大串 康之 院長の独自取材記事
大串皮膚泌尿器科医院
(北九州市小倉北区/南小倉駅)
最終更新日:2022/10/07
JR日豊本線南小倉駅から車で5分、西鉄バス「到津三叉路」、「三叉路」より徒歩3分。約60年にわたり地域医療に携わってきた「大串皮膚泌尿器科医院」がある。アトピー性皮膚炎をはじめとした皮膚科疾患から、膀胱炎や前立腺肥大症といった泌尿器科疾患、性感染症内科まで、幅広い診療に対応している。1987年に先代の後を継ぎ、2代目院長に就任した大串康之院長は、「開業医として最も大切なポイントは、悪性の疾患を見逃さないこと」と話すように、大学病院や基幹病院と積極的に連携し、重大疾患の早期発見をめざしている。また、医師会や保険医協会にも所属するなど、さまざまな形で地域医療に貢献し続ける大串院長に、医師になったきっかけや、これまでのキャリア、診療方針についてじっくりと話を聞いた。
(取材日2022年8月3日)
幅広い病気をカバーするかかりつけ医に
先生が医師になろうと思ったきっかけについて教えてください。
父が1960年に当医院を開業したのですが、子どもの頃からその背中を見て育ったので、大きく影響されたのだと思います。現在では、皮膚科と泌尿器科は、それぞれ別の診療科になっていますし、別々のクリニックになっていることが多いですが、実は、以前は同じ診療科だったんですよ。ですから、当院は変わらず、皮膚科と泌尿器科、両方の診療を行っています。両方の診療科を診ることができる開業医は減ってきましたが、特に高齢の方は診療科をまたがって病気を持っていることもあるため、かかりつけ医として、幅広い病気をカバーしていきたいと思っています。
1987年にはお父さまの後を継ぎ、院長になられたそうですね。
父の地域医療に携わる姿を見ておりました。そのため、私は大学卒業後に北九州へと戻り、こちらの医院を手伝いながら、産業医科大学の皮膚科で学んで、日本皮膚科学会皮膚科専門医の資格を取得しました。泌尿器科系の技術や知識に関しては、経験豊富な父から学んだところも大きいと思います。皮膚科、泌尿器科、性感染症内科ともそれぞれ勉強会などに参加し、研鑽を積んでいます。1987年に父が亡くなり、当院を継承しました。
診療において大切にしているポイントはありますか?
開業医として一番大事なのは、悪性の疾患を見逃さないことです。何か違和感を感じたら、すぐに大学病院や基幹病院に紹介するようにしています。良性の疾患であれば、患者さん自身も安心することができますし、それ以上に、悪性疾患を見逃してしまい、皮膚がんや膀胱がんなどが転移してしまっては一大事です。そのためには、自分が知っている範囲だけで診断をしないということが大切になってきます。また、皮膚科や泌尿器科は慢性的な疾患が多い領域でもあります。何か少しでも気になる症状がありましたら、ご来院ください。
皮膚科・泌尿器科・性感染症内科で専門的な医療を提供
皮膚科領域ではどのような患者さんがいらっしゃいますか?
夏場は水虫の患者さんや、汗で悪化したアトピー性皮膚炎の患者さんが多いですね。また、冬場は乾燥性の湿疹が増えてきます。水虫に関しては、自覚症状がない方も多いんですよ。初期はかゆみがあるのですが、慢性化してひどくなるとかゆみもなくなり、気づかないうちに放置しているケースがあります。水虫は感染力が強いので、家族に感染させてしまう前の早めの治療が欠かせません。アトピー性皮膚炎はお子さんはもちろん、成人期の患者さんもいらっしゃいます。生後2〜3ヵ月頃から始まる幼児期のアトピー性皮膚炎は改善につながりやすいのですが、成人期になって発症したものは再発しやすく、継続的な治療が必要になります。
泌尿器系の疾患ではどういった疾患が多いのでしょうか?
女性では圧倒的に膀胱炎の患者さんが多く、男性だと前立腺肥大といった病気が中心になります。特に泌尿器関連で注意してほしいのが、血尿以外に症状がない場合です。血尿が出たということは、腎臓や尿管、尿道、膀胱のいずれかに異常があることが多いのですが、血尿はすぐ治まることが多く、受診しない方も時々いらっしゃいます。ですが放っておくと最悪の場合、膀胱がんなどの重大疾患が進行したり、転移したりする可能性もあります。早期発見のためにも、血尿があったら、すぐに受診するように気をつけてください。ほかにも出産に近いともいわれる強い痛みを伴う尿路結石でいらっしゃる方がいますが、まずは水を多くとり、ご飯を食べてからすぐに寝ないように注意していただきたいです。食べてすぐ寝ると尿が濃くなり、尿路結石ができやすくなってしまいますよ。
性感染症で受診されるケースも増えていると伺いました。
確かに梅毒の患者さんは低年齢化し、患者さんも増えている印象があります。またまれにHIV(ヒト免疫不全ウイルス)の感染が見つかることもあります。当院では、より専門的な治療を提供するために、産業医科大学と連携しています。現在では、薬物治療で、免疫力を落とすことなく普通の生活を続けられることに加え、子どもをつくることも望めますから、梅毒や淋病といった性感染症の診断を受けた方は、3ヵ月後にHIVの検査を受けるようにしましょう。しっかりと検査をして治療しないと、大切な人に感染させる可能性もあります。
病気の経験を踏まえて患者に寄り添った診療を
3つの診療科があることで、患者さんにはどういったメリットがあるのでしょう?
特にご高齢の方は皮膚科と泌尿器科、どちらにも通っているという場合が多いので、通院の手間の削減や医療費の負担軽減というメリットがあります。今後、保険料が変わったり、年金が減っていったりする中、患者さんが医療費に使えるお金も変わってくるはずです。患者さんのことを考えれば、これからも3つの診療科を続けていくことに意義はあると思っています。
医師会、保険医協会など地域医療についての貢献も先生ならではだと思います。
医師は学び続けていくことが大切だというのが持論です。最初に入った医局の先生からの教えでもありますが、当時から勉強会などに積極的に参加させていただき、今でも毎月参加するようにしています。そうした中で知り合った先生方とのネットワークは、患者さんの転勤時などに役立ちますし、自分が経験したことのない症例を知るためにも欠かせない機会だと思っています。
最後に今後の展望や地域の方にメッセージをお願いします。
約60年続いてきた医院として、いかに地域医療への貢献を継続させていくかというのが重要です。また私自身病院を継いでから30年が過ぎ、赤ちゃんの頃に受診した方が今度はお子さんを連れてきてくれるなど、感慨深いものがあります。成長を見守ってきたからこそ、患者さんにとって、どういう治療が一番良いかを常に考え、一生懸命向き合うのが私の役割だと思っています。そのためにも常に勉強を続け、治療とともに最新の情報を伝えていきたいですね。それに私は尿路結石や前立腺肥大といった病気を経験しているため、患者さんの気持ちがよくわかりますし、薬の副作用についても身をもって経験しています。そうした経験も踏まえ、患者さんの気持ちに寄り添った診療を、これからも続けていきたいですね。