田尻 守拡 副院長の独自取材記事
田尻医院
(玉名郡南関町/新大牟田駅)
最終更新日:2024/02/19

熊本県の北部に位置する玉名郡南関町で明治時代初期に開業、約160年にわたり地域のかかりつけ医として親しまれる「田尻医院」。2023年、現在クリニックを支える田尻守拡副院長の就任を機にリニューアルし開院した。約30台収容可能な大型駐車場を新設し、従来の院内処方から院外処方に変更したことで処方可能な薬の種類を増やすなど、患者の利便性を高めたという。専門である呼吸器内科をはじめ、幅広い診療に対応する田尻副院長は、アイアンマンレースに出場を予定するほどの筋金入りのスポーツマン。昼休みにはジョギングで体を動かすというアクティブな田尻副院長に、これまでの歩みや心がけていること、新たなスタートを切ったクリニックへの意気込みなどを聞いた。
(取材日2024年1月19日)
約160年にわたり地域住民の健康を見守り続ける
明治時代から地域に親しまれてきたんですね。

私で6代目になります。約160年もの間、熊本県と福岡県との県境にある南関町の皆さんに支えていただき、本当にありがたいですね。昔から幅広い世代の患者さんに対し、幅広い疾患を診てきたと聞いています。近年、南関町は過疎化が進んでいます。人口は私が子どもの頃は1万人以上でしたが、今では9000人を切っているようです。高齢化率も4割ほどといわれており、当クリニックも高齢の患者さんが多いです。そのため、手術に対応できる他の病院とも連携しながら、患者さんにこれまで以上に手厚い医療やサービスを提供していく必要があると考えています。
先生はご専門の呼吸器内科以外の分野の診療も、数多く経験されたと伺いました。
はい。国立病院機構熊本医療センターで3年ほど救急医療に携わりました。救急専門の外来は多岐にわたる疾患を診るので大変でしたが、若いうちに医療の基礎を一通り学ぶことができ、貴重な経験になりました。その後、卒業した久留米大学医学部に戻り、呼吸器・神経・膠原病内科にて内科全般の症例にふれたことも、今の診療に大いに役に立っていると実感しています。専門の呼吸器内科については、特に福岡県済生会大牟田病院において多岐にわたる疾患の診療経験を積みました。また、新型コロナウイルス感染症の流行時には、感染対策委員長として院内感染対策に取り組みました。その後、呼吸器内科部長を経て副院長に就任してからも、外来と早朝の病棟回診の診療を継続し、常に患者さんと向き合うよう心がけていたつもりです。
複数の急性期病院などで勤務された後、こちらに戻られたのですね。

当初から継ぐつもりでしたので時々手伝いに通うようになり、満を持して2023年の春に当クリニックに戻りました。就任を機に取り組もうと考えたのは、患者さんに落ち着いた気持ちで過ごしていただけるクリニックへのリニューアルです。患者さんがほっとできるような、木のぬくもりに包まれた開放感のある空間に仕上がったと思います。主なところでは、処置室をさまざまな治療に対応できるようなレイアウトにしました。また、感染症の可能性がある患者さんの動線をはっきりと分離し、コロナ禍での診療経験と、「診療後に安心して帰ってもらえる診療を心がける」という私のモットーを反映しています。
できる限り多くの症状を診療できる体制を整備
リニューアルされたとのことですが、地域のかかりつけ医としてのスタンスは変わらないのですね。

もちろんです。当クリニックは開業時より「よろず相談所」のような存在として地域の皆さんと歩んできました。ですから、先ほどお話ししましたように内科や呼吸器科以外も窓口として診察しています。「どの診療科にかかれば良いか」といったご相談も受けつけていますし、健康診断の啓発はかかりつけ医として当然の責務ですので、ワクチン接種をはじめ、それぞれの患者さんに必要な予防接種などをお勧めしています。福祉施設や介護サービスについてのご相談を受けることも少なくありません。また今回、院内処方から院外処方に切り替えたことで対応できる薬の種類を増やしましたから、患者さんには便利になったのではないでしょうか。夜間・休日診療にも、院長と私で役割分担をしながら柔軟に対応しているので、地域の皆さんには心強く感じていただきたいですね。
診療面などで新しい試みなどはありますか。
リニューアルに伴い、診療科目に皮膚科を増やしました。週に数回、皮膚科の専門の医師が診療しています。この地域には皮膚科をはじめ専門分野に特化した医療機関が少ないので、多くの方が遠く離れた医療機関にわざわざ通院しています。そんな状況を見て、かねてより「当クリニックが対応できる範囲で、何とか患者さんの治療を完結させたい」と考えていました。家族に皮膚科の専門の医師がおりますので、ただれや発疹、虫刺され、水虫といったご相談の多い疾患・症状の診療ができればと思い、皮膚科も標榜することにしたのです。少しでも患者さんの役に立てることがあれば、今後も積極的に取り入れてまいります。
診療において特に力を入れていることを教えてください。

呼吸器内科で喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の診療に携わっていましたので、呼吸器疾患の治療に尽力しています。呼吸器疾患は、かかる前のリスクコントロールが大事です。喫煙に関係する疾患が多いので禁煙の重要性をアピールしている他、すべての患者さんに対し初診で喫煙歴をチェックしています。若い世代には睡眠時無呼吸症候群が潜在している方も多いですね。いびきや睡眠中の無呼吸を周りの人に指摘された経験がありましたら、医師への相談をお勧めします。当クリニックは風邪をひいたのではと来院される方がかなり多いのですが、風邪は肺炎との区別がつきにくいので、呼吸器内科に強みがあることは患者さんにとってもプラスに働いていると思いますし、そう願いたいですね。
患者に安心して帰ってもらえるように努める
さまざまな症状の患者さんが来院されるので、スタッフの皆さんもお忙しいでしょうね。

診療内容の広さに加え、施設に入所されている方などの高齢の患者さんからの訪問診療のニーズが高いので、体制をしっかりと整えています。月1回のミーティングで院内環境の改善や仕事の方法の見直しなどを話し合っています。また、以前から「整理・整頓・清潔・清掃・しつけ」の5つのSからなる「5S運動」に全員で取り組んでいます。院内が雑然としていては、患者さんからの信頼が揺らいでしまうと思うので、今後も全員で理念を共有していきたいです。
地域のクリニックという今までとは異なる環境には慣れてきましたか?
扱っている病気が少し異なる程度で基本的には何も変わっていません。患者さんがお帰りになる際に、安心した表情になっていただけるように努力しています。当クリニック全体で心がけているのは、大きな声であいさつをすること。ハキハキとしたあいさつから診察を始め、お帰りになるときは「お気をつけて」と必ず声がけをしています。末永く地域の皆さんの健康に貢献していきたいという思いが代々受け継がれた環境にいたからか、私も自然と医師を志すようになりました。これからも当クリニックで多くのことを患者さんから学び、成長していきたいですね。
お忙しい中でどのようにリフレッシュされていますか?

時間を見つけては極力体を動かすようにしています。勤務医時代に今よりも10キロほど太って困っていた時に、ちょうど開催されたマラソン大会に参加したのがきっかけです。医師はスケジュールが流動的な仕事ですので、ジョギングやマラソン、水泳、サイクリングなど個人でできる運動から始めました。今はトライアスロンの大会に定期的に参加し、さらにハードなアイアンマンレースにも挑戦予定です。仕事中も昼休みにジョギングをするなど適度に息抜きを挟みながら、メリハリをつけて診療に臨んでいます。
最後にメッセージをお願いします。
診療後、患者さんに安心していただけるかかりつけ医をめざして、その役割を十分に発揮することが責務だと思ってます。精密検査や手術が必要な場合も、以前勤務していた病院の他、くまもと県北病院や荒尾市立有明医療センターなどの複数の病院と連携し、治療中も責任を持ってフォローにあたります。呼吸器に限らず、体に気になることがある、介護などで不安なことがあるといったことも、気軽に相談していただきたいですね。