進藤 洋一郎 先生の独自取材記事
医療法人 進藤医院
(糸島市/波多江駅)
最終更新日:2023/07/11

波多江駅から徒歩10分の場所に立つ「進藤医院」は、戦後間もなく開院した歴史あるクリニック。長きにわたり、地域のかかりつけ医として重要な役割を果たしてきた。現在院長の長男である消化器内科医の進藤洋一郎先生が主力となり、患者のさまざまな訴えに耳を傾ける。特に、胃がんと大腸がんについて高い専門性を持ち、総合病院にて消化管内視鏡チームの部長を務めた経験もある。「地域の人に無理をしない生活習慣病の治療や定期健診の大切さを知ってほしい」と話す洋一郎先生に、クリニックの診療方針や力を入れている治療について話を聞いた。
(取材日2023年5月11日)
祖父から父、息子に受け継がれる地域医療への思い
長い間、糸島で貢献されてきたクリニックなのですね。

当院は、医師だった私の祖父が戦後間もなく開業しました。1980年に現在の場所に移転し、今は外科医である父と小児科医の母、消化器内科医の私の親子2代3人で診察を行っています。昨年には改装工事を行いまして、新たな機能を取り入れ、より明るく清潔感のある院内にリニューアルしました。個室の問診室は、血圧測定や診察前の問診をプライバシーに配慮して受けていただけるためのお部屋です。また、新型コロナウイルス感染症の患者さんと一般の患者さんが接触せずに受診できるよう専用の診察室も新たに備えました。さらに、内視鏡検査を受ける際に下剤を飲む方のためトイレつきの個室も2部屋用意しましたので、これまで以上に診察や各種検査が受けやすい環境になっていると思います。
どのような患者さんが多くいらっしゃいますか?
糸島や福岡市西区など近隣にお住まいの患者さんがほとんどで、お子さんからご高齢の方まで幅広く診察しています。祖父の代から家族ぐるみで通っていただいている患者さんもいて、本当にありがたいですね。内科、消化器内科、外科、小児科を標榜しているので、体調を崩した時や検診を受けたい時にはとりあえず当院へ、と思っていただけているのだと思います。私は3年前に当クリニックへ戻ってきたのですが、診察や治療を通して地域の皆さんに信頼していただき、期待に応えたいと強く感じています。
先生が医師をめざしたきっかけや、これまでの経歴について教えてください。

もともとは教師になりたかったんです。その一方で、両親の働く姿を見て育ち、幼い頃から医師を「いい仕事だな」とも思っていました。ある時、中学・高校の恩師から「医師も健康や病気のことを人に教えられるし、その人の人生を一緒につくっていける素晴らしい仕事だよ」と言われ、その言葉がきっかけで医師をめざすことに決めました。大学卒業後は、久留米大学病院や筑後市立病院、亀田総合病院で経験を積みました。筑後市では高齢者が多く、がん、そして心筋梗塞や脳梗塞といった心臓や脳の病気で苦しむ患者さんもたくさん見てきました。これらは高齢者の死因となる3大疾患でありながら、初期段階では無症状で非常に気づきづらいのが特徴です。定期的な受診や健診でこれらの病気を早期に見つけ、治療する大切さを伝えたいと考え、ふるさとへ戻ってきました。
健康なうちに定期健診を受ける重要性を知ってほしい
健康寿命を延ばすため、生活習慣病の治療に力を入れていると聞きました。

高血圧や糖尿病といった生活習慣病は、脳卒中や心臓病を引き起こし、健康寿命を縮める原因となります。生活習慣病を改善するためには食事を変えたり、適度な運動を取り入れたりする必要があるのですが、続けてきた生活スタイルを変えるのってとても難しいですよね。健康づくりは一生継続しなくてはならないものなので、極端な生活習慣の変更は続かないことが多く、リバウンドを招きます。そのため、無理をしない食事療法、運動療法を患者さまと話しながら作っていくように心がけています。加えて、当院では、一般的な健診のほか、がん検診も行っています。中でも、私の専門である消化管内視鏡検査は強みの一つです。これまで各病院で胃がんや大腸がんの治療を担当し、早期がんから進行した状態まで数々診てきました。
消化管内視鏡検査に関しては、早期発見を重視されていると伺いました。
そうです。内視鏡検査を受けていただき早期に発見できれば、がんが転移を起こす前に治療が済むので再発の心配も少なくなることにつながりますし、おなかを切らずに治療できます。外科手術をしても胃がなくなれば術後は食事量が減ってしまいます。大腸切除も術後の癒着性イレウスなどの合併症を起こすリスクがあります。苦痛の少ない検査で見つけにくいものも早期発見できるよう研鑽を積んでおりますので安心して受けていただきたいです。日本人のがんの罹患率は、胃がんや大腸がんが高いことは皆さんご存じかと思います。がんには早期に見つけにくいものと見つけやすいものがあり、内視鏡で直接状態を診ることができる胃がんや大腸がんは見つけやすいがんと言えます。40歳になったら必ず1度は内視鏡検査を受けてもらいたいと思います。
定期健診や検査が必要な理由と、内視鏡検査の適切なタイミングについて教えてください。

人は、特に仕事や育児に忙しい時期には、体のことは後回しにしてしてしまいがちで、健康の大切さに気づかないものです。そんな方々に伝えたいのは、定期健診は車検と同じだということ。車を持つ方であれば、異常がなくとも定期的に車検に出しますよね。それは、専門家を通し異常がないかを調べ、事故を未然に防ぐためです。定期健診も同じです。健康なうちに病気の端緒やリスクを見つけ出すことで、治療が何倍も楽になりますし、入院や手術の予防につながります。検査のタイミングですが、大腸がんは高脂肪食や家族に大腸がんの患者さんを持つ方などがリスクになります。現在の日本人は多くの方が高脂肪食を摂取しておりますので40歳になったら検査をお勧めします。胃カメラについては、ピロリ菌に感染している方や感染していた方は胃がんになる確率が高い傾向にあります。感染が疑われる方は、20代などの早いタイミングで一度検査することをお勧めします。
患者に寄り添い、患者の求める医療を提供する
かかりつけ医として、大切にしていることはありますか?

患者さんの話をよく聞いて、何を求めているのか知るということです。同じ症状や病気であっても、どのような治療を受けたいのかは患者さんによって異なります。一方的に医療を押しつけても、気持ち良く治療を受けてもらえません。病気や治療、そして健康寿命との関連についてしっかり説明することで、患者さんに理解してもらい、納得して治療に臨んでもらえるよう努めています。あとは、当院だけですべてを完結しようと思わないことですね。クリニックにできることは限られていますので、より専門的な治療が必要な場合には、連携している病院に紹介状を書き、迅速に次へつなげています。
今後の展望を教えてください。
クリニックに戻ってきてからの3年は、新型コロナウイルスとの闘いでした。毎日患者さんが来られるので、その対応に忙しく、自分のやりたいと思っていたこともできませんでした。感染拡大が落ち着いた今後は、生活習慣病の予防と治療の重要性をもっと発信していきたいと考えています。当院が行っている、患者さん一人ひとりに合わせた治療計画についても多くの人に知ってもらい、健康診断の数値で気になるところがある方など、早い段階で相談してもらえたらと思います。また、私の専門性を生かした精密な内視鏡検査を、一人でも多くの人に受けてもらえたらと思います。
最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

患者さんの中には「病院は体調を崩したら行く所」と思っている方もいるかもしれませんが、それは違います。何もない時に来てもらうことが大切なんです。腹痛があったり、血便が出たりしてからでは遅い。効果的な治療が行えず、最悪の場合には命を落とす結果になりかねません。そんな悲しい事態を防ぐために、私たちかかりつけ医はいます。健康な時こそ定期健診や検査を受けて、自分にはどのようなリスクがあるのかを知ってもらいたいですね。これからも地域の方々の日々の健康を守っていきたいと思っていますので、皆さんもぜひ、クリニックを健康づくりの場と思って、積極的に利用してください。