稲倉 琢也 理事長の独自取材記事
稲倉医院
(宮崎市/宮崎駅)
最終更新日:2025/03/10

宮崎市中心部より高松橋を越え西へ、飲食店やクリニック、スーパーなどが点在する大塚町にある「稲倉医院」。同院は院長を兼任する稲倉琢也理事長の父で前院長の稲倉正孝先生が1981年に開業した地域密着の医院。地域のかかりつけ医として内科・胃腸科・呼吸器内科・放射線科の診療に対応し、病床も備えているため、手術後など必要な際は入院できる体制が整っていることも患者の安心につながっている。患者の希望やライフスタイルを考慮した上で、可能な限り負担を少なく、治療を継続できる方法を提案するなど、その人に合ったオーダーメイドの診療を提供。そんな琢也理事長に、同院の特徴や地域医療への思いを聞いた。
(取材日2024年12月12日)
40年以上の歴史を受け継ぎ、地域に貢献を続けたい
先生が理事長に就任された経緯を教えてください。

当院は、先代である私の父が40年以上前に開業しました。開業当時、私は小学校5年生。父は准教授として勤めていた宮崎医科大学(現・宮崎大学医学部)を退職して、この地に開業しました。私は愛媛大学医学部を卒業し、九州大学や九州がんセンター、千葉の亀田総合医院で経験を積んだ後、2007年に地元宮崎に帰り、当院を継承しました。地域に根づいたかかりつけ医として近隣の大塚・小松・江南地区から通院していただいております。父の代から長年通い続けてくださる患者さんもいらっしゃいますし、2世代、3世代と通ってくださる患者さんもいます。地域の方たちの健康長寿のお手伝いができるのはありがたく思っています。
患者さんの主訴は、どのようなものが多いですか?
目立つ主訴を限定することは難しいのですが、来院の約半数が生活習慣病の治療で、具体的には高血圧・高脂血症・糖尿病などで通われています。あとの半数近くが胃腸に関する相談ですね。消化器内科の領域では胃潰瘍や逆流性食道炎、食道がん、胃がん、大腸がん等の疾患、高血圧症や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病、喘息、肺気腫、睡眠時無呼吸症候群などにも力を入れています。
医師をめざしたきっかけはありますか?

医学部進学を決めたのは高校生の時で、それまでは外交官に憧れていました。父から医師になるように言われたこともなかったですし、私の意思を尊重してくれていたのでしょうね。しかし、いざ進路を決める際、周囲に医師をめざす友人が多かったことや、私の父が医師であると知っている教師からの助言もあり、医学部進学を現実的に考えるようになりました。幼い頃から身近に医療がある環境にいて、救命につながる仕事だという認識もあり、自然と医師をめざすようになりました。
長期の治療を継続するための二人三脚
診療で心がけていることはありますか?

患者さんの視点に立ってお話しし、理解・納得してもらうことを重視しています。治療は継続が肝心です。モチベーションが下がって途中で治療をやめてしまうことが最もいけないことで、当院の方針が合わなくても別の医療機関で治療を続けていただければ良いのですが、治療そのものを放棄してしまうことが一番問題です。ですから患者さんご本人のお気持ちを大切に、治療へのモチベーションを上げる配慮をしています。治療を続けるためにも、無駄な薬の処方や検査はしないようにと考えて診療しています。生活習慣病は長期にわたって治療が続き、費用もかかりますから、できるだけ負担を少なく治療を続けられるようにケースバイケースで可能な範囲でできる治療のご相談に乗っています。
こちらの医院ならではの特徴や強みは何でしょうか?
地域密着の医院でありながら、入院できる体制が整っている点が特徴だと思います。いざという時にいつもの医院ですぐに入院できることは患者さんにとっては安心材料になるでしょうし、それが理由で通っている方もいます。有床により手術後のケアも丁寧にできます。最近は無床クリニックで日帰りで治療される施設も多いですが、多発ポリープなどの手術の際はやはり入院が望ましいと思います。病床があることで入院の選択肢が取れることは、さまざまな面で安心感につながると思います。
現在の診療体制について教えてください。

現在、当院には3人の医師が在籍しています。医師1人で運営していると1日に数人しか対応できませんが、3人いることで入院や在宅医療の対応ができる体制になっています。常に2人は常駐しているため、1人が外来を担当し1人は内視鏡に専念する……といった対応ができます。緊急時の対応も2人以上医師がいれば柔軟にできます。例えば「魚の骨が引っ掛かった」「黒い便が出る」など、緊急を要する際もあまりお待たせすることなく緊急内視鏡検査・治療が可能です。
先生の専門分野について、これまでの経歴や経験を教えてください。
大学時代は、人生で一番遊んだ時期でした。当時の医大はあまり厳しくなかったこともあり、青春を謳歌しました。そのしわ寄せもあって国家試験前は人生で一番、猛勉強をしてなんとか1回で合格することができました。卒業後は、父が胃腸科の医師だったこともありますし、将来的に実家に戻って父の経営する医院を継いで開業医となることを見越して、全身を診られるようになりたいと考え九州大学放射線科に入局しました。研修医時代は、全般的に診療することに役立ち画像診断もできる放射線科で過ごしました。九州がんセンターではがんを中心とする多くの症例を経験。当時盛んになってきたESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)などの内視鏡治療を多くこなしたいと考えて、症例が多い千葉の亀田総合病院の消化器内科へ入局、数多くの症例を経験し内視鏡の技術を磨きました。忙しかったですが医師人生で一番楽しい時期でしたね。
がんの早期発見のため、定期検診の重要性を啓発
休日はどのようにリフレッシュされていますか?

休日は小学生の娘と何かしらして一緒に過ごすことが多いです。趣味は船釣りと旅行ですが、今は日曜日しか休みがないこともあり、遠征が難しいので最近は行けていません。自分の趣味は娘が親離れして時間ができてからでも良いかなと思っています。あと健康維持のために毎日15分の筋力トレーニングと、週2回ほど2kmの水泳をしています。糖質は気にしていますが、菓子パンが好きでやめられないのが悩みですね(笑)。
先生は定期検診の啓発にも力を入れているそうですね。
以前、腰痛を訴えて来られた20代の方が実は大腸がんの多発転移で手遅れの状態だった、ということがあり、印象に残っています。以前は上下部とも内視鏡検査はきついというイメージがあり検査を嫌がって受けていない方も一定数いらっしゃいます。痛みが出てからようやく検査をし、がんが発覚した時には末期だった……ということも、悲しいですが現実にあります。胃がん、大腸がんは、早期発見・早期治療ができればほとんどの場合で治癒が期待できる病気です。症状がなくとも定期検診の重要性を日頃から発信し続けるように努めています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

男性は3人に2人、女性は2人に1人の割合でがんを患うといわれています。「症状がないから」「お通じがいいから」と、がん検診を受けない方が見受けられます。しかし、がんの多くは初期症状がまったくなく、よほど進行しないと自覚症状は出ません。自覚症状が出てからでは手遅れになりかねません。胃がんや大腸がんは、早期発見・早期治療ができればほぼ治癒が期待できます。年1回はがん検診を受けていただきたいです。内視鏡検査に怖いイメージをお持ちの方もいると思います。実際、昔は苦しまれる患者さんも多かったのですが、今は眠った状態で楽に受けられる方法もあります。苦痛は少なく、見落としがなく早く終わるには修練が必要です。どこよりもいい検査ができるように努めていますので、安心して受けていただきたいですね。今後も地域の皆さんの健康を支え、地域医療に貢献していきたいと考えていますので、些細な心配事でも気軽にご相談ください。