小西 久美 副院長の独自取材記事
小西医院
(木田郡三木町/平木駅)
最終更新日:2025/02/04

琴電長尾線・平木駅から徒歩5分の場所にある「小西医院」は、75年にわたって地域住民の健康を支えてきた町のかかりつけ医だ。元は耳鼻咽喉科の診療所。2019年に小西久美先生が副院長に就任し、同時に内科・循環器内科が診療科に加わった。地元では耳鼻咽喉科のイメージが根づいていたため、当初はなかなか浸透せず、「内科、始めました」と記した貼り紙を貼るなどして周知に励んだという。就任から既に5年。「今は、患者さんから『あの貼り紙、もう外していいんじゃないの?』と言われます」とうれしそうに笑う小西副院長に、循環器内科の医師を選んだ理由や診療に対する想いを聞いた。
(取材日2024年11月6日)
小学1年生で、大好きな祖父の後を継ぐことを決意
医師をめざしたきっかけを教えてください。

小学校1年生の頃に、当院を開業した祖父から「あなたが医院を継いでくれるとうれしいな」と言われたことがきっかけです。父も耳鼻咽喉科の医師でしたが、当時は研究職に就いていたので、後継ぎにはならないと考えていたようです。地域医療を重んじていた祖父は、「この医院がなくなってしまったら、地域の医療資源を守る人がいなくなる」と心配していました。私はそんな祖父の話を聞いて、大好きで尊敬する祖父のお願いならと、二つ返事で「私がお医者さんになって、後を継ぐよ」と答えたんです。この時のことは、今でもよく覚えています。
でも、選んだ科は耳鼻咽喉科ではないのですね。
最初は耳鼻咽喉科の医師になるつもりで研修も受けましたが、耳や鼻の手術が苦手で。人体の表面にあって、日常的に目にしている耳や鼻から大量に血が流れたり、手術後に元の形に戻せなかったりすることがなかなか受け入れられず、向いていないなと。次に考えたのは、呼吸器外科です。肺は日常的に見えていない器官ですし、形も美しくて興味を持ったのですが、がんを発症すると、患者さんの人生が大きく変わります。肺を切除した後には、陸地で溺れるような苦しい思いをする方もいらっしゃいます。そういう患者さんを見ていると、そのつらさが自分のつらさになってしまいました。これは私の弱さによるものですが、「自分のやりたいことと、自分にできることは必ずしも一致しないんだ」と痛感しましたね。
循環器内科を選ばれた決め手は何だったのでしょうか?

心臓にがんができることは極めて珍しく、循環器内科はがんを診ることが少ない診療科です。医師を続けていく上では、手技的にも精神的にも、この科が一番無理がないと考えました。最終的に、循環器内科と消化器内科で悩んでいた時には「尿が好きか、便が好きか」と恩師に問われ、「どちらかというと尿です」と答えたことが、循環器内科へ進む決意表明になりました(笑)。恩師は、「心不全の患者さんの尿をためるバッグがいっぱいになるのを見て、『勝った』と思えるのが循環器内科の医師」とも言っていました。尿がたくさん出るということは、心不全が改善に向かっているということ。まさに、医師が勝利を感じる瞬間なんです。
勤務医時代は、精力的に心臓カテーテル治療に取り組まれています。
細い管を血管内に通すカテーテル治療は、手先を少し動かすだけのようにも見えますが、実は命に直結するダイナミックな治療法です。緊急性の高い患者さんを救おうと懸命にこの手技に取り組み、「第二の人生をもらいました」と感謝の言葉をいただいた時には、大きなやりがいを覚えました。本当は病院でカテーテル治療を続けたい思いもあったのですが、妊娠を機に担当を離れたことで、最初の志を思い出したんです。これからは祖父の遺志を継いで地域医療に貢献しようと、父が再開していた医院に戻りました。
内科と耳鼻咽喉科の医師2人体制で密に連携
こちらの医院は、長い歴史があるそうですね。

75年ほど前に、祖父が「小西医院」として開業しました。祖父の急逝に伴って一度閉院しましたが、1995年に、父が「小西耳鼻咽喉科医院」として診療を再開。その後2019年に、副院長に就任した私が内科・循環器内科を加え、再び「小西医院」と改名しました。医院を継ぐ決心をしたものの、帰ってきた当初は耳鼻咽喉科のイメージが強く「内科もあったの?」と言われたり、すぐに新型コロナウイルス感染症が流行したりと、決して順調なスタートではありませんでした。けれどもコツコツと診療を続けることで、少しずつ「女性の医師がいる所」という認知が広まり、今では幅広い年齢層の方々にお越しいただいています。中でも、若い女性患者さんはとても多い印象です。
医院の強みや特徴を教えてください。
耳鼻咽喉科の父と、内科・循環器内科の私という医師2人体制で診療にあたっていることですね。耳鼻咽喉科を受診しためまいの患者さんに内科で点滴を打つこともできれば、どちらかが休診していた時に、もう1つの科で薬を処方することもできます。発熱患者さんは内科で対応していますが、発熱症状のない風邪の方などは、お好きな医師をお選びいただけます。隣に小児科があることから、小児科の待ち時間などに受診できるところも珍しいのではないでしょうか。ちなみに競合を避けるため、予防接種以外の内科の診察は中学生以上を対象としていますので、ご了承ください。
子ども連れで受診しやすい工夫もされていますね。

帰郷後にリニューアルした院内には、おもちゃを並べた広いキッズスペースや、授乳・おむつ替えのスペース、ベビーチェアを設置しています。「子どもがいると、自分の体調不良で病院に行きづらい」という話をママ友からよく聞くので、少しでも受診しやすい環境を作りたいと思っています。予防接種の後には子どもさん用のご褒美を準備していますし、必要な方にはおむつやおしりふきも用意しています。どれも、私自身の子育ての経験に基づくアイデアです。注射は嫌だと泣く子が、「あそこならおもちゃがあるから行く」と言ってくれたら、親は助かりますよね。子育て世代への配慮は、全世代が通いやすい環境作りにもつながると考えています。入り口にはスロープや車いすもありますが、出入りでお困りの方はお手伝いしますので、お知らせください。
尊敬の気持ちを忘れず、一人ひとりの患者と向き合う
診療の際に心がけていることを教えてください。

どんな方に対しても尊敬の気持ちを忘れずに、対等な立場で接すること。それから話しやすい雰囲気を作ることですね。その方の生活スタイルやお仕事、家族構成などもお聞きできると、治療方針の決定に役立ちます。例えば年配の方が子育て世代と同居していると、若者や子どもさんに合わせた食事を取りがちです。お嫁さんが料理をしていると、余計に食事の希望は言い出しにくいかもしれません。そんな事情を踏まえずに、検査結果だけを見て食事の指導を行えば、患者さんは治療する意欲をなくしてしまうでしょう。「粗食にするのは難しいと思うので、食べた後に運動をしてみましょう」などと、その方の生活に配慮した提案をすることで、患者さんが治療意欲をなくさないように、必要な治療を続けられるようにと心がけています。
先生のお休みの日の過ごし方も伺いたいです。
大好きな子どもたちと過ごしています。医師として、地域の医療を守りたいという思いも強いのですが、子どもたちの母親は私一人です。話をしたり、習い事に付き添ったりといった母親業の手も抜けません。自分の趣味としては、ママ友と年に1回、ハーフマラソンに参加していました。走るために普段から太りすぎないように、筋肉が落ちすぎないようにと気を使いますし、体を動かすいいきっかけになっていたのですが、今は足を傷めてお休み中なので、代わりに歩くようにしています。
最後に、今後の展望をお聞かせください。

お子さんから働き世代、高齢者の方まで、家族単位で診療を行うホームドクターになりたいです。慢性疾患をコントロールする際には、特に患者さんの背景をしっかりと理解して、包括的な診療ができればと思います。東讃は婦人科が少ない地域ですから、女性の更年期症状にも対応していますし、「子どもが朝起きられなくて学校に行けない」といったご相談も多いです。中には「先生の顔を見たら元気になる」と言って通われる方もいて、うれしく思っています。体の調子が悪いけれど、何科に行けばいいのかわからない。そんな時は、どうぞ気軽に当院へお越しください。