佐藤 隆司 院長の独自取材記事
医療法人 津森医院
(北九州市八幡東区/八幡駅)
最終更新日:2025/09/04

JR鹿児島本線・八幡駅から徒歩13分。八幡東区の住宅エリアで、開院から50年以上地域医療を支えてきた「津森医院」。同院の3代目院長佐藤隆司先生は、総合内科、呼吸器内科、アレルギー科の専門家として、幅広い世代の健康を見守り続けている。近年、新型コロナウイルスの罹患をきっかけに長引く咳や咳喘息に悩む患者が増えているという。そんな時代の変化に直面する中でも、佐藤院長が最も大切にしているのは、問診と身体診察から得られる情報だ。「検査は一番後の話。患者さんの言葉は、医療にとって重要な手がかりです」と力強く語る。へき地医療などの検査機器が限られた環境の診療で培われた経験から、言葉にならないサインや些細な訴えも見逃さず、適切な診断へとつなげる。そんな佐藤院長に、医院の特徴からポリシーまで幅広く話を聞いた。
(取材日2024年8月7日)
丁寧な問診と触診が、適切な診断につながる
医師を志したきっかけ、医師としてのスタンスなどを教えてください。

内科の開業医だった祖父と叔父の影響が大きかったのは間違いありません。祖父はとても患者さんに優しくて偉大な医師でしたし、叔父は面白くいつも皆を笑わせていました。そんな多くの方から信頼されている2人の姿を子どもながら覚えていたので、いつしか医療の道を志すように。実際に医師となってからは、患者さんから「前の先生は……」と祖父や叔父に関する話をお聞きする機会が多くあり、今でも彼らのような医師になることが大きな目標です。そして、一人ひとりの診療時間をしっかり確保しながら、丁寧にお話を聞いて診療に取り組むようにしています。近隣に住む地域の方々の平均寿命を延ばせるよう、これからも適切な医療を提供していきたいと考えています。
次に、医院の特徴を教えてください。
私は、日本内科学会総合内科専門医、日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本アレルギー学会アレルギー専門医の3つの専門医資格を持っています。これらの専門性を生かし、地域の皆さまのかかりつけ医として、多岐にわたるお悩みに応えていきたいと考えています。基本的には、内科として幅広い診断ができないといけない、というのが根っこにありますね。当院は祖父、叔父から受け継ぎ、私が3代目院長を務めていますが、50年以上の歴史の中で、先代・先々代の時代から通ってくださる方も少なくありません。そのため、患者さんを家族のように感じ、何でも気軽に相談できる身近な町の医院でありたいと願っています。目の届く範囲の皆さまの健康を全力で守り、患者さんが「何かあったらまた来よう」と思えるような、温かい医院づくりをこれからも心がけていきます。
診療において大切にされていることは何ですか?

多くの場合、医療の入り口となるのが、当院のような地域の中にある医院です。だからこそ、あらゆる病気の治療の根本となる診断は、不正確性や間違いを最大限避けなければなりません。そこで当院では、診断に注力しています。適切な診断には問診が重要です。場合によっては、患者さんの訴えを聞くだけで診断に至ることもあるほどです。実は、若い頃に医療機器の少ないへき地医療の経験をしたことから、問診や触診だけで患者さんを診る機会が多くあり、この経験が今の私の診断の土台になっています。なので、問診の際に徹底しているのは、とにかくなるべく細かく情報を引き出すことです。そのため、スタッフ一丸となって気兼ねなく話せる雰囲気づくりを心がけています。また、なるべく難しい医学用語を使わないよう配慮し、お子さんからお年寄りまで、皆がわかりやすい言葉遣いで接するようにしています。
総合内科として、幅広い対応と確かな専門性を
内科の診療についてお聞きします。

幅広い主訴に対応していますが、診療の割合として多いのは生活習慣病の方々ですね。当院の方針として、なるべく薬に頼らなくて済む方は生活改善から取り組んでいただき、食生活の見直しや運動不足の解消、減塩など、健康的な生活を心がけるよう丁寧に指導しています。もちろん、それだけでは病勢をコントロールできない方の場合は、投薬治療を行います。生活習慣病の治療の目的の一つは、合併症の予防ですので、思ったような治療効果が得られない場合は、糖尿病・高血圧症・脂質異常症の各分野を専門とする医師と連携し、当院でできる最善の治療の提供をめざして対応していきます。時間に余裕のある方には、希望に応じて生活指導を目的とした教育入院を行っている病院を紹介することもあります。
呼吸器分野ではどんな治療が受けられますか?
当院で最も多いのは喘息の方です。呼気の一酸化窒素を測定する検査機器が喘息の診断に有用です。これは、口にくわえてもらって約12秒間息を吐くだけの検査で、呼吸器を専門とする医師がよく行っている検査です。喘息においては吸入薬による投薬治療を行います。吸入薬にはさまざまな強さや形態があり、症状の程度や各患者さんに適したものを処方することが重要です。症状がなくなったにもかかわらず同じ強い薬を数年間使い続けていると、患者さんの経済的負担も大きくなってしまったり、逆に症状があるのに弱い薬を続けてしまうと、症状の改善につながりません。そのため、しっかりと見極めなければならないのです。また、大学病院や国立病院といった専門性の高い医療機関で13年間研鑽を積んできた経験を生かして、その他の呼吸器疾患においても適切な診断をつけるよう力を尽くしています。
アレルギー分野ではどんな疾患を診ていますか?

食物アレルギーや、アレルギー性鼻炎の代表でもある花粉症の患者さんが多く受診されています。これらは問診でわかる場合がほとんどですが、採血でのアレルゲン精査も実施しています。昨今は眠くなりにくい花粉症の薬もあるので、投薬治療を主流としています。さらに、当院では軽度ならアトピー性皮膚炎の治療も行っています。アレルギー疾患は原因や症状がさまざまで、治療においては正確な診断が欠かせません。あやふやな診断で治療を続けると重症化を招く可能性があるので、治療の成果が見込めない場合はアレルギーを専門とする皮膚科の医師と迅速に連携するようにしています。
患者との会話を大切に、小さな病気も見逃さない姿勢
先生の診療におけるポリシーを教えてください。

患者さんが納得していないことや嫌がることを無理強いしないことですね。当院を受診される方の中には、検査を受けたくない方や薬を飲みたがらない方もいらっしゃいます。もちろん、どちらも診断や治療において必要な医療行為ですので、受けてもらったほうが適切なのですが、相手の気持ちを無視した押しつけがあってはなりません。そこで当院では、検査や薬の必要性を丁寧に説明し、十分に理解していただけるよう力を尽くしています。もし高血圧症で薬を嫌がるような方がいれば、量や種類を減らす治療プランを提案したり、脳梗塞や心筋梗塞といった将来的な合併症につながり、ご自身だけでなくご家族にも負担がかかる可能性を伝え、前向きに治療に取り組んでもらえるよう導きます。
先生は、患者さんとの会話も大事にされているんですよね。
例えば、患者さんがご年配であればまるで孫のように、患者さんが若ければ話しやすいおじさんのように、冗談を交えながら話すことで、患者さんとの壁を取り払うことを心がけています。そうすると、病気とは直接関係なさそうな些細な話の中から、診断の手がかりになる重要なヒントが見つかることが少なくないんです。医師が厳しい顔をしていたりとっつきにくかったりすると、小さな不安を話しづらいですよね。そんなことにならないように話しやすい姿勢を心がけているのですが、ついつい患者さんと話が盛り上がることも。私自身はこのスタンスが診療に良いものだと考えているので、患者さんを少々お待たせしてしまいますがご理解いただけますと幸いです。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

体調に不安があれば、どんなに小さなことでもいいので、ぜひご相談ください。例えば繰り返す風邪のような症状であっても、しっかり検査することで白血病のような大きな病気が判明することもあり得ます。ちょっとした情報や訴えが診断の糸口になることは珍しくないので、遠慮せずに話してもらえればと思います。当院は、決して広いとは言えないので、待合室でお待ちいただく不便をおかけするかもしれませんが、スタッフ全員が親身なコミュニケーションを心がけ、通いやすい医院づくりに取り組んでいます。適切な診断と治療を提供し、皆さまの健やかな人生に今後も貢献してまいります。