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50年以上の臨床・研究を経て解き明かす
膝関節疾患のメカニズム

善紀クリニック

(仲多度郡多度津町/多度津駅)

最終更新日:2025/04/11

善紀クリニック 50年以上の臨床・研究を経て解き明かす 膝関節疾患のメカニズム 善紀クリニック 50年以上の臨床・研究を経て解き明かす 膝関節疾患のメカニズム
  • 保険診療

「一緒に膝を研究しようか」。「善紀クリニック」の山地善紀院長が、先輩医師とともに膝関節運動の研究を開始したのは、1974年のことだ。以来50年以上、多くの人が悩まされる「膝関節の痛み」の解消に尽力している。研究活動の根幹を成すのは、膝の曲げ伸ばしに伴う不随意的な骨の回旋運動。その生体力学をエックス線画像から分析し、変形性膝関節症、半月板損傷、膝靱帯損傷などのメカニズム解明につなげてきた。関節鏡視下手術では、損傷した靱帯の温存と再建の両立を図るなど、柔軟なアプローチを提案。その一方で、現在はパルス高周波療法のような先進の治療も導入している。長年にわたる研究内容やこれまでの治療実績について、山地院長に話を聞いた。

(取材日2025年2月5日)

膝関節の回旋運動に着目し、エビデンスに基づいた膝関節疾患の治療法を模索

Q先生が最初に取り組んだ研究テーマについて教えてください。
A
善紀クリニック 整形外科の医師として、50年以上のキャリアを持つ山地院長

▲整形外科の医師として、50年以上のキャリアを持つ山地院長

膝関節は太ももの大腿骨、膝の皿と呼ばれる膝蓋骨、すねの骨にあたる脛骨と腓骨の4つで構成されます。大腿骨と脛骨をつなぐのは前十字・後十字靱帯と内外側の側副靱帯で、骨と骨の間には、膝関節への衝撃を吸収し安定させる半月板という組織があります。膝を伸ばす際は大腿骨の丸い先端が脛骨の上を転がり、そこに滑り運動が加わっていくのですが、最大限まで膝を伸ばすと、大腿骨は脛骨の内側に約17度回旋。すなわち内旋(screw home)運動が起こります。私はこの現象を解析し、膝関節疾患の治療に役立てるため、伸展する膝関節のエックス線撮影と、屈曲角度ごとの回旋角度の計測を15年間、継続。開業後に博士号を取得しました。

Q膝の疾患によって、回旋運動も変わってくるのでしょうか?
A
善紀クリニック 画像左は、研究の原点となった山地院長自作の膝標本だ

▲画像左は、研究の原点となった山地院長自作の膝標本だ

変わってきます。例えば年齢とともに膝関節の軟骨が摩耗する変形性膝関節症では、膝関節が伸展するにつれ、大腿骨が脛骨の外側に回旋。つまり外旋します。この異常運動を改善するために、軸つき装具や足底板の着用、脛骨骨切り術などの手術を行って、膝の痛みの解消と変形防止に努めるのです。また半月板損傷や膝靱帯損傷でも正常な回旋運動は見られず、手術の方法によっては、元の正常な運動に戻りません。私はこの事実を受けて「半月板損傷は部分切除にとどめるべき」と発表し、さらに医師3年目にして、開創下の半月板修復術に挑戦。関節鏡を持参して、先輩医師と四国各地へ赴き、鏡視下の部分切除術や修復術の手技指導に力を尽くしました。

Q半月板だけでなく、前十字靱帯の修復術にも挑まれたそうですね。
A
善紀クリニック 前十字靱帯の修復に際しては、縫合術または再建術が選択される

▲前十字靱帯の修復に際しては、縫合術または再建術が選択される

スポーツ活動で断裂した前十字靱帯の自然治癒は困難とされ、鏡視下の縫合術や再建術が選択肢となります。若年者が受傷した直後や、半月板損傷を合併している場合には前十字靱帯縫合術を選択。40歳以下でガクンと膝の力が抜ける膝崩れ(giving way)現象があり、かつ前十字靱帯が単独で損傷、もしくは受傷から時間が経過している場合には、既に異常な回旋運動が生じているため再建術を適用します。診療当初は人工靱帯のみで再建術を試みましたが、術後の回旋運動に残る異常性や、頻回に再断裂する可能性を考慮し、太もも後面にある筋肉の腱を移植する再建術に移行。さらに6ヵ月のリハビリで円滑な回旋運動をめざすようになりました。

Q半月板や靱帯の修復術において、共通で心がけたことは?
A
善紀クリニック 勤務医とも同じ志を持って、損傷部位の温存と再建の両立を図る

▲勤務医とも同じ志を持って、損傷部位の温存と再建の両立を図る

いずれも保存療法を心がけました。1980年代に、欧米で開発された当初の鏡視下半月板縫合術は再断裂による再手術の確率が高かったため、私は部分切除のみで周辺組織を温存する道を選んだのです。また太もも後面の移植腱と人工靱帯を併用し再建する際にも、損傷した前十字靱帯の温存に努めました。切除が当たり前の時代もありましたが、残せるものは残して再生を促す、それが私のモットーです。過去をさかのぼれば、人工靱帯を加えずに、前十字靱帯の一次修復のみで再建する方法にも挑戦しています。あれから約30年。当院では全国から集まった非常勤の先生方とディスカッションを重ねながら、今でも温存と再建を両立する医療を志しています。

Q近年は膝だけでなく、腰の新しい治療にも取り組まれています。
A
善紀クリニック 神経に電気刺激を与える、パルス高周波療法を実施

▲神経に電気刺激を与える、パルス高周波療法を実施

早期診断・早期治療を通じて少しでも手術の機会を減らし、患者さんの負担軽減につなげるため、2024年から「パルス高周波療法」と呼ばれる治療法の専用機器を導入しました。これは神経に電気刺激を与えて血流を促しつつ、麻酔薬を注入し痛みの緩和を図るもので、主には椎間板ヘルニアなどによる腰の痛みにアプローチします。ペインクリニックでよく活用される機器ですので、整形外科の診療所ではあまり見かけないかもしれません。現在は愛知医科大学痛みセンターの教授と助教のお二人が土曜限定でこの治療を担当されていますが、いずれは私を含めた医師3人で取り組む方針です。慢性的な腰の痛みでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

ドクターからのメッセージ

山地 善紀院長

自分が正しいと思う信念を持たなければ、目まぐるしく進歩する医療に惑わされ、翻弄されてしまうでしょう。私が実践する医療の原点は、できるだけ解剖学的に、人体組織を元の姿へと戻していくことです。20代の頃には、切除が当たり前だった十字靱帯を残しつつ、左右を非対称にして球面の角度を調整し、120度以上の屈曲、10度以上の回旋を可能にした人工関節を開発したこともありました。今では、そのスタイルが膝人工関節の主流になっています。当院は今後も、日常生活に支障を来す場合にのみ手術治療を実施し、患者さんのお体に傷をつけない保存療法を第一選択肢として、高い精度を実現した先進の医療を提供してまいります。

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