坪井 一世 院長の独自取材記事
坪井整形外科
(松山市/土居田駅)
最終更新日:2025/07/16

松山市南斎院町の住宅街の一角に医院を構える「坪井整形外科」は、この地で40年間地域の人々の健康を支え続けている医院だ。2代目院長の坪井一世先生は、初代院長の父から同院を継承し今年でおよそ10年。高齢患者の膝・腰などの日常的な痛みの症状から、年齢を問わずケガのリハビリテーション、スポーツ障害の治療といった、実に幅広い症状の診療を日々行っている。目の前の患者に最良の治療を提供するために、リハビリ設備を中心に、レントゲンでは診断できない領域の検査ができるオープン型MRIの導入など、診療環境の整備に余念がない。そんな坪井院長に、これまでの経歴や医院の強み、患者との向き合い方など詳しく語ってもらった。
(取材日2022年11月7日)
親子2代で地域の人々の健康を支える整形外科医院
医院の成り立ちについて伺います。

初代院長である私の父は、大学を卒業後、生まれ故郷の広島で大学の医局に入り整形外科の医師として働いていました。その後医局の人事で愛媛に転勤になり、そこで独立して当院を開業したのが今から40年前になります。私もいずれ父親と仕事をしたいという気持ちはあったので、愛媛県内の各所で働いた後、この医院に戻り、約5年間、父と一緒に診療していました。この医院を継いだのが開業30年の時だったので、院長を務めるようになってからちょうど10年の月日がたったことになりますね。
先生のご経歴をお聞かせください。
愛媛に来たのが小学校に通い始めた頃で、それからずっと愛媛で暮らしています。高校を卒業した後は愛媛大学医学部に進学し、卒業後は同大学医学部附属病院で経験を積んで、その後、宇和島市や愛南町など南予の病院を中心に勤務しました。南予で5年ほど働いた後は、再び大学病院に戻ってそこで6年ほど勤め、2007年からこの医院で診療を開始しました。
医師を志したのは、やはりお父さまの影響でしょうか。

実は幼少期に父と過ごした思い出が、私にはあまり残っていないんです。というのも父は非常に多忙で、子どもの私が起きる前に仕事に出て、寝た後に帰ってくるような生活でした。ですがそんな仕事を大変そうだと思う一方で、それほどやりがいがある仕事なんだな、という印象も受けていました。実際に医師として働く姿を見た記憶はほとんどありませんが、それでもやっぱり強い影響を受けていたからこそ、同じ医師の道を歩んでいるのでしょうね。
リハビリに注力。患者との意思疎通を大切に
先生のご専門はどのような分野になるのでしょう。

私自身の専門は膝から下、足周辺の部位で、足首の関節の障害や、中でもスポーツ障害に関する治療が症例として多い分野になりますね。ご高齢の患者さんのケースですと、外反母趾や足回りの関節リウマチの治療を主に行っていました。その分野を選んだ理由としては、南予から大学病院に戻った時代にお世話になった教授の影響が大きいです。その先生が足周辺の部位を専門にしていたのですが、当時愛媛には足周辺専門の医師が少なく、周囲にもあまり浸透していない分野だったんです。ですが人間の生涯の健康を考えた際、足の健康維持は非常に大切な要素だと考えたため、私もその教授に師事して研鑽を深めることにしたのです。
こちらの医院で特に力を入れている診療分野はありますか?
基本的な整形外科疾患の診療はもちろんなのですが、中でもリハビリにはかなり注力していますね。こちらの都合で患者さんのリハビリに制限や不自由がかからないよう、人員配置やスペースの確保などは最大限の努力を行っています。普段私が診察室で患者さんと向き合う時間は、どうしても限られてしまいます。でもリハビリの場は診察室以外の場所で患者さんからさまざまなお話が聞けるとても貴重な場だと考えているんです。診察時に話せなかったことも、リハビリをしながらだとスタッフにいろいろ話せる方も多いですからね。つまりリハビリに力を入れることは、患者さんの情報を収集でき、患者さんとコミュニケーションを取る時間の確保にもつながると考えています。
患者さんと接する際に気をつけていることはありますか?

2つあります。まず1つ目は、患者さんが抱える症状について、広い視点を持つこと。訴えている症状が腰の痛みであっても、いざ原因を突き止めると整形外科でなく内科や泌尿器科での治療が必要なケースが少なからずあるんです。患者さんの抱える痛みや悩みの原因が、他の診療科の症状から来ている可能性もるため、状況によっては適切な他の科への紹介も行えるよう、幅広い選択肢を自分の中で持つように心がけています。2つ目は、患者さんの背景に即した治療やリハビリ提案を行う、という点です。同じ症例や病気であっても、長時間の移動ができない、家から出られないといった生活背景は患者さんによって千差万別です。症状が同じでも治し方のプロセスにはたくさんの選択肢がありますから、そこもやはり広い視野を持って患者さんと向き合うことを意識していますね。
体の不調を諦めず、小さなことでも気軽に相談を
一般的な整形外科疾患や症状について、どのような見解をお持ちですか?

足の治療だけに限りませんが、特にご高齢の患者さんの中には、体に現れる痛みや違和感を「老化による衰えなのでどうしようもない」と放置してしまい、病気がかなり進行した状態で初めて受診する方がかなりの数いらっしゃいます。老化による症状であっても、進行具合を緩やかにしたり、他の場所に影響を及ぼす前に食い止めたりすることは、健康寿命の延伸を図る上でも非常に大事です。老化による衰えやちょっとした痛みだと諦めることなく、小さな症状でもなるべく早めに医療機関に相談することをお勧めします。
お休みの日はどのように過ごされているのでしょうか。
長年野球を中心としたスポーツ観戦を趣味としています。私自身が大学まで野球をしていたこともあり、今はプレーこそしていませんが、見る側になって引き続きスポーツを楽しんでいますね。休日にはクリニックのスタッフを連れて、地元のスタジアムで野球観戦することもありますし、時には広島など県外に遠征することだってあります。選手の活躍を見ているだけで仕事のリフレッシュになりますし、もともと持っていたスポーツの知識が、日々の治療や、患者さんとのコミュニケーションに役立つこともあって、それもまた楽しいですね。
今後の展望についてお聞かせください。

クリニックを大きくしたい、何か変わったことをやりたい、という気持ちはあまりありません。せっかく40年続いてきた医院ですので、引き続き地域の方々の健康づくりのお手伝いができるように、今のスタイルを継続していくことが大事なのかなと考えています。今後も「火」を絶やさないよう、20年、30年と診療を続けていきたいですね。自分の体に「何か変だな」「怪しいな」と思うことがあれば、いつでも気軽に相談していただける、そんな存在になれたらいいなと思います。