吉松 卓治 院長の独自取材記事
吉松こどもクリニック
(松山市/上一万駅)
最終更新日:2025/07/17

2025年5月、松山市の上一万駅から徒歩2分の場所にリニューアル開業した「吉松こどもクリニック」。入り口の青いタイルが植栽の緑に映える、爽やかな外観が印象的だ。父・吉松誠先生から前身の「吉松小児科」を継承するかたちで開業した吉松卓治院長は、愛媛大学医学部附属病院や愛媛県立中央病院での経験を生かし、子どもとその家族に寄り添う診療をめざす。プライベートでは2児の父である吉松院長に、開業に至る思いや診療の際に心がけていること、尊敬する父・誠先生への想いなど、たっぷり聞いた。
(取材日2025年6月12日)
また通いたくなる、アットホームな小児科クリニック
お父さまから継承するかたちで開業されましたが、リニューアルに際しこだわった点について伺います。

敷地面積が限られており平屋は難しかったので、3階建てにしました。それが感染系と非感染系のフロア分けという発想につながり、結果としてお子さんの検診や予防接種で受診されるお母さん、お父さんが安心して来られる造りになり良かったです。1階は発熱・感染症を専門に診る外来、それ以外は2階というフロア分けで、それぞれに待合室と診察室を設けています。当院は私と父の2診体制ですので、1階と2階で同時に診察ができるのも強みです。待ち時間を少しでも短縮し、患者さんの負担をできる限り軽減することを心がけています。2階のキッズスペースの壁面には、東京のデジタルコンテンツ制作会社の作品も設置しました。線を描いたり、タッチしたりして音楽を奏でるデジタルお絵描きで待ち時間も楽しく過ごしていただけたらと思っています。
1階の待合室に飾られた砥部焼の作品など、院内のデザインもすてきですね。
ありがとうございます。1階の待合室の作品は、砥部焼の工房に依頼しました。この工房は私が以前から大ファンで、建て替えの際はぜひお願いしたいと思っていたんです。来院された方に、この工房独特の美しい青を感じていただき、リラックスして過ごしていただけたら幸いです。またクリニック全体的に清潔感を意識し、外装・内装ともに青と白を基調にしました。3階建ての建物に大きな吹き抜けを設け、シンボルツリーとしてシマトネリコを植えました。これから子どもたちを温かく見守り、一緒に成長していってくれることを願っています。院内は杉の木をふんだんに使った温かみのあるデザインを基本としています。
どのような診療を行っていますか?

小児科の一般診療を中心に、アレルギーや皮膚のこと、感染症など幅広く、どんな訴えにも対応できるようにと考えています。お熱など症状があるときだけでなく、発育に関して不安に思うことなど、些細に思われるようなことでも気軽に相談していただけたらうれしいです。頭の形を専門に診療する外来も開設し、向き癖や生まれつきの頭の変形があるお子さんの相談もお受けしています。また夜尿症やおねしょに関する問題も、気にされている親御さんは多いと思います。幼児期は、できなかったことが徐々にできていくようになる成長の時期。おねしょもそのうち治るかな、と見守っていたら、気づけば6歳、7歳となっている場合も。5歳を過ぎても夜尿症が治らない場合は、一度ご相談いただければと思います。
幅広いニーズに応え、子どもと家族に寄り添う診療を
診療において心がけているのはどんなことでしょうか。

当院は、お子さんとご家族に寄り添う診療をコンセプトとしています。人によってお子さんに関するお悩みや症状はさまざまです。ご家族構成やお仕事、ライフスタイルも違いますので、まずはしっかりとお子さんとご家族の声に耳を傾け、何を求めてらっしゃるのかをくみ取ることを診療のスタートとしています。そして私もまさに子育て当事者ですので、寄り添い、共感し、それぞれの最良の答えを一緒に探していくようにしています。父は前身の吉松小児科から30年以上、この場所で診療を行っていますが、やはり疾患だけでなくご家族のことをしっかり見ているなと感じます。私もお子さんとご家族のことを把握し、こまやかな気遣い、心配りを大切にしたいですね。
親御さんが気軽に相談できるのはありがたいですね。
近年は情報が多様化しており、インターネットやSNSから簡単に情報が入手できる分、情報過多のあまり悩まれている親御さんが多い印象があります。誤った言葉をうのみにして、それが自分のお子さんには合わないことだったりすると、悪影響を及ぼす可能性もあります。ですから小児科医師としての専門知識を背景にした正しい情報を伝えることを意識しています。加えて、私なりの子育て経験も踏まえつつ、お一人お一人に合わせたアドバイスを心がけています。
小児科医師としてやりがいを感じる瞬間は?

日々の診療で、私はいつもご褒美がもらえていると思っています。診察の際、「一緒に頑張ろうね」、できたら「偉かったね」といった声かけを積極的に行い、お子さんにもできる限り寄り添うよう心がけているのですが、最初は不安で泣きながらクリニックに来たお子さんが、帰るときには笑顔になって「バイバイ〜」ってタッチをして、ニコニコしながら帰っていく。どんなに忙しくても、その瞬間にすべてが報われます。本当にご褒美ですね。子どもたちにも満足してもらえるように、かつお母さんお父さんも、お悩みやお困り事、疑問を伝えられるような存在になれたらと思います。
親子二診体制で地域の健康を守り続ける
開業に至るまでの経緯をお聞かせください。

1931年、松山市勝山町で曽祖父が吉松医院を開業。1964年、祖父の代から小児科になり、私で4代目になります。祖父や父のような小児科医に憧れ、小学生の頃から小児科の先生になりたいと思っていました。高知大学医学部を卒業後、愛媛大学医学部を経て愛媛大学の小児科医局に入局し、愛媛県立中央病院、愛媛県立今治病院、愛媛大学医学部附属病院に勤務。その後、西条中央病院で経験を積み、今回のリニューアル開業に至ります。医師としての経験はまだ浅いですが、父と少しでも長く一緒に働きたかったこと、患者さんの引き継ぎをスムーズに進めていくことを考えた上でこのタイミングになりました。また、前院の建築から60年がたち、老朽化が進んでいたことも一つのきっかけです。建て替えをするなら私の代で、と父が考えてくれていたんです。
小児科医師として、あらためてお父さまの尊敬するところは?
父の尊敬するところはたくさんありますが、やはり本当に患者さんのご家族のことを考えている、これに尽きますね。丁寧にお話をお聞きしながら情報を取り入れる意識を持っていて、父を見ていると、本当に患者さんに慕われているんだなというのを感じます。地域のかかりつけ医としてご家族をしっかりと見ているから、小さい頃から通っていた女の子がお母さんになって、お子さんを連れて来てくださるということもあります。さらに、そのお母さんご自身も受診を希望されることがあって(笑)、長年の信頼関係で結ばれているんだなと、父に理想の小児科医師像を見ています。
ところで、お休みの日はどのようにお過ごしでしょうか。

5歳と3歳の娘がいますので、休日は家族で食事に行ったり、家族で温泉へ行ったり。それが一番の幸せですね。診察室でも、子どもの好きな遊びや、子どもと一緒に行けるレストランの話で盛り上がることも多いです。妻も医師として働いているので、共働きの大変さもまさに実感しているところです。本当に妻には頭が上がりません。幸いなことに、娘たちもこのクリニックを好きになってくれていて。長女は幼稚園が終わるとクリニックに帰ってきて、おばあちゃん、おじいちゃんと3階のスタッフルームで過ごしたり、近くの公園で遊んだり。父には、午前中は医師として、午後は孫の相手をしてもらっているんです(笑)。
今後の展望と、読者の皆さんにメッセージをお願いします。
60年の長きにわたり地域の皆さまに育てていただいた吉松小児科を、このたび吉松こどもクリニックとして継承しました。今後も地域の皆さまの健康と不安のない生活の助けになれたらと思っています。どんな些細なことでも、気軽に相談していただければすごくうれしいです。当院の強みは、1階の感染症エリアと2階の非感染症エリアを分けており、ウェブで予約・受付・問診を実施していること。可能な限り待ち時間が少ない診療を提供したいと思っています。また土曜は毎週夕方まで、日曜も月に2回診療を行っていますので、どうぞお気軽にご来院ください。