藤田 雅一郎 副院長の独自取材記事
冨士クリニック
(観音寺市/観音寺駅)
最終更新日:2023/09/29

JR予讃線観音寺駅から徒歩10分、昔ながらの商店が立ち並ぶ市街地にある「冨士クリニック」は、開業から約60年にわたり、地域のホームドクターとしての役割を担ってきた。2022年11月より、泌尿器科を専門とする藤田雅一郎(ふじた・まさいちろう)先生が副院長として同院に参画したことをきっかけに、現在は内科・泌尿器科を標榜している。同院を開業した祖父の意志を受け継ぎ、父の藤田周一郎院長と二人三脚で診療を行う藤田副院長。高齢化に伴い患者が増える傾向がある排尿障害や尿路結石症、がんなどの診療を通じ、地域貢献をめざしている。泌尿器科について、患者にとって相談しづらい領域だとした上で「家族のように何でも相談できる医師でありたい」と語る藤田副院長に、専門とする泌尿器科についてや地域に対する想いを聞いた。
(取材日2023年8月18日)
親子3代で地域の健康を守り続けるクリニック
まずは先生のご経歴をお聞かせください。

私はもともと香川県出身です。父の転勤の都合で大阪で過ごした時期もありましたが、9歳で香川県に再び戻り、観音寺市で暮らしていました。高校卒業までこちらで過ごし、その後は岡山県の川崎医科大学に進学して、そのまま川崎医科大学の大学病院へ。その後、青森県の病院勤務を経験した後に、2020年から兵庫県の原泌尿器科病院泌尿器科に勤務しました。そして2022年から本格的に当院にも参画しています。現在は、原泌尿器科病院での勤務を続けながら、こちらで週3回外来を担当しています。
こちらのクリニックではどのような診療が受けられますか。
当院はもともと、祖父が約60年前に開業したクリニックです。1998年に、内科を専門とする父が継承し、2022年11月より、私が副院長として加わりました。そのため現在は「内科、泌尿器科」として診療を行っています。主に内科や小児科に関しては院長が診療を行い、泌尿器科に関しては私のほうで全面的に治療させていただいています。泌尿器科では主に、排尿障害、血尿などの症状があった場合に、検査や薬の投薬・治療を行っています。
先生の専門である泌尿器科の領域についてお聞かせください。

泌尿器科は主に尿路、腎臓、尿管、膀胱、男性の場合は前立腺、陰部全体も含めて診る診療科です。患者さんの主訴で多いのは、排尿障害ですね。排尿障害とは具体的に言うと、トイレに行く回数が多くなる頻尿、尿が出にくくなる排尿困難、尿漏れなどを指します。そのほか、痛みを伴う膀胱炎や血尿で来院される方も多い印象です。もしも専門的な治療が必要な場合は、連携する基幹病院をご紹介します。性別は男女ともにたくさんの方が来られますし、年齢もお子さまからお年寄りまで幅広く関わることが多いです。そういった患者さんの症状を少しでも改善させることを目標にしています。
自覚症状に乏しい病気は定期検診で予防を
排尿障害は、どのような症状が出たときに受診を検討すべきなのでしょうか。

例えば、夜中にトイレに行きたくなって目が覚めるせいで寝不足になっている状態が数ヵ月続いている場合は、一度ご相談に来ていただきたいです。そのほか、排尿に関して「これまではそんなことがなかったのに」と気になった場合は、一度ご来院いただければ、病気によるものなのか、加齢によるものなのかを判断させていただきます。お薬で改善が期待できる症状もたくさんありますので、気になったらご来院いただければと思います。なかなか相談しづらい診療科ではあると思いますが、相談するだけでも構いませんので、お気軽にお越しください。
特に気をつけるべき症状はありますか。
特に血尿がある場合は、なるべく早く病院に行って検査することをお勧めします。50歳以降の男性に多い膀胱がんの一番わかりやすい症状は血尿です。見た目で尿が赤くなってきたときは要注意ですので、早めに検査をして、血尿の原因やがんの心配がないかを調べましょう。また、中には見た目でわからない血尿もあります。検査をして顕微鏡で見て初めて血が混ざっているとわかることもあるため、定期的な健康診断も大切です。健康診断で尿の異常を指摘された場合は、自覚症状がない場合でも、泌尿器科を受診して詳しい検査をすることをお勧めします。
泌尿器科における検査はどのように進めていくのでしょうか。

排尿障害の疑いがある患者さんなどは、検尿を必ず行い、尿を顕微鏡で確認します。そのほか、エコー検査などの結果を組み合わせて診断し、治療していくかたちが多いです。内視鏡検査、膀胱鏡検査に関しては、膀胱がんが疑われる患者さんや、血尿が出ている患者さんの原因を調べるために行うことが多いです。また、これは男性だけなのですが、前立腺がんは40歳を超えると、血液検査の「PSA」という項目を通じて、がんの疑いがあるかが調べられる場合もあります。前立腺がんは、初期症状が出ない人も多い病気です。気軽な血液検査でわかるものなので、年に1回、健康診断で調べておけば安心できるはずです。さらに詳しい検査が必要だと判断した場合は、連携している医療機関に紹介することもできます。
何でも相談できる地域のドクターをめざして
お忙しい日々かと思いますが、休日はどのように過ごされていますか。

最近は子どもたちと公園に行ったり遊びに行ったり、家族と過ごす時間を大切にしています。私個人としてはスポーツが好きで、昔からゴルフをよくやっていました。最近はあまり行けていないのですが、落ち着いたらまたやりたいですね。
患者さんと向き合う上で、大切にされていることはありますか。
患者さんと同じ目線に立ち「どんなことに困っているか」「どういうことを治療していきたいか」をしっかりと聞いた上で治療を進めることをいつも考えています。昔からさまざまな先輩方に「病気だけを診て治療をするのではなくて、患者さんを見なさい」と教わってきました。こういうことに困っている、この症状を治したいなどの声に耳を傾け、患者さんそれぞれの困っていることに向き合うことを大切にしています。検査データだけに基づいた治療を行うのではなく、患者さんが日常生活で気になっている症状や、苦痛になっていることを改善させていきたいですね。
地域に対する想いについてもお聞かせください。

私は昔から、祖父や父が患者さんと家族のように接しているのを見て育ちました。病気と関係のないことを話したり、家族ぐるみでお付き合いをしたり……そのように医師と患者という関係ではなく、家族のように何でも相談できる医師になりたいと思っています。だから泌尿器科のことばかりではなく、内科も含めて、困っていることはできる限り何でも手助けしたいです。泌尿器科はご高齢の患者さんが多く、80〜90歳になると9割くらいの方が尿の悩みを抱えていると言われていますので、その年齢層の方であれば誰でも、少しは気になる症状があるかもしれません。もちろん治療が必要なければ薬を飲む必要はないですが「これは治療したほうがいいな」という場合には、改善を図るためのアドバイスをさせていただきます。
最後に今後の展望や、読者へのメッセージをお願いいたします。
高齢化に伴い、泌尿器科の病気、症状に困っている地域の方々はたくさんいらっしゃるはずですので、皆さんが通いたいと感じていただけるクリニックにしたいと思っています。これまで長く通っていただいている患者さんの中には「泌尿器科で困っていたけれど相談できなかった」という患者さんも多くいらっしゃるので、そうした方々の想いに応えながら、地域から信頼していただける医療の提供を続けていきたいです。