久保田 薫 院長の独自取材記事
くぼた小児科医院
(春日市/大野城駅)
最終更新日:2021/10/12

西鉄バス惣利二丁目バス停から徒歩約3分。住宅街にたたずむ「くぼた小児科」は開院から26年、この地の子どもたちの健康と健やかな発達を見守るクリニックだ。明るい色彩の待合室中央には、子どもがわくわくするようなキッズスペースを用意。院長の久保田薫先生は、「遊びに来るような気持ちでクリニックに来てほしい」と思いを語る。病児保育も開設し、育児の悩みや相談にも寄り添う久保田院長に、開院までの歩みや診療方針、今後の展望などについて語ってもらった。
(取材日2021年4月10日)
父の背中を見て、小学4年生で小児科の医師を志す
診療ではどのようなことを大切にしていますか。

「子どもと仲良くしたい」ということですね。痛いことはしたくないし、泣かせないように、と思っています。喉を診る時にもなるべく舌圧子は使いません。自分から大きく口を開いてくれるまで会話をしたり、おもちゃで遊んだりして安心してもらえるような関係性の構築に努めます。これは子どもの診療では特に大切だと思っています。信頼関係があれば、注射が痛くても我慢できたり、痛み自体少なく感じたりもしますからね。また、小児科は症状が出ているところだけでなく、全身を診ることが鉄則です。けがや湿疹などの皮膚トラブルで来院してもベッドに横になってもらい、首やおなかの触診をします。こういった診療から髄膜炎や脾臓の腫れなどの発見につながることがあります。自覚症状がないまま中耳炎になっていることもあるので、耳まで確認するのが診療のルーティンです。
車の形のネクタイピンがすてきですね。これも子どもと仲良くなるための心遣いの1つでしょうか?
そうですね。やわらかい素材のニットのネクタイをシャツに合わせるのがいつものスタイル。ネクタイピンは車やゾウ、キリンなど20~30種類のレパートリーがあります。今日はどんなネクタイピンかな、と楽しみにしている子どももいますよ。子どもたちのことが大好きな私のところへ遊びに来る感覚でクリニックへ来てほしい、と思っています。あそこへ行ったらうれしいことがあるな、と思ってもらえるように診療が終わった後には、ご褒美のポケットティッシュを渡して頑張りをねぎらっています。子どもが喜びそうなキャラクターつきのものや、小学生には学校でも使える無地のものなどさまざまなものをそろえています。スタッフ一同、地域の子どもの笑顔を守るホームパートナーでありたいと考えています。
先生が小児科の医師になられたのは、どのようなきっかけからですか?

父も小児科の医師で、私が小学4年生の時開院しました。病院と住居が一体だったので毎日、病院の廊下で遊びながら父の働く姿を見て、自分も将来は小児科の医師になりたい、と思うようになっていました。生まれも育ちも高知県四万十市ですが、当時の県南西部には、小児科はとても少なかったと記憶しています。父は毎日のように車で2、3時間かけて往診へ行き、朝方に帰ってきていました。忙しくもやりがいがある仕事だと子ども心に思ったのです。久留米大学進学を機に福岡とのご縁ができました。小児科で知られる大学であったことも私が小児科を選択したきっかけの1つだったと思います。
空間の分離などの感染症対策で安心な診療環境づくりを
この場所に開院したいきさつを教えてください。

大学病院で代謝をテーマに研究生活をした後、13年ほどの勤務医時代には小児科一般の臨床経験を積みました。開院を考えていた時に、この辺り一体をクリニックゾーンにする春日市の構想があることを知り、この地を選びました。畑が広がるのどかな場所でしたが、団地が徐々にできてきた頃で、子どもの数も増えてくるだろうと考えました。「小児科はいつなんどきでも患者を診なければいけない」という出身大学の教授の教えを胸に365日、24時間体制の覚悟で1995年11月に開院。夜間救急をやっている病院が不足していたこともあって、ほとんど休みなく患者さんに対応していました。筑紫地区の夜間診療が充実し、少し時間にゆとりを持てたのは開院から3年後でした。
2016年11月、現在の場所に移転されたそうですね。
以前は駐車場が狭く、インフルエンザの流行期などは診療待ちの車列ができて患者さんや近隣の方々にご迷惑をかけていたため、200メートルほど移転してリニューアルしました。現在は22台分の駐車スペースを確保。当院2階には形成外科クリニックが入り、やけどやあざの治療などで連携しています。院内は親子でくつろげるよう明るくやわらかい雰囲気にしており、待合室中央には広いキッズスペースがあります。診療の合間に私も一緒に遊びたい、という思いもあって、前のクリニックから大切にしているスペースです。将来的には次男がクリニックを継ぐ予定で、一時的に2人体制の診療になることを見越して、また感染症対策も兼ねて診察室も3つ、個室の待合室を4つ設けています。
感染症対策を徹底しているそうですね。

お子さん連れの来院では、季節を問わず感染症は気になることだと思います。当院では予防接種や乳児健診だけの時間帯を設けており、インターネットの予約システムで患者さんがあまり重ならないよう調整しています。熱が37.5℃以上あるなど発熱性疾患が疑われる場合は、感染症専用の出入り口から個室待合室にスムーズに入ることができる動線を確保しています。時間と空間を分けた対策をしていますから、どうぞ安心して来てください。さらに昨今は新型コロナウイルスもあって発熱症状を心配される保護者の方も多いと思います。注意したいのは熱の高さではなく、熱以外の症状です。ぐったりとして元気がなく、食事や睡眠も取れない場合はすぐに受診してください。元気な時に子どもの平熱を測っておくと体調の変化にもすぐに気づくことができるでしょう。
地域のかかりつけ医として信頼される存在で在りたい
どんな症状の患者さんが来られるのでしょう。

発熱や咳、鼻水、嘔吐、下痢など一般的な症状からけがの処置まで、幅広く診ています。喘息など慢性疾患の治療では高校生以上になっても通院している患者さんもいます。以前の患者さんが親御さんとなって、お子さんの受診のために来られて再会することも最近は増えてきて、小児科ならではのご縁を感じますね。生後6ヵ月以上の乳幼児健診では視機能検査装置を導入しています。両目の瞳孔を自動的に測定して近視や遠視、乱視、斜視があるかどうかのスクリーニングが可能です。これまで見つけづらかった小さい子どもの視覚機能の問題を早期に発見して治療につなげることで、早めの回復を促したいと考えています。
病児保育にも関わられていると聞きました。
現在の場所に移転後、クリニック向かいに保育園が開園し、そこで病児保育を始めました。共働きのご家庭が増えてお母さま方から多くの要望が寄せられるようになっていましたから、私の念願でもありました。また小学校1校と6つの保育園で校医と園医をしており、地域の病気の傾向や流行にもアンテナを張っています。
最後に今後の展望や読者へのメッセージをお願いします。

病気のことだけでなく、普段の生活の中で気になることや心配に思うことがあれば相談にいらしてください。お子さんと一緒にいるお父さんやお母さんの、いつもとちょっと様子が違うな、という判断が一番大切なんですよ。親御さんのお話をじっくり伺いながら病気やけが、発達のことなど私の知る範囲で何でもお答えしていきたいと思っています。地域の皆さんが気楽に集えるクリニックでありたいですね。ゆくゆく次男がクリニックを継いでくれたら一線は退いて、保育園巡りをしてみたい、とも考えています。今は園医として年2回の健診でしか接点がないので、子どもたちともっとふれあいたいですね。地域の子どもたちの心と体の健康を見守り続けたいと思っています。