む「医療法人甲申会 岸医院」は内科、消化器内科を標榜する。3世代にわたりバトンを受け継いできた同院は2025年より岸昌廣先生が継承し理事長・院長を務めている。それを機にリニューアルを行い、患者の動線を最短化するとともに内視鏡検査を受ける患者のための専用トイレつき個室を完備。また高齢者や車いす利用者に配慮し駐車場も使い易く改良した。岸院長は福岡の高度医療機関で研鑽を積んだ消化器内科の専門家。難治性の炎症性腸疾患(IBD)のプロジェクトに携わった経験を基盤に患者と医師がともに治療方針を決定するシェアード・ディシジョン・メイキング(SDM)という共同意思決定の手法で治療を行っている。新たな診療スタイルで患者と向き合う思いを聞いた。
(取材日2026年1月30日)
慣れ親しんだ延岡で、患者ファーストのリニューアル
こちらは先生が幼い頃から親しんでこられた場所だそうですね。

実家がこの裏にあるんです。開業医をしていた祖父は、以前祖母とここに住んでいました。私が小学生の頃に同居するようになり、父が医院を継承して先代院長になりました。私は岸医院の3代目ということになります。幼い頃、目の前の城山公園でよく遊びました。秘密基地っぽくて(笑)、いい場所ですよね。高校までは延岡でしたが、大学からは福岡へ進学。福岡大学医学部卒業後、研修医、大学系列病院の勤務医を経て2023年に帰郷し、当院の医師となりました。私にとって慣れ親しんだ場所での新スタートとなりました。
医師をめざしたのはおじいさま、お父さまの影響ですか。
子どもの頃から医師という職業を身近に感じていました。その中で、普段は比較的寡黙な父が、日々の診療後には充実した楽しそうな表情をしているのを見て、自然と医師という職業に憧れるようになりました。自分が実際に医師になってからは、父が時折厳しい表情をしていた理由もわかりましたが、それとともに医師という仕事のやりがいをより強く感じましたね。
代々続く医院をリニューアルされました。どのような点が変わりましたか?

以前は診察室が1階で2階が内視鏡室だったんですが、それだと動線がどうしても1階と2階に分かれ患者さんの負担になることもありました。 今回のリニューアル工事では、基本的なコンセプトとして、患者さんの動線が最短となるようにということを重要視して、患者さんの負担軽減をめざしました。最初に設計図を見た時は、はっきりとはわからなかったのですが、完成したら「ああ、なるほど、かっこいいな」と(笑)。私たちスタッフにとっても、すごく便利になりました。患者さんへのアクセスや、検査の誘導もしやすい。広くなった分、私自身よく歩くようになりました。運動になっていいですね。また、駐車場もハンディキャップのある方専用のスペースを広げるなど、患者さんがスムーズに移動できるようリニューアルしました。とても止めやすく、出入りしやすくなったと思います。
患者の意思を尊重し、納得のゆく治療を一緒に進める
消化器内科を選んだ理由を聞かせてください。

父が内視鏡検査を得意としていたこともあり、以前から興味を持っていました。でも、大学や研修医時代はなんて難しい検査なんだろうと思っていましたね。内視鏡検査は、初めはなかなかうまくできず悩みもしましたが、悩むほど、また症例を診るほどに、技術が成長し続けられるんです。その点も消化器内科が好きになり選んだ理由の一つです。福岡大学病院での2年間の研修では、さまざまな科もローテーションしました。その後、福岡大学筑紫病院という福岡大学系列病院の消化器内科に入局しました。 そこを選んだ理由は、全国的にも消化器でハイレベルなところでしたから。ハードなイメージの医局ですが、縦横のつながりも太くアットホームな雰囲気でしたね。
そこで修練を積まれたのですね。印象に残っていることはありますか。
消化器内科局では、食道、胃、大腸などをメインに診療を重ね、とても勉強になりました。また、大切な出会いもたくさんありました。特に、私に医療のいろはを教えてくださった先生がおられます。仕事は厳しく、普段はとても温かい素晴らしい方。先生からお声をかけていただき、厚生労働省の「難治性の炎症性腸疾患(IBD)に関する調査研究」というプロジェクトに参加しました。一緒に仕事ができたのは、私の中でとても大きな出来事でした。現在の自分の基盤の一つとなっています。2023年、岸医院の継承を視野に、筑紫病院を退局し延岡に帰ってきました。近年、潰瘍性大腸炎やクローン病など炎症性腸疾患(IBD)患者が増えています。プロジェクトでの学びは、私の診療の考え方の基本になり、現在の診療に大いに活用しています。
先生が診療で心がけていること、ポリシーは何ですか。

患者さん本人の意思を第一に重要視しています。 病気の種類や悩みは人それぞれですし、病気に対する考え方も違いますから。 患者さん本人にとって、最も納得のいく治療法などを一緒に選んで使えるような医療を心がけています。そう考えるようになったのは「シェアード・ディシジョン・メイキング(SDM)」という共同意思決定の考え方を知ってからですね。難治性の炎症性腸疾患(IBD)の患者さんを診る時、発症したら生涯にわたって薬を飲み続けるという治療を、受け入れてもらうことがなかなか難しかったんです。さまざまな模索の中でSDMの論文と出会って、長く続く慢性的な疾患の場合、医師が一方的に決めるのでなく患者自身が納得して治療を選択する方法があることを知り、自分はこの診療スタイルを核にしようと決めました。
地域との連携で、突き放すことのない安心の医療を
内視鏡検査を受ける方が増えているそうですが。

とても増えていますね。とにかく、がんが初期で見つかればいいと思います。若くてもおなかの調子が悪い、下痢になりやすいという方が検査してみると実は……ということもあります。 内視鏡検査や、そこに行くまでの血液検査などで総合的に診断していきます。 下痢や血便などを放置してしまっている方もたまにいますが、腹痛、下痢、血便は代表的な症状です。便血潜検査の結果、やっぱりという方もいます。昔からおなかが緩くても、そんなもんでしょと思っている人が結構多いですね。健康被害がすぐに出てくるので、早く検査して適切な治療を始めることが大切です。将来的な健康被害を回避するためにもぜひ受診してほしいです。とにかく早く悪いところを見つけてあげたいと思っています。
岸医院の強み、自慢できる点など聞かせてください。
当院の内視鏡検査は、患者さんの苦痛を少しでも軽減できるよう希望者には麻酔を用いています。また、リニューアルを機に個室の処置室を設けました。プライバシーが守られ、検査前にゆっくり下剤を飲んでもらうこともできます。室内には専用のトイレも備えていますから安心です。当院のスタッフは気さくな人ばかり。アットホームな雰囲気で、高齢の患者さんとの会話では時々私にはわからない方言も飛び交っています(笑)。延岡は横のつながりが強いという特徴があると感じます。地域の病院や専門の先生との連携がスムーズなのは、ここで開業して良かったと実感する点です。ある症例を専門の先生にちょっと相談したいなと思った時に、専門の先生たちが気さくに引き受けてくれます。このエリアはすごくハードルがなだらかというか。地域の先生の皆さん、本当に良くしてくださいます。
読者に向けてのメッセージをお願いします。

何か気になることがあるとか軽症の段階でも、遠慮などせず気軽に相談していただければと思います。それが一番ですね。たとえ当院の専門外だったとしても「この医療機関に行ったらいいよ」というアドバイスができるようにしたいです。それが内科医のキャパシティーを広げていくことだと思いますから。私の専門ではなくて対応が難しいものでも、この先生に相談すれば大丈夫だよという、イントロダクションができれば。 突き放すようなことはしないので、どうか安心して来ていただければと思います。

