小川 喬史 院長の独自取材記事
小川医院
(喜多郡内子町/内子駅)
最終更新日:2024/10/01
江戸時代の終わり頃より、地域に根づいて診療を行ってきている「小川医院」。もとは小田地区に開業し、明治時代に現在の内子地区に移転したとか。「生まれ育ったこの土地で、患者さんの健康な暮らしを支えていけるのがやりがいです」と穏やかな笑顔を見せるのは、2019年8月より6代目の院長を務めている小川喬史先生。呼吸器科を専門に、喘息や睡眠時無呼吸症候群の治療、禁煙治療などに注力するほか、内科全般の診療を手がけている。地域の高齢化が進んでいることから、他の医療機関との連携や訪問診療などにも取り組んでいるのが特徴だ。今回、呼吸器科を専門にした理由や得意な治療、患者との印象的なエピソード、今後の展望など、豊富な話題で語ってもらった。
(取材日2019年8月5日)
高齢化を背景に、開業医としての責任を果たしたい
先祖代々、医師の家系なのですね。
そうなんです。僕が6代目になります。小さい頃は自宅が病院の隣にありましたので、医師として働く父の姿をよく見ていました。特に、父が地元のおじいちゃんやおばあちゃんに「調子はどう?」と話を聞いているのに憧れていましたね。ですから、僕も自然と医師を志すようになっていました。今年5月に帰郷し、8月から院長を務めています。自分が生まれ育った土地で、お世話になった方々のお役に立てることができてうれしいです。
帰郷される前は、どのようなキャリアを築いてきたのでしょう?
松山にある愛光中学校・高等学校を卒業した後、広島大学医学部に進学しました。その後は呼吸器科を専門に、10年ほど大学病院などで経験を積みました。専門に呼吸器科を選んだのは、いずれは帰郷して内子地区で働こうと決めていたからです。というのも、高齢化が進んでいる地域ですので、高齢者に多い肺の病気をはじめ、開業医として内科全般を診ていくことが重要かなと。呼吸器科は一般的な風邪などの症状はもちろん、アレルギーや感染症、がん、免疫疾患など、内容がとても幅広いのが特徴です。これまでの経験を生かしながら、日々の診療にあたっていきたいですね。
患者層について教えてください。
地域柄、やはり高齢者がほとんどです。中には、僕の祖父の時代から3代にわたって通っている患者さんもいますよ。僕が小さい頃に学校で教えてもらっていた先生や友人のお母さんなど、昔からの知り合いにも来ていただいています。また、当院は小児科も標榜していますので、小さなお子さんの来院もあります。当院の近くに小児科がありますので、そこがお休みのときに代わりに診るなど、連携を強化していきたいと思っています。
訪問診療にも対応しているとお聞きしました。
はい。ほぼ毎日、どこかに往診に行っています。高齢化を背景に、これから自分の足で病院に通えない患者さんはますます増えてくると思います。それがちょっと離れた地域になるとなおさらです。通院が難しい方への往診はもちろん、介護施設への往診やご自宅での看取りなど、しっかりとフォローしながら地域医療に貢献していきたいと考えています。
呼吸器疾患は早い段階から、継続的な治療が大事
先生の得意な治療は何でしょう?
呼吸器科を専門に経験を重ねてきましたので、喘息や睡眠時無呼吸症候群の治療を得意としています。例えば、長引く咳に悩んでいる方は、ただの咳ではなく、隠れ喘息かもしれません。検査を行うと、数値で隠れ喘息が判明することもあります。また、睡眠時無呼吸症候群は、単に眠いだけではありません。治療を行わないままでいると、コレステロールの数値の高まりや高血圧といった生活習慣病の悪化につながる恐れがあります。その結果、心筋梗塞など重大な疾患のリスクも高まります。気になることがあれば、少しでも早いうちに受診していただきたいです。症状が悪化する前にきちんと治療を行うことで、健康な暮らしが続けられることを知っていただきたいですね。症状が軽い段階から、継続的にしっかりと治療をしていくことが大切なんです。
禁煙治療にも力を入れていると伺いました。
はい。禁煙治療や睡眠時無呼吸症候群の治療を目的に、遠方から来院される患者さんもいます。禁煙治療は保険適用が2ヵ月ありますから、まずは頑張って挑戦していただけたらと。タバコを買わなくなれば経済的にも優しいですし、ご飯をおいしく感じるようになったり、イライラすることが減ったりと、メリットがたくさんあると思いますよ。ご家族も大喜びですしね。1回目のチャレンジで難しくても、1年がたつと再び保険適用で治療ができます。2回目、3回目の挑戦にも全力で向き合いますし、諦めずに挑戦していただきたいです。そのためのサポートはしっかりと行います。
これまで患者さんとの印象的なエピソードはありますか?
勤務医時代、肺がんの患者さんを多く診ていました。残念ながら、亡くなられることもありました。そのような患者さんとうまく信頼関係を築きながら、しっかりと治療を行うことができたときには、亡くなった後にご家族からお礼を言われることもあります。患者さん一人ひとりに寄り添いながら、信頼関係を築いていくことの大切さを実感しましたね。これからご自宅での看取りなども増えていくと思いますので、これらの経験を糧に、患者さんやご家族の役に立っていきたいと思っています。
地域にいても、十分な医療が届けられるように
お忙しい日々だと思いますが、どのようにリフレッシュされていますか?
小学校2年生の双子の男の子と、3歳の男の子がいますので、子どもたちと遊ぶことが何よりのリフレッシュになっています。僕自身が子どもたちと遊ぶのがすごく好きなんですよ。3人とも男の子で毎日やかましいですが、それがまた楽しいですよ(笑)。広島から戻ってきて、平日はあまり遊ぶことができなくなりましたが、いつも土日はたくさん相手しています。この間の休日も、松山にあるアスレチック施設に遊びに行ってきました。
今後の展望をお聞かせください。
まだ内子地区に戻ってきたばかりですから、これから育ててもらったこの地域に、医療を通じて恩返ししていきたいです。先ほどもお話ししたように、この地域では高齢化が進んでいます。年を取ると、外出がだんだん難しくなってきますので、訪問診療やご自宅での看取りなど、在宅医療へのサポートを積極的に行っていきたいですね。また、過疎化も進んでいますので、地域の医療機関との連携も強化していけたらと。大きな街でなくても、十分な医療を届けられるような体制を整えていくことが目標です。また、介護施設や訪問看護のスタッフさんたちとも協力し合いながら、患者さんに最期までしっかりと向き合っていきたいです。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
例えば、睡眠時無呼吸症候群の治療や禁煙治療は、その必要性を自覚していない方も多いと思います。しかし、少しでも早い段階で治療に取りかかることで、症状の重症化や別の病気の発症などを防ぐことにつながります。喘息も症状が軽いうちから継続的に治療を行い、症状をコントロールしていくことが大切です。少しでも気になることがあれば、早めに来院していただけるとうれしいです。消化器内科が専門である父と協力し、内科全般に対応する地域の皆さんのかかりつけクリニックとして、真摯に対応させていただきます。