櫻井 省史 院長、櫻井 玲央 先生、櫻井 早也佳 先生の独自取材記事
櫻井医院
(北九州市八幡西区/折尾駅)
最終更新日:2025/06/27

1955年の開業以来、地域のかかりつけ医として内科、外科、整形外科、皮膚科など幅広い診療にあたってきた、折尾駅前の「櫻井医院」。2020年にはクリニックを新築、2024年からは櫻井省史(さくらい・せいし)院長の息子、櫻井玲央先生が常勤医師として診療に加わるなど、新たなフェーズに入っている。玲央先生は、北九州ではまだ少ない日本専門医機構認定総合診療専門医。内科や外科といった診療科を横断して患者を多角的に診療し、専門の医師への橋渡しや地域サービスとの連携も得意とする地域医療のエキスパートでもある。2025年4月から櫻井早也佳先生も加わり3人体制となった同院。「地域のハブとして貢献していきたい」と意気込む玲央先生と早也佳先生、そして2人を穏やかに見守る省史院長に話を聞いた。
(取材日2025年5月28日)
総合診療に尽力する、地域に根差したかかりつけ医
折尾駅前で70年続くクリニックだと伺いました。

【省史院長】先代が開業したのが1955年ですので、今年でちょうど70年になります。父は月曜から日曜の午前中まで診療所を開けていて、夜間であっても、患者さんが来られたらいつでもなんでも診ていました。今とは時代背景が違いますが、「地域の皆さんのために」という思いは変わらず当院に息づいているように思います。私自身は1983年から当院で診療にあたり、地域のかかりつけ医として総合的な診断力を培いながら、目の前で困っている方のお役に立てるよう努めてまいりました。診療科が細分化・専門化する時代の流れの中で、「どこを受診したら良いかわからない」と悩まれる患者さんも多いです。そういった方々も広く診察して、当院で治療可能なら対応し、より専門的な治療が必要なケースでは迅速に基幹病院や専門クリニックと連携を取り、より良いルートへつなげる役割も担っております。
今後同院を継承されていく玲央先生の経歴を教えてください。
【玲央先生】父の背中を見て育つ中で自然と医師をめざすようになり、久留米大学医学部へ進学しました。2012年卒業後は岡山の倉敷中央病院などで外科医として手術に明け暮れる日々で、正直この先地元に戻って父の後を継承できるのか不安がありました。外科医としての知識や技術はあるけれど、幅広い患者さんが来られている櫻井医院で私は通用するのかと。考えた結果、外科医であることはいったん置いて、父が取り組んでいる地域医療をそのまま落とし込めるような別の路線に進もうと、当時「家庭医療」の役割を果たす分野として注目を集め始めていた「総合診療」に行き着きました。内科、外科といったくくりではなく、患者さんを丸ごと診ることのできる医師こそ、まさに地域のかかりつけ医。その力を身につけようと、久留米大学医療センターの総合診療部門でトレーニングを受け学び直しました。
総合診療の力を身につけるため、どのような研鑽を積まれたのですか?

【玲央先生】島根県の隠岐諸島の中にある西ノ島に妻や子どもとともに渡り、島の有床病院「隠岐島前病院」に1年間勤務した経験は非常に大きかったです。専門の診療科が存在しない中、子どもから高齢者、妊婦さんまですべての方のあらゆる体の不調に対応し、場合によっては本土に送るか判断しなくてはならない状況の中で、必死に学び、経験を積みました。そこの院長の白石吉彦先生は30年近く島での地域医療に取り組んでいる、探求心豊かな素晴らしい方で、私のメンター的な存在です。離島医療を通して、私は守備範囲が格段に広がりましたし、自分ができることとできないことの境界が明確になりました。島から帰って、長年付き合いのある患者さんから「自信を持って診療するようになったね」と言われたときは、とてもうれしかったですね。
地域のハブとして貢献していきたい
現在の診療体制はどのようになっていますか?

【玲央先生】内科・胃腸内科、外科、整形外科、皮膚科の診療に加え、総合診療、乳腺診療など幅広く行っています。私は外科医として抗がん剤治療や終末期医療に携わった経験があり、緩和治療や訪問治療にも取り組んでいます。また睡眠時無呼吸症候群の診療にも注力し、CPAP(シーパップ)装置はほぼすべてのメーカーを取りそろえました。私たちがすべての診療において重視するのは病診・診診の連携です。3人とも整形外科や皮膚科の専門家ではありませんし、その場でできる処置や治療内容に多少制限はあります。ただそうは言っても9割以上の方には十分対応できると自負しているのですが、やはり専門の先生に診ていただいたほうが良いと判断した場合は、それぞれふさわしい地域の病院やクリニックをご紹介して、円滑に治療が進むよう努めています。
あらためて、総合診療をどのように捉えたら良いか教えてください。
【玲央先生】総合診療専門医は診療科や臓器のくくりにとらわれることなく、さまざまな可能性を考え、患者さん全体を幅広く多角的に診察します。いろんなクリニックに通って薬をあちこちからもらっている方は、ご相談いただければ通院を集約できるかもしれません。なんでも話せる昔ながらのかかりつけ医だと思って、気軽に受診してください。実は総合診療を明確に定義する言葉はなく、それに取り組んでいる医師がどのような医療を行っているかによって形が変わるものだと思います。診断のスペシャリストや家庭医療の先生もいれば、このフィールドを研究する医師もいるでしょう。私の場合は、他科の専門の先生や地域サービスと連携しながら、地域の皆さんの健康をサポートする相談役として、困ったときに頼りになる“地域のハブ(拠点)”になれたらと考えています。
女性医師が在籍しているというのも大きな強みですね。

【早也佳先生】私は日本乳癌学会乳腺専門医、日本外科学会外科専門医の資格を持っており、当院では胸のしこりなどの乳腺診療のほか、便秘や痔、できもの、イボの除去などの外科診療、一般的な内科診療などを行っています。男性医師には見られたくない、言いにくい場合はぜひ私にご相談ください。患者さんがなんでも話しやすい雰囲気づくりを心がけていますので、「これ聞いてもいいのかな?」と思われるようなことでも気軽に質問していただけるとうれしいです。普段は九州病院の外科に勤務し、乳がんの診療にあたっています。当院での診察は月3回程度ですが、今後増やしていく予定です。診察日はホームページに公開し、インターネット予約もできます。ちなみに乳腺の超音波検査は行いますが、マンモグラフィは導入しておりませんのでご注意ください。
ホスピタリティーあふれる地域一番のクリニックへ
訪問診療にも対応されているとか。

【玲央先生】何らかの理由で通院が難しい方には訪問診療を積極的に行い、看取りにも365日24時間対応しています。ご自宅などの生活の場に伺うと、患者さんの向こう側にあるものがより見えるようになり、私たちとしては本当に必要な医療やサービスを選別しやすくなります。だからこそ入ってきてほしくないと言われる難しいケースもあるのですが、そこはケアマネジャーなど多職種の方々とも密に連携しながら、少しずつ関係を築いていければと思っています。患者さんやご家族が有用な地域サービスの内容を把握されていないことも多々あるので、まずはお問い合わせだけでも歓迎します。
読者へのメッセージをお願いします。
【省史院長】息子夫婦が診療に加わるようになって、クリニックのデジタル化やスタッフへの教育など、迅速に進みました。地域のかかりつけ医として何ができるか一生懸命考えているようですので、今後も変わらずよろしくお願いいたします。
【早也佳先生】当院は幅広いニーズが満たせるクリニックだと思います。院長にはベテランの安心感があって、玲央先生には総合診療専門医という強みと新しい知見がある、女性医師もいる。若い世代から高齢の方まで、どうぞお気軽にご相談ください。
最後に、今後の展望を聞かせてください。

【玲央先生】「取りあえず櫻井医院に相談してみたら良い」。そう地域の皆さまに思っていただけるようなクリニックをめざしています。総合診療は幅広い知識のアップデートが常に必要で本当に大変なのですが、そこにはやりがいもあります。患者さんへのこまやかな声かけを大事にして信頼関係を育み、アクセスしやすい、ホスピタリティーにあふれた“地域で一番のクリニック”に成長していけるよう、一歩ずつ取り組んでまいります。