新谷 敏昭 院長の独自取材記事
新谷ウィメンズクリニック
(新居浜市/新居浜駅)
最終更新日:2022/05/02
JR予讃線の新居浜駅から車で約10分の場所にある「新谷ウィメンズクリニック」。外観、内観ともに、北欧をイメージした温かみのある雰囲気が特徴だ。還暦を迎えた新谷敏昭院長は、これまで数多くの出産に立ち会ってきたベテランの産婦人科医師。人と人とのつながりに重きをおき、医師らしくないと評判だという髪型も患者との距離を縮めるのに一役買っているそう。女性の心と体のケアを目的とした患者に寄り添った医療、安心安全な分娩を理念とし、一人ひとりの個性に合った自然な分娩をめざすと語る新谷院長に、注力しているポイントや今後の展望について聞いた。
(取材日2020年9月8日/更新日2022年4月27日)
患者の不安を和らげるための、さまざまな工夫
医療の道を志したきっかけを教えてください。
まず産婦人科医師の父の影響ですね。明確に「なりたい」という想いが芽生えたのは小学生の頃。産婦人科医師はお産があるので自由な時間が取れないし、大変なのは重々承知していましたが、出産の素晴らしさは感じていましたので、迷うことなくこの道を選びました。実際、開業してからの21年間、遠方への旅行には行けないですね。ちなみに父は90歳になりますが、まだ現役。父の代からの患者さんの診療を担当してもらってます。
開業までの経緯を教えてください。
1984年に関西医科大学を卒業後、愛媛大学医学部附属病院や愛媛県立伊予三島病院などで約15年間経験を積み、1999年に父の後を継ぎ院長に就任しました。それと同時に「新谷産婦人科」から「新谷ウィメンズクリニック」に院名を変更しました。“出産だけじゃなく女性の病気全般を診ています”というメッセージを込めたくて。「新谷産婦人科」ではちょっと堅すぎるかな? という考えもありました。大学や病院勤務より、開業してより患者さん・妊婦さんに近い立場で仕事をしたいという気持ちがありました。
とても居心地が良く、随所にこだわりが感じられますね。
「医院らしくない医院」をコンセプトに温かな雰囲気の北欧風にしました。医療機関というとそれだけで緊張するものなので、少しでも不安を和らげていただきたいと思い、院内もデンマーク製の家具をそろえ、ぬくもりが感じられるようにしました。ほかには入院生活を快適に過ごしていただけるように、できるだけ部屋を広くしたのもこだわりです。母子同室で赤ちゃんが添い寝できるようにしたかったし、広いと心に余裕がもてると思ったのです。ご主人にも気軽に泊まっていただけるように、個室にはシャワールームやソファーベッドも用意しています。
クリニックの診療方針を教えてください。
「患者さんの立場に立つ」です。そして「病は気から」ということわざがあるように心の健康はとても大切ですので、身体的な病気だけではなく、メンタルケアにもしっかり取り組んでいます。女性というのはいわば家庭の要。女性が幸せになれば社会全体も幸せになると思います。幸福な家庭が増えることを願い、妊娠し母親として生きていく上での手助けをはじめ、女性の健康維持のために、その人生に寄り添って全般的にサポートしていきたいと思っています。そして、幸福な家庭を増やしていくことが目標です。
さまざまな視点から女性の生涯をサポート
メンタルケアに力を入れる理由は?
産前産後からの数年間はお母さんにとって特に大変な時期で、自分のことがおろそかになりがちです。そんな時、例えば親子のつながりというものを知っておくと、心の支えになります。赤ちゃんはお母さんを選んで生まれくるそうです。親子関係は子から言えば「生んでくれてありがとう」、母から言えば「選んでくれてありがとう」ということ。この「ありがとう」を知るとすごく幸せな気分になるはずです。一見、医学とはかけ離れていると思うけれど、実際にはすべてつながっていると思います。もちろん月経不順や更年期障害など、産科だけでなく婦人科も診療することで、女性のライフステージに寄り添うようにしています。
待合室では体内記憶をテーマにした映像が流れていますね。
診療していると、「おなかの中で音楽を聞いてたよ」「私がお母さんを選んだの。優しそうだったから」などという不思議な話をよく聞くんです。愛とか友情とか、目に見えないことが実はとても大切なんです。人生観が変わり、疲れているお母さんが救われるきっかけになる。そんなお母さんの感情はおなかの中の赤ちゃんも敏感に感じ取っていると思うんです。お母さんが幸せなら赤ちゃんもきっと幸せです。希望される方には、妊婦健診時に胎児のエコー動画をDVDに録画しています。ご主人やおじいちゃんおばあちゃんなど家族全員が妊娠というものを実感できるし、なにより赤ちゃんが話題の中心になり、産まれる前から主役になれるから。今のエコーは画質が良いので、赤ちゃんの笑っているような顔が見えることもありますね。母と子の絆を実感していただくことが大切だと感じています。
女性のためのイベントも充実していますね。
出産を控えた方々のために、母親学級や両親学級、ヨガクラスなどを開いています。生後2ヵ月から6ヵ月未満の赤ちゃんにはベビーマッサージなども行っています。また、誰でも気軽に参加できるゴスペルサークルもあります。ゴスペルといっても子どもが知っている歌も多く歌うので、皆さん楽しんでくれています。当院ならではといえるのが「半年たったね誕生日会」「1年半たったね誕生日会」。なぜ1年半かというと、赤ちゃんの器官が発達して、いろいろな反応が出てくる時期だから。そして、多くのお母さんが少しつらくなる時期。家にこもりがちで一人で悩んだり、うつうつした気持ちになったりという方も多い。このイベントで同じような境遇の人とおしゃべりして、知り合うきっかけになってくれたらうれしいですね。
子を産む幸せを説き、少子化に一矢報いたい
患者と接する時に心がけていることは?
約40年間、産婦人科医師として診療してきましたが、本当にいろいろな方がいらっしゃるので、接し方としてこれが正解と言えることはまずありません。一人ひとり、その方がどのように感じているのかをくみ取ってあげることが大事。できるだけこちらから質問を投げかけるようにして、「話しやすいな」「相談しやすいな」と思ってもらえるように心がけています。「医師らしくない」とよく言われる髪型も、親しみを持ってもらうのに一役買ってくれているのかもしれませんね(笑)。受診のハードルを下げるのは医師の役目だと思います。そのために先日、患者さんの利便性を考えて外来予約システムも刷新し、より来院しやすい環境を整えました。また、当院はベテランのスタッフが多いのも特徴です。父の代から勤めるスタッフもいますので、妊婦さんにとっても心強いようですね。
医師としてのやりがいを感じる時は?
生命の誕生に立ち会えること。研修医時代を含め数多くの出産に立ち会ってきましたので、私にとって出産というものは当たり前のはずなのですが、当たり前ではないんです。一回一回にドラマがあり、一生懸命に取り組んでいます。やっぱり生命の誕生というのは本当にすごいことだと思います。お産が無事終わったことを報告するだけで、みんなの顔が明るくなるしみんな喜ぶ。おじいちゃんおばあちゃんにとっても、孫の成長は頑張る活力になります。それによって、社会が元気になることにつながっていくと思うんです。赤ちゃんが世の中に与えるパワーはとても大きい。近年は開業当時に生まれた子が、当院でお産されることも増えてきました。感慨深いものがありますね。
今後の展望や目標を教えてください。
「子は宝」ですので少子化を止めたいという思いがあります。そのために2022年5月から、より正確に胎児の状況を把握できるよう、毎月2回、火曜日の午前中に、愛媛大学医学部附属病院所属の超音波検査を専門とする先生に、院内で検査を実施してもらうことになりました。また、「結婚して子どもを産むことは幸せ」「家族をもつことは幸せ」という考えを1人でも多くの方に伝えていくことも目標の一つで、イベントの開催など、そのきっかけづくりを四六時中考えています。もちろん地域のお役にも立ちたい。現在、新居浜市医師会の理事を務めていますが、この役割をしっかり果たすことに力を注いでいます。「人と人が関わる以上は、お互いにプラスにならなければ」と感じています。プラスとプラスが合わされば、プラスが充満し社会が良くなる。「この人と出会えて良かった」と思われるような人間になれるよう、日々精進していきたいと思っています。