東恩納 高史 院長の独自取材記事
ひがしおんな医院
(福岡市西区/姪浜駅)
最終更新日:2025/10/15

姪浜駅から徒歩3分の「ひがしおんな医院」。皮膚科と泌尿器科を標榜する地域密着型のクリニックだ。東恩納高史院長は福岡市内の基幹病院の泌尿器科で研鑽を積んだ後、縁あって2代続いた花田皮膚科医院を継承。2024年1月に泌尿器科を併設し、新たに診療を開始した。物腰やわらかで話しやすい印象の東恩納院長は「泌尿器科の病気は恥ずかしいことではない」と強調する。近隣に泌尿器科が少ない中、頻尿や尿漏れから膀胱鏡検査まで幅広く対応。地域のかかりつけ医として奮闘する東恩納院長に、開業の経緯や診療への思いを聞いた。
(取材日2025年9月22日)
2つの診療科で地域に新たな価値を
まず、皮膚科医院を継承し、泌尿器科を併設された経緯をお伺いします。

もともと私は泌尿器科を専門に、福岡市内の基幹病院で診療を行っていました。開業を考えて物件を探していた頃、知人のつてで思いがけないお話をいただいたんです。「地域で長年親しまれてきたクリニックの後継ぎを探している」というものでした。それまで考えていた診療科とは異なる分野ではありましたが、地域に根差した医療への関心もあり、お話を受けることにしました。今思えば、さまざまなご縁とタイミングが重なった結果だったと思います。その後、約2年間にわたり週に3回クリニックに通いながら、地域の雰囲気や患者さん、スタッフの皆さんに少しずつなじんでいきました。そして2024年1月、「ひがしおんな医院」として皮膚科・泌尿器科の診療をスタート。地域の皆さまの健康を支える場として、一歩一歩取り組んでいます。
現在の診療体制と、皮膚科と泌尿器科併設のメリットを教えてください。
私が皮膚科と泌尿器科の両方を診察しています。両科併設の最大のメリットは、患者さんがまとめて受診できること。皮膚科の診療を希望されていた方でも、「実はおしっこの困り事もあって」とご相談いただくこともできます。逆に泌尿器科から受診されても構いません。この地域には泌尿器科が多くはありません。両方の悩みを抱える患者さんも一定数いらっしゃいますし、一度の通院で対応できるのは、忙しい方にとって大きな利点ですね。地域のニーズに応えられていると感じています。
泌尿器科を併設する際に必要だった準備や、工夫された点はありますか?

設備面では超音波検査装置、内視鏡設備、尿検査装置の導入が大きな投資となりました。エックス線検査装置はスペースの関係で設置せず、近隣の病院と連携して対応しています。院内環境も重要だと思っていて、医療機関らしくないやわらかい雰囲気を心がけました。白い壁紙を選び、観葉植物を配置。待ち時間への配慮として、無料で使える無線LANや雑誌、書籍も用意しています。プライバシーにも配慮が必要ですので、診察室には仕切りを設け、声が待合室に漏れないように工夫しました。オンラインでの診療予約など効率的な診療体制も整え、なるべく待ち時間を短くするための取り組みも行っています。
基幹病院の経験を地域医療に還元
泌尿器科の専門家として、どのような診療をされていますか?

頻尿や尿漏れといった基本的な泌尿器科のご相談から、専門的な対応が求められる疾患まで、幅広く診療を行っています。この地域は若い方も多く、性感染症についてのご相談で来院される患者さんもいらっしゃいます。開業前は手術中心の診療に携わっていたため、その経験を生かし、膀胱鏡や超音波を用いた泌尿器がんの診断にも力を入れています。患者さんの層は、男女比でいえばおおよそ半々。年齢層も幅広く、午前中は高齢の方が多く来院されますが、近隣に小学校があるため、午後、特に夕方には学校帰りのお子さんが皮膚科の診療を希望されることも多いですね。当院では、クリニックで対応すべきか、大きな病院に紹介すべきかの見極めをとても大切にしています。これは、大きな病院での診療経験を積んできたからこそできる判断だと感じています。
2025年8月から導入された、ボツリヌス毒素製剤の膀胱壁内注射療法とはどのようなものでしょうか?
重度の過活動膀胱、つまり難治性の尿失禁に対する治療法です。まず薬物治療を数ヵ月試みて、それでも改善が不十分な患者さんが対象となります。健康保険が適用される治療で、比較的導入しやすいのも特徴です。治療の効果は、おおよそ1〜2週間以内に現れることが多く、その後は約4ヵ月程度効果が持続するとされています。持続期間を目安に、次回の治療を検討するかどうかを相談していきます。
過活動膀胱について、患者さんに知っておいてほしいことはありますか?

過活動膀胱は年齢とともに起こりやすくなる疾患で、薬でコントロールしていくことが多いです。季節によって症状に波があり、冬場に悪化しやすい傾向にあります。軽症の方では夏は薬が不要でも、冬だけ服用が必要になることもありますし、年齢とともに一年を通して治療が必要な場合もあります。また水分の取りすぎで頻尿になっている方も多く見られます。ただ、夏場は熱中症対策も必要ですので、一概に制限するのではなく、ケースバイケースで患者さんへ生活のアドバイスをしています。受診のタイミングは、「困ってから」ではなく、「ちょっと気になる」「なんとなく不安」でもまったく問題ありません。尿に関することは相談しづらい方も多いですが、一人で抱え込まずに、まずは気軽にご相談いただけたらと思います。なお「血尿が出た」「健診で異常を指摘された」といった場合は、自覚症状がなくても一度は泌尿器科を受診していただくことをお勧めします。
恥ずかしさを払拭し、健康への第一歩を
患者さんが安心して泌尿器科を受診できるよう心がけていることは何でしょうか?

わかりやすい、平たい言葉で説明するよう心がけています。専門用語は使いません。紙に図を描きながら説明することも多いです。絵のほうが言葉よりも伝わりやすいですからね。そして泌尿器科受診を特別なことと捉えないようにしていただくことも大切にしています。「みんなかかりがちな病気で、たくさんの方が同じ悩みを抱えている」。当たり前の病気ですよといった雰囲気で、自然な会話の中で安心してもらえるよう意識しています。言いづらそうにしている患者さんには、こちらから症状を推測して話します。「こういう人もいますよ」と例を挙げたりも。スタッフにも声かけをお願いし、クリニック全体で相談しやすい環境づくりに努めています。
地域医療への貢献と今後の展望についてお聞かせください。
地域の身近な相談窓口でありたいですね。「ちょっと何か困り事があったらまず相談してみよう」と思ってもらえる存在をめざしています。なお当院は、九州医療センターや白十字病院、私の出身大学でもある福岡大学病院と緊密に連携しています。紹介するだけでなく、先方からも受け入れるといった、双方向のやりとりを大切にしています。今後はがん診療にも、もっと注力したいと考えています。がんは、大きな病院でなければ診てもらえないというイメージがあるかもしれません。しかしクリニックでできることは積極的に対応します。待ち時間も短く、時間の融通も利く。そんなメリットを生かして地域医療に貢献していきたいと思います。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

泌尿器科や皮膚科は、症状があっても「これって受診するほどかな?」と迷われる方も多い分野かもしれません。
でも、わからないことや気になることがあれば、まずはどうぞ気軽にご相談ください。特に泌尿器科は、少し受診をためらわれる方が多い領域です。ですが、誰にでも起こり得るごく一般的な病気が多く、風邪と同じような感覚で受け止めていただけたらと思います。「気になる」ことを受診のきっかけとして、まずはお話を聞かせてください。また皮膚のご相談についても、子どもから高齢の方、また性別それぞれに違ったお悩みがあります。その方のお話をじっくり伺いながら、症状や背景に合った対応を大切にしていますので安心してご相談いただければと思います。当院は姪浜駅から近く、通いやすい立地です。地域の皆さんの健康を支えるかかりつけ医として、これからも尽力してまいります。