平野 芳昭 院長の独自取材記事
ひらのクリニック
(北九州市八幡西区/黒崎駅)
最終更新日:2025/09/10

71歳の今も現役で診療を続ける平野芳昭院長。その原動力は「集中力」と「諦めない」という信念だ。また、「人は見た目の一瞬の印象がすべて」という考えから、自分自身の身だしなみに常に気を配り、患者への配慮を欠かさない。1992年の開業から30年以上、内視鏡検査を軸に地域医療を支えてきた。黒崎駅から徒歩3分の「ひらのクリニック」で、平野院長に内視鏡検査への取り組みや今後の展望について聞いた。
(取材日2025年7月9日)
内視鏡専門クリニックとして30年以上の実績
最初に開業の経緯を教えてください。

先輩医師の開業した姿を見て「すごいな」と衝撃を受け、自分も内視鏡専門で開業してみたいという思いが芽生えたんです。ただ、30年以上前の当時は内視鏡専門で、特に大腸内視鏡検査の開業は「失敗する」と周囲から言われていたんです。それでも挑戦したい気持ちが勝りまして、1992年に開業しました。開業してからは「人に負けたくない」という気持ちを原動力に、ひたすら突き進んできました。今振り返ると、地域の方々の健康を守り続けることができて本当に良かったと思います。
医師を志したきっかけや、内視鏡を専門に選んだ理由は?
祖父は、小倉北区で薬局を開業していた薬剤師。父は北海道帝国大学卒の秀才で、医師。社会的に成功を収めた祖父と父を持ちながら、私は何をやってもうまくいかず、祖父、両親には恥ずかしい思いをさせっぱなしでした。4年浪人し、やっとの思いで、医学部合格。そして、内視鏡に興味を持ったのは、産業医科大学病院で研修医をしていた時です。放射線科をローテーションした時に、胃の透視や血管造影などにふれる機会がありました。血管造影で血管内に抗がん剤を注入したりする手技に魅力を感じたんです。その後、消化器内科で内視鏡に出会い、当時はまだ大腸内視鏡検査が非常に難しく、できる人が少なかった。だからこそ「自分がやってみたい」と思いました。結局、自分で本を読んだり、ビデオを見たり、勉強会に行ったりしながら技術を身につけていきました。
現在の診療内容について教えてください。

内視鏡検査を軸に、上部消化管内視鏡検査、大腸内視鏡検査を行っています。対象疾患は食道がん、胃がん、大腸がん、胃ポリープ、大腸ポリープ、逆流性食道炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍など幅広く対応しています。治療面では、ポリープ切除術を外来で実施し、日帰りで手術が可能です。また、逆流性食道炎の治療、ピロリ菌の除菌治療、便秘の治療なども専門的に行っています。日本消化器病学会消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医として、豊富な経験と技術で苦痛の少ない内視鏡検査を心がけています。鎮静剤を使用し、患者さんの負担を最小限に抑えながら、質の高い診療を提供しています。
「集中力」と「諦めない」が質の高い検査を支える
内視鏡検査で大切にしていることは何ですか?

一番大切なのは「集中力」です。そして「諦めない」こと。検査中に難しい症例に出合っても、途中で投げ出したり諦めたりしては意味がありません。患者さんに苦痛を与えてしまうだけです。限られた時間の中で短時間で実施していくのが本当に難しい。諦めずに粘って2時間も3時間もやるのは誰でもできますが、短時間で普通に終わらせる、これが難しいんです。誰よりも自信があると言えるのは、この集中力と諦めない姿勢です。
無症状でも検査を受けることの重要性について教えてください。
正直言うと、症状がない人が多いんです。でも、その中からがんが見つかることがあります。特に早期胃がんの人は無症状ですし、大腸がんもそうです。胃がんに関してはピロリ菌感染の有無でリスク判断ができます。今は感染率が下がってきていますが、予防や早期発見の対策になるので、私はまず30代で内視鏡検査を受け、ピロリ菌感染の有無を確認することを勧めています。また、お酒を飲むとすぐに顔が赤くなる人がお酒を飲み続けると加齢により食道がんや咽頭がんになりやすくなりますし、大腸がんに関しては家族歴など遺伝的な要因も関係しています。自分がどの病気に関してリスクがあるのかを考え検査を受けることも大切です。
先生は身だしなみにも気をつけていらっしゃるとお聞きしましたが、そのこだわりについて教えてください。

患者さんに与えるファーストインプレッションを大切にしています。出勤時に待合室で患者さんと会った際、どういった服装が医師として好印象と安心感を与えられるか考えた時、自分だったらビシッとした姿で清潔感のある医師のほうが安心できると思うからです。また、開業当初は鎮静剤を使った検査も批判されましたが、今では当たり前になっています。欧米では主流だった方法を、患者さんの負担軽減のために当時から導入しました。時代を先取りすることも大切だと考えています。
次世代への継承と地域医療への思い
71歳の現在も現役で診療を続けられている秘訣はなんでしょうか?

今も体を鍛え続けています。自転車、ウエイトトレーニング、ゴルフを今も続けています。以前はランニングもしていましたが、3年ぐらい前から膝の調子が悪く自転車に切り替えました。体を鍛え続けることで、診療に必要な体力、集中力も保っています。何より「負けたくない」という気持ちがまだあります。楽しんでやるというより、今日は絶対やっつけてやるぞという気持ちでトレーニングも診療も取り組んでいます。71歳になっても、その姿勢は変わりません。地域医療に貢献できている限り、続けていきたいと思っています。
今後の展望についてお聞かせください。
長男も同じく医師で内視鏡を専門にしているため、今後スムーズにバトンを渡せるよう環境を整えていこうと思っています。自分のやってきた技術や心構えを、息子に自然に伝えていきたいと思っています。これからも人のために、自分が役に立てることをしていきたい。できるだけ地域医療に貢献していきたいと考えています。30年以上培ってきた技術と経験を次世代に継承し、地域の消化器疾患の早期発見・治療に引き続き貢献していきます。患者さんの健康を守るという使命感を持って、今後も診療に取り組んでいきます。
読者へのメッセージをお願いします。

がんはリスク判断による定期検診で早期発見が可能です。40~50歳くらいの年齢になったら検査を受けていただきたい。特に家族にがんの既往がある方、ピロリ菌感染あるいは治療後の方、お酒で顔が赤くなる方など、リスクファクターがある場合は積極的に検査を受けることをお勧めします。内視鏡検査は以前に比べて格段に楽になってきています。当院では鎮静剤を使用し、苦痛の少ない検査を心がけていますし、ポリープが見つかれば日帰りで切除をすることも可能です。私は「諦めない」をポリシーに、集中力を持って一人ひとりの患者さんと向き合っています。開業から30年を越えた今も、内視鏡検査の予約の電話が鳴ったとき、また日々の診療を通じて、まだ自分が必要とされ、期待をされているんだと実感しています。人の期待に応えられるように真摯に努力を重ねていきたいと思っています。