田久保 優人 院長の独自取材記事
梶原内科医院
(飯塚市/新飯塚駅)
最終更新日:2025/10/01

新飯塚駅から車で約5分、住宅街の一角にある「梶原内科医院」。2025年4月に院長に就任した田久保優人先生は、医師・薬剤師のダブルライセンスという異色の経歴を持つ。「入院患者さんが『おうちに帰りたい』と言う姿を見て、急性期医療より、近くで寄り添った医療をしたいと思いました」と語る田久保院長。麻酔科・消化器内科での豊富な経験を生かし、鎮静下での苦痛の少ない内視鏡検査から、小児診療、訪問診療まで幅広く対応。「外来と検査と病棟を自分で管理できるのが、私のやりがい」と目を輝かせる。1979年から続く地域医療の歴史を引き継ぎながら、「医療・看護・介護」の三本柱をさらに充実させ、子どもから高齢者まで頼れるファミリークリニックをめざす田久保院長に、診療への思いを聞いた。
(取材日2025年8月25日)
薬剤師から医師へ、寄り添う医療への転身
今年4月に院長に就任されたそうですね。

はい、知人から話をいただき、縁がありこちらの院長に就任しました。私の出身は兵庫県で、大学は福岡の久留米大学、大学卒業後は名古屋の病院で8年間勤務していて、今年初めて飯塚に来ました。こちらで私がやりたいことと、クリニックがめざす医療が一致したことが決め手になりました。一般的なクリニックは外来診療のみか簡易的な検査がほとんどだと思いますが、ここは19床の病床を持ち、内視鏡やCTまで機器がそろっています。外来と検査と病棟管理までを1人でできることに、大きなやりがいを感じています。地元の方々は皆さん優しくて、私の話にしっかり耳を傾けてくださいます。「先生がそう言うなら」と信用してくださる、そんな温かい地域性がここの良さですね。
先生は薬学部を経て医師になられたとお聞きしました。
はい、最初は薬学部に入学し、薬の研究をしていました。しかし研究では直接患者さんを見るわけではなく、身近な患者さんに自分のやりたい医療を提供できるのは薬剤師より医師だろうと考え、医学部への再受験を決意しました。薬学部で培った薬の経験は今も役立っています。例えば患者さんから「赤い粒の薬」と言われても、「この薬のことですか?」とすぐわかります。薬の名前や剤形がわかるので、コミュニケーションにつながりやすいんです。患者さんとの距離が近くなるように意識的にコミュニケーションを取り、同じ目線で話せる関係を大切にしています。
麻酔科や消化器内科で診療に携わってきたそうですね。

麻酔科は周術期の薬の知識と手技的な部分が求められ、急性期管理に魅力を感じて選びました。大学病院でICU管理もしていましたが、ある時、たくさんのチューブがつながった患者さんが「おうちに帰りたい」と言うんです。どう考えても帰れない状態なのに、それでも帰りたいと。その時、患者さんはおうちで安心した暮らしをしたいんだと気づき、もっと患者さんの近くで寄り添った医療をしたいと思うようになりました。内科の中でも内視鏡の手技がある消化器内科に興味を感じ、転科しました。今は鎮静下での内視鏡検査に注力しています。麻酔科の専門的な経験があるので苦痛を軽減して検査ができるのが当院の強みです。
検査から入院まで、地域完結型医療を実現
こちらのクリニックの診療体制について教えてください。

内科・消化器内科・糖尿病内科・循環器内科を標榜し、高齢者から小児まで幅広く診ています。患者さんの多くは高血圧、糖尿病、高脂血症といった生活習慣病を抱えた高齢者です。また、名古屋で勤務医をしていた時は、小児から成人までの緊急往診をしていて、中には赤ちゃんの発熱や感染症も対応していましたので、小児診察経験は豊富にあります。それから、当院には敷地内に同法人系列の老人ホームやデイサービスもあります。例えば当院で入院し、足腰が弱くなり、帰宅困難になった場合でも、こちらの施設等で管理することが可能です。施設入所後も私が往診に伺いますし、肺炎などを発症した場合には隣にある当院で入院することができます。
検査機器が充実していると伺いました。
MRI以外の一通りの検査ができます。内視鏡は胃カメラと大腸カメラがあり、経鼻・経口両方できます。特に鎮静下での検査、つまり薬を使用し眠った状態での内視鏡検査ができるのが特徴です。基本的に予約制ですが、苦痛を軽減して検査ができ、観察室で休んでいただける環境も整えています。CTも完備しており、肺炎が疑われる時、腹痛の原因検査、転倒時の頭部出血確認などに活用できます。レントゲンでは見逃してしまう難しい疾患も、CT検査で発見できます。これらを当院で紹介状なく一元管理できるところが強みですね。採血結果と併せて入院治療が必要と判断すれば、紹介せずに自院で治療ができます。もちろん専門的治療が必要な場合は、飯塚病院や飯塚市立病院と連携して紹介受診が可能です。
診療で心がけていることを教えてください。

わかりやすい言葉を使い、患者さんが自分の病気や薬を理解できるよう心がけています。一方的に話すのではなく、日常的な話や仕事の話を聞き、そこから病気のヒントを得て、生活と病気とうまく付き合える環境づくりをサポートしています。生活習慣病の指導では、他の患者さんのお話をすることもあります。同じ悩みを抱えた人がどう乗り越えたかを聞くと「それなら私もできそう」と前向きになれると思うんです。小児の場合は、まず親御さんとの信頼関係をつくり、お子さんに「頑張ったね」「お利口さんだね」と声をかけることで信頼関係を築いていけるよう意識しています。
地域とともに歩む、頼りになるファミリークリニックへ
スタッフとの連携はいかがですか?

職員は約20人で、特に看護師には長期勤務の方が多く、患者さんとの関係も深く地域に根差しています。正直、地元の方と看護師の信頼関係は私よりはるかに上だと思います。むしろ看護師のほうが患者さんの家族背景や昔の話をよく知っているので、それを教えてもらって診察の一助にしています。私は4月から赴任したばかりなので、一人ひとりに自己紹介をし、院内に自己紹介パネルも作って、どういう人間が赴任してきたか親しみを持っていただけるよう工夫しています。私の好物のラーメンをランキング形式で紹介しています。長年この地域医療を支えてきた看護師たちと協力しながら、患者さんに寄り添った医療を提供できることは本当に心強いですね。
今後の展望について教えてください。
医療・看護・介護の三本柱をさらにブラッシュアップし、地域の皆さんに貢献したいというのが一番の思いです。具体的には訪問診療をより広げ、病院に来るのが難しい方にはおうちに訪問して診察する体制を整えたいと考えています。入院管理が必要な場合も、当院で入院していただければ、ご家族も安心してお任せいただけるのではないでしょうか。今後は、働く人の健康管理やメンタルチェックなども手がけていきたいと考えています。飯塚は炭鉱の街から発展した工業地域でもありますから、職場の健康管理も重要です。薬学部で学んだ専門的な化学の知識もありますので、化学工場などの産業医としても専門性を発揮できると思います。
地域の方へメッセージをお願いします。

人一倍知的好奇心が強く、わかりやすく言えば勉強好きなんです。医学に限らずいろんなことに興味を持って日々勉強することで、患者さんとの話題づくりにもつながります。この先生は病気以外にもいろいろ詳しいんだねと、気軽にお話しできる関係を築きたいですね。当院は歩いて来られる方も多い住宅街の一角にあるので、ファミリークリニックとして、お子さんからご高齢の方まで何かあったら頼れる安心感を提供していきたいです。1979年から続く地域医療の歴史を大切にしながら、新たな取り組みも加えて、より充実した医療を提供していきます。安心してこちらを受診していただければ幸いです。