中野 憲行 院長、中野 憲仁 副院長の独自取材記事
中野医院
(八幡浜市/八幡浜駅)
最終更新日:2021/11/22

八幡浜市の五反田にある「中野医院」。中野憲行院長が開業して約40年、地域の人々の健康を支える内科のかかりつけ医として親しまれてきた。2019年に息子である中野憲仁先生が副院長として診療に加わってからは、高齢者の在宅医療にも力を入れ、看取りにも対応している。長年同院に通っていた患者だけでなく、町のかかりつけ医として、地域の高齢者を最期まで責任を持って診ていきたいというのが同院の大きな指針となっている。中野院長と憲仁副院長に、日頃診療で意識している点や医師として大事にしている想いについて、たっぷりと話を聞いた。
(取材日2021年10月23日)
八幡浜で町のかかりつけ医として愛され続けて数十年
医院のこれまでの歩みや、お二人のご経歴について教えてください。

【中野院長】もともと私の父が八幡浜で医院を開いており、その代から考えると中野医院自体の歴史は70年ほどになります。大学を出て数年後に父が亡くなり、それを機に私は八幡浜に戻ってきて市立八幡浜総合病院に勤め始めました。その後父が亡くなって4~5年の空白期間を経た後、現在の中野医院をこの場所に開業したのが1982年になります。その後息子が生まれたのですが、私は当初、彼が医師になるとは思っていなかったんですけどね。
【憲仁副院長】父はそう言いますが、私自身医師として働く父の姿を子どもの頃から毎日見ていたので、医師が一番身近な仕事ではありました。なので広島大学の医学部へ進学し、そのまま卒業後7年広島の病院で勤務をして、その後八幡浜に戻ってきたのが2016年、当院での勤務を開始したのは2019年からになります。
それぞれの専門分野と、それを選んだ理由についてお聞きします。
【中野院長】私は内科の中でも呼吸器が専門分野になります。大学の学位取得の際は喘息を専門として研究していました。呼吸器内科を専門に選んだ理由は、当時の身近な人々の影響が大きかったと思います。大学の友人やお世話になっていた教授の助言が決断の後押しになり、呼吸器科を専攻しました。
【憲仁副院長】私も父と同じく内科を選択をしたのですが、専門分野は消化器です。内科を選んだのは、自分の将来なりたい医師像がいわゆる「町のかかりつけ医」だったからですね。地域の患者さんの身近なトラブルを解決する医師になるなら、一般内科が一番適していると思いましたし、内科医に必要な診断治療の技術は、これから医療を行っていく上で必ず役に立つと考えたからです。
親子2代で診療をしているメリットは何だとお考えですか?

【中野院長】診察や診療でどちらかの医師と馬が合わない場合でも、もう一人の医師がかかりつけになるかたちで患者さんが継続して通い続けてくださることでしょうか。今はもうそんなことはないですが、昔私はこの辺りでもかなり怒りっぽい先生として知られていたようなので(笑)、患者さんの中にはたまに、私でなく息子に、という方もいらっしゃいます。
【憲仁副院長】今、私自身はこの医院の副院長と、市立八幡浜総合病院の勤務医の二足のわらじを履いているんです。なので、私が向こうに出勤する際は父が診療を引き受けてくれるので、安心して勤務医の仕事ができています。同時に私が勤務医として働いていることで、外部の病院との連携もスムーズです。副次的ではありますが、それも2人で診療しているメリットになっているかもしれません。
専門分野に縛られない地域のかかりつけ医としての役割
医院の特徴について教えてください。

【憲仁副院長】特徴としてはまず、消化器疾患に対する診療体制や検査設備を充実させている点ですね。胃の内視鏡検査や大腸内視鏡検査など、検診の二次検査まで対応できる機器をそろえています。ただ、実際にこの医院を訪れる患者さんの感覚としては、先ほどもお話ししたいわゆる町のかかりつけ医として利用する方が非常に多いので、消化器という専門分野にこだわらず診療を行っているのが実状です。
【中野院長】訪れる患者さんは圧倒的にご高齢の方が多く、そういった方の場合は抱えている病気や症状も1つや2つといったケースだけではありませんから、結果としてホームドクターのように、総合的にさまざまな症状を診るかたちになっていますね。
診療で気をつけていること、心がけていることは何ですか?
【憲仁副院長】かかりつけの患者さんからの連絡は、いつでも医師につなぐことができる体制を整えています。時間外で医院での診療ができない場合でも「今すぐに●●病院の△△科に連絡したほうがいい」とか、「これから行くので自宅で待機しておいてほしい」など、具体的な助言やアドバイスがもらえるだけでも、患者さんの安心感は全然違いますからね。また、まだまだ数は少ないですが、近年当院では患者さんの看取りに携わるケースも増えてきています。今は私一人で行っているので、まだそこまでたくさんの人を診ることはできませんが、長年通ってくださっていた患者さんの中には、ご家族のご意向も含めて自宅での看取りを希望する方が増えてきているので、その場合は私が訪問するスタイルを取っています。
訪問診療や看取りに取り組むようになった理由は?

【憲仁副院長】やはり患者さんの信頼や安心感を第一に優先する、ということに尽きますね。地域柄どうしてもご高齢の患者さんが多く、患者さんの平均年齢も70歳半ばぐらいにはなるんじゃないでしょうか。長年診療してきた患者さんも多いため、最期を迎える時はこのまま当院で、という希望が患者さんやご家族の方から寄せられることも多いので、私たちとしてもやはりそれに応えていきたいという思いが大きいですね。また、感染症の流行で在宅での看取りを希望される方も増えてきており、私たちの医院でもできる限りのことをしよう、という気持ちで患者さんを診療しています。
地域の主治医として、患者の最期まで寄り添う医療を
患者さんの最期に携わる看取りについては、難しい部分も多々あるかと思いますがいかがですか?

【中野院長】長年診療を続けてきた患者さんであれば、本人やご家族のご意向などもある程度把握はしているのですが、時々そうでないケースもあるのでその点が難しい部分ですね。例えば別の市で治療や緩和ケアを受けている患者さんが地元の八幡浜に戻りたいという意向を示している、と施設から受け入れを相談されることもあります。これまでに一度も診療していない、信頼関係が築けてない方の最期を任されるわけですから、さまざまな難しさはありつつも、看取りを希望する患者さんは増えているので、自宅での看取りに携わる医師の必要性はやはり高いということなんでしょうね。
医師としてやりがいを感じるのはどんな時ですか?
【中野院長】患者さんが長年この医院に通ってくださっていることが、私にとって一番のやりがいなのかな、と思います。私たちのことが嫌になったら来ないでしょうし、この医院に長年通ってくださっていることが、皆さんからの何よりの信頼の証かな、と思っています。
【憲仁副院長】あと私の場合は、患者さんのご家族に感謝された時でしょうか。在宅療養となった患者さんの多くは、もう治療の手立てがないケースも少なくなく、苦痛を和らげることしかできない場合もあります。それでも「最期まで一緒に寄り添ってもらえて本人もきっと幸せだったと思います」とご家族の方から仰ってもらえると、ありがたいですし、医師になって良かったと感じます。
最後に、医院の今後の展望について教えてください。

【憲仁副院長】父が今まで守ってきた、町のかかりつけ医・身近な主治医という医院のイメージを引き継いでいくことがまず一番ですね。それと、在宅医療や看取りは、今後この地域でもますますニーズが高まっていくでしょう。実際八幡浜では、ご高齢の患者さんの訪問診療に力を入れて看取りにも対応する医院が増えており、愛媛の中でも在宅医療に注力している自治体の一つになっているんじゃないかと思います。その中で微力ではありますが、私たちの医院も自分たちのできる範囲で、今後も尽力していきたいですね。