佐藤 真 院長の独自取材記事
佐藤医院
(松山市/本町六丁目駅)
最終更新日:2021/10/12

松山市鴨川にある「佐藤医院」。1945年に開院して以来、地域のかかりつけ医として親しまれている歴史あるクリニックだ。3代目院長の佐藤真先生は愛媛大学医学部を卒業後、循環器内科の医師として愛媛大学医学部附属病院や愛媛県立中央病院などに勤務。その後、父である2代目院長が病に倒れたことをきっかけに同院を継承した。同院では、風邪や腹痛といった身近な症状をはじめ、循環器や呼吸器、内分泌の疾患、生活習慣病の治療と生活指導など内科全般を診療。また、訪問診療や在宅医療支援にも力を入れている。穏やかな人柄が印象的な佐藤院長に、クリニックの特徴や地域医療に対する熱い思いを語ってもらった。
(取材日2021年1月21日)
3代にわたって地域医療を支え続けるクリニック
歴史のあるクリニックですね。

1945年に祖父が開院したので、もう76年も続いていますね。祖父から父へと引き継がれ、私で3代目になります。父は30年以上にわたり2代目院長を務めましたが、脳梗塞で倒れてしまいまして。当時、私は愛媛県立中央病院に勤務していたのですが、父の病をきっかけに後を継ぎました。以前は入院患者も受け入れていましたが、現在は外来と訪問診療をメインに行っています。また、急患の場合は24時間対応しております。祖父の時代からの患者さんが今でも来てくださり、本当にありがたいですね。
医師をめざしたきっかけを教えてください。
実は、母以外の身内は全員が医師なんですよ。一般企業への就職活動や、医師以外の職業についての話を聞く機会が全然なくて(笑)、そういった家系だったこともあり、自然の流れで医師をめざしていました。もちろん、地域医療に貢献したいという思いを前提にですけどね。その結果、愛媛大学医学部を卒業後、愛媛大学医学部附属病院の第二内科に入局しました。
こちらではどのような診療をしていますか?

風邪や腹痛といった身近な症状をはじめ、循環器や呼吸器、内分泌の疾患、生活習慣病やメタボリック症候群の治療と生活指導など、内科全般を診療しています。ある程度の症状までは当院で診察を行いますが、例えば大きな病気の可能性がある場合は症状に適した病院を、内科系の病気でないと判断した場合には専門の医療機関を紹介するなど、患者さん一人ひとりの状態に合わせた医療の提供を心がけております。また、インフルエンザなど感染症の疑いがある患者さんも受け入れており、現在は新型コロナウイルスの検査も実施しています。感染対策のために別室にて待機してもらったり、インフルエンザウイルスが流行しやすい12月~3月は祝日も診療したりと、患者さんが安心して治療を受けられる環境づくりに努めています。さらに、午前診療と午後診療の合間に往診や訪問診療も行い、医療の面から地域の皆さんをサポートできるよう心がけております。
在宅医療支援に注力し、患者とその家族をサポート
在宅医療支援に力を入れていると伺いました。

はい。在宅医療を家族だけで行っていくのは、正直言って不可能だと私は考えています。責任感から「自分でどうにかしなくちゃ」と思う人もいるのですが、在宅医療を行う家族の負担は想像以上に大きいものなんですよ。「いつも寄り添っていてあげたい」といった家族としての思いもあるでしょうが、体や心にはどうしても限界があります。もちろん、患者さんにとって家族のサポートは欠かせないものではありますが、プロの手を借りた上でサポートしていただければと思います。むしろ、プロに任せてほしいですね。当院はさまざまな医療機関と連携し、在宅医療を行う患者さんとそのご家族をしっかり支えていきます。
具体的にはどのような支援をされているのでしょうか?
糖尿病や高血圧など生活習慣病の治療には食事療法が欠かせないのですが、その食事を作るのは、患者さんのご家族であることがほとんどなんですよね。そこで当院では、患者さんとご家族に食生活のアドバイスをさせていただいています。例えば、食事を作る際は「患者さんと家族の食事はあえて分けずに作る」とかですね。毎日3食、患者さんの分だけ別で用意するのはものすごく大変なことなので、最初から患者さんでも食べられるほどの薄味にしておけば一度の支度で済みます。家族が食事をする際は醤油などをつけて食べれば物足りなさもカバーできるので、食事の支度をしない家族にもそういった協力をしてもらえるように伝えています。また、認知症のケアについても学んできましたので、介護を行うご家族の悩みや不安に寄り添うことも可能です。一人で抱え込まずに、気軽に相談していただければと思います。
印象に残っている患者さんのエピソードを教えてください。

ずっと長くお付き合いしていた患者さんで、症状が悪化したためほかの病院に入院することになった方がいました。しばらく入院していたのですが、これ以上は治療ができないと判断されてしまったんです。その患者さんは「最後は佐藤先生に看取ってほしいから」と在宅医療を希望されました。痛みを取る処置しかできない状態だったけれども、患者さんや家族の方たちから信頼して任せていただけたことは本当に感謝しています。患者さんを看取ることはつらく悲しいことではありますが、医師としてはありがたいことでもあります。在宅医療のみならず外来診察でも同じことが言えますが、患者さんや家族の方からお礼を言われた時は本当にうれしいですし、大きなやりがいも感じますね。
家族の介護負担を減らすために
お忙しいとは思いますが、プライベートはどのように過ごされていますか?

趣味はギターやベース、バイオリン、三味線などの弦楽器を弾くことです。実は中学3年生からバンド活動をやっていたんですよ。モテたいという理由だけで始めました(笑)。今はもうバンド活動はしていませんが、時間がある時は自宅で弾いてリフレッシュしています。あと、定期的に弾いていないと耳の聞こえが悪くなってしまうんですよ。絶対音感を持っているわけではありませんが、一時期は曲を10回くらい聞けば弾けるようになっていましたね。今はもう無理ですけど、リフレッシュと耳の調子を整えることを目的に、ギターやベースなどを弾いて過ごしています。
今後のビジョンについてお聞かせください。
もう少し訪問診療を増やしていきたいですね。当院の医師は私一人だけなのであまり多くは増やせませんが、在宅医療を行っているご家族の負担を今以上に減らしていくことをめざしています。現在は入院から在宅医療に切り替える際に、患者さんの治療・検査データを連携している医療機関と共有しているのですが、当院が患者さんやそのご家族に対してさらなる支援を行うためには、もっと密に連携を取ることが必要だと考えております。治療を受ける患者さんの負担、そして毎日そばでサポートしているご家族の負担を減らせるよう、当院でできることを積極的に行っていきたいです。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

在宅医療や在宅介護は、家族だけでサポートをしていくのは現実的に難しく、決して一人で抱えてよい問題ではありません。家族だからできることがある一方で、家族だからこそできないこともあります。ですので、そういったことはぜひ私たちプロに任せてください。何でも家族だけでやろうとしては、生活がボロボロになってしまいます。患者さんとその家族をサポートするために、医師や介護士などのプロがいるのです。当院は訪問介護ステーションではないので「連携」というかたちにはなりますが、医療のプロとして在宅医療や介護のお手伝いをさせていただきます。「一人で抱え込まない」「頑張りすぎない」「無理しすぎない」これが大切です。何かお困りのことがあれば、気軽にご相談ください。