溝渕 茂樹 院長の独自取材記事
溝渕内科循環器クリニック
(さぬき市/讃岐津田駅)
最終更新日:2025/01/15

数千本の松林と、美しい海岸線が広がるさぬき市津田町で、およそ30年にわたって地域医療に貢献してきた「溝渕内科循環器クリニック」。同院の溝渕茂樹院長は、循環器内科を専門分野とするベテラン医師だ。10年間勤務した白鳥病院では心臓カテーテル検査・治療の普及に貢献し、開業後は心疾患や生活習慣病など、内科領域全般の疾患に対応。大がかりな検査や治療が必要とされる場合には迅速に専門機関へとつなげながら、東讃地域のかかりつけ医として日々を過ごしている。院外では大川地区医師会の会長も務める溝渕院長だが、会えば穏やかで相談しやすい雰囲気に心が軽くなるだろう。「患者さん一人ひとりと丁寧に接しながら、生涯通えるクリニックにしたい」と話す溝渕院長に、同院の診療方針などについて話を聞いた。
(取材日2024年11月9日)
内科全般に対応し、東讃地域医療を支えるかかりつけ医
循環器内科とは、どのような診療科なのでしょうか?

循環器内科は、心臓と血管の病気を扱っている診療科です。狭心症や不整脈、心筋梗塞といった心臓の病気だけでなく、高血圧症なども循環器内科の範疇となります。心臓から送り出された血液が、血管を通って体を循環する様子をイメージしていただくとわかりやすいですね。循環器の病気は医師と患者さんがお互いに向き合って、根気強く治療していくことがとても重要です。急性期の治療もたいへん意義があるものですが、私は慢性的な循環器疾患の診療を通じて、患者さんと長くお付き合いをしていきたいと考えました。心臓は、人が生まれてから亡くなるまでけなげに働き続ける、体の大本となる臓器です。これからもこの臓器と向き合いながら、患者さんの健康を末永くサポートさせていただきたいです。
これまでのご経歴をお聞かせください。
徳島大学卒業後、最初に勤務したのは高知赤十字病院です。徳島県の病院か高知県の病院に出向となり、「お酒好きの同級生が高知で勤務するとなれば、身を持ち崩すのではないか」ということで、ほとんどお酒が飲めない私が高知行きに手を挙げました(笑)。高知赤十字病院では、希望していた循環器内科ではなく消化器内科に配属されましたが、消化器内科で上部内視鏡検査を数多く経験したことは、私の大きな財産となっています。高知の次は徳島の基幹病院へと移り、この頃に、四国ではまだほとんど広まっていなかった心臓カテーテル検査を経験。大学に戻り、狭心症の基礎研究と後進の指導にあたっていたところで地元香川県の白鳥病院からお声がかかり、その後10年にわたって、心臓カテーテル検査・治療に取り組む日々を送りました。
心臓カテーテル検査とは、どのような検査なのですか?

心臓カテーテル検査は、足や腕の血管に細くやわらかい管を挿入し、血管内を直接観察しながら、心臓の病気を調べる検査です。心臓の血管が詰まる心筋梗塞や、心臓の血管が細くなる狭心症の病変を実際にこの目で確かめられた時には、大きな感動がありました。それまでは心電図検査や心臓超音波検査によって、体の外から判断するしかありませんでしたから。カテーテルの用途は検査にとどまらず、やがては治療にも活用されていきました。私が白鳥病院で主に取り組んだのは、血管に血栓溶解剤を流し込むことで血流を促すPTCRと、狭窄した血管の中でバルーンを拡張し、血管を拡げるPOBAです。こうした治療法の登場によって、心筋梗塞や狭心症の根本的な治療につなげられたことも感動的でした。あれから約40年。現在主流となっているのは、ステントと呼ばれる金網状の器具を留置して血管を拡張するPCIですね。
検査体制を充実させ、早期発見・早期治療をめざす
開業当時のお話をお聞かせください。

1995年に、妻と二人で当院を開業しました。このさぬき市津田町は、私にとってまさにホームグラウンド。この町に恩返ししたいという想いから、開業するなら地元にしようと決めていました。副院長の妻とは、開業時に一緒に定めた目標があります。それは、できるだけ患者さんに負担をかけずに、大きな病院へ行くべき症状なのか、それとも自分たちで対応できる症状なのかを判断できるクリニックにするということです。CT検査と内視鏡検査の用意があれば、内臓系統の病気はおおむね診断がつけられますから、この2つの検査機器はこだわりを持って導入しました。4代目となるCTは、一度の撮影で16枚の高画質画像が得られる、16列のマルチスライスCTです。内視鏡についても高性能の機器を採用し、経鼻と経口、両方の検査に対応しています。一人であれば困難に思われたこの体制も、隣で妻が手を貸してくれるおかげで維持できています。
現在はどのような患者さんが来られていますか?
白鳥病院時代から、30年以上通われている患者さんは多いです。ご年齢は半数が75歳以上で、80代、90代の方も大勢いらっしゃいます。目立つのは動悸や息切れ、息苦しさといった症状で、咳や痰が続いてお見えになる方も少なくありません。「心不全パンデミック」などといわれるように、ここ数年は着実に心不全の患者さんが増えているようです。また当院では消化器の分野も診療していますので、腹部の痛みや不快感、吐き気などを訴えて来られる方も多いと思います。妻は週に2回、地域の介護老人保健施設へ出向いていますが、それ以外の時間は医師二人体制です。
昔と比べると、患者さんも変わってきていますか?

そうですね。以前は、比較的お元気な方が急に体調を崩してお越しになることが多かったのですが、現在はいろいろな病気が時間をかけて悪化してきたという患者さんが増えています。呼吸器に関しても、突発的に喘息の発作が起きて受診するのではなく、慢性的に感じていた息苦しさがひどくなって来院する、というパターンが多いのではないでしょうか。高齢化は仕方のないことかもしれませんが、当院に来てくださっている方々が、住み慣れた場所で穏やかに過ごせるようサポートしていくことが、私たちの重要な役割だと思います。
誰もが納得し、長く通えるクリニックをめざして
先生が、診療において大切にしていることは何ですか?

ガイドラインに則った治療を基本にしつつ、患者さん一人ひとりの生活スタイルなども考慮して、診療方針を決めています。高血圧症のような慢性疾患の方が、自己判断で治療を中断してしまっては、元も子もないからです。患者さんご本人が納得して、前向きに根気強く治療に取り組めるようにと、初診の時間は特に時間をかけて、患者さんのお話、訴えに耳を傾けるようにしています。薬の服用に抵抗がある方には、「可能な限り様子を見て、悪化するようであればお薬を飲みましょう」などとご提案します。不必要に治療を強いるようなことはしません。そして、これはどの医師もそうだと思いますが、自分の診断に間違いがないか、治療した箇所の他に悪いところはないかと、常に頭で考えることも大切にしています。
先生ご自身の健康法があれば、教えてください。
私自身も数年前に自分の健康管理を見直す機会があり、以降は夜9時以降の食事を控えるようになりました。夕食でも、炭水化物の白米はグラム数を測った上で口にするようにしています。グラム数は大体、130〜150g程度でしょうか。よりストイックに管理していた頃は、週3回、4kmずつランニングも行っていました。「継続は力なり」、です。高齢になっても自分のことが自分でできるように、皆さんも少しずつ努力を続けてみてください。
最後に、読者の方へのメッセージをお願いします。

高齢化の進む当地区では、医療と介護の複合ニーズ・急性期の医療ニーズが年々高まっています。とはいえ、当院の力だけでできることは限られていますので、今後は地域の基幹病院や薬局の薬剤師さんなど、他の医療機関・他の職種との連携を強化していきたいです。診療においては、月に1回でも、あるいは2ヵ月に1回でも定期的に患者さんとお顔を合わせながら、病気の早期発見・早期治療につなげていきたいですね。「この次も同じようにお顔が見れたらいいな」と、毎日そう思いながら診療を続けています。皆さんができる限り長く、健やかに、住み慣れたこの地域でお過ごしいただけるよう、力を尽くしてまいりますので、気になる症状があればご相談ください。具合が悪い時には一番最初に相談ができる、ご家族皆さんのかかりつけ医として、末永くお付き合いができれば幸いです。これからもどうぞよろしくお願いいたします。