廣瀬 拓司 院長の独自取材記事
広瀬整形外科医院
(丸亀市/丸亀駅)
最終更新日:2022/07/07

まるで音楽ホールのような外観が目を引く、「広瀬整形外科医院」。廣瀬拓司院長の父が1976年に開業し、今年で46年目と、長い歴史を刻むクリニックだ。廣瀬院長は、東京や香川の基幹病院勤務を経て、2011年に院長に就任した。父の背中を見て志した医師の道。整形外科を選んだのは「自分の手で治療し、治療の成果を目で見て確認できるところに魅力を感じたから」だという。診療においては、患者とのコミュニケーションを重視し、世間話に花を咲かせることも少なくないそう。「地域の人々の健康に貢献したい」と真摯なまなざしで診療に臨む廣瀬院長に、クリニックの歴史や特徴、診療のモットーなどを聞いた。
(取材日2022年6月2日)
患者の要望にできる限り応える。父の姿勢を手本に
こちらの医院は、お父さまが開業されたそうですね。

そうです。外科医師だった父がこの場所で診療所を営んでいました。私は高校卒業まで丸亀で過ごし、大学進学のため上京。東京、神奈川などの病院勤務を経て地元に戻り、2011年に医院を継承しました。およそ20年ぶりにこちらに帰ってきましたが、町の印象は高校の頃とあまり変わりませんね。その分、落ち着いて住めるいい町だなと思っています。
子どもの頃、お父さまの仕事ぶりはどのようにご覧になっていましたか。
父はもともと、丸亀市内の病院で外科部長を務めていました。私たち家族はその病院の近くに住んでいたので、父は病院からしょっちゅう呼ばれて、交通事故などによる救急医療を行っていましたね。当時、昭和40年代は、医師は何でもこなさなければいけないという時代。頭からおなかから、外科全般にわたって幅広く診ていたことを覚えています。現在は専門分化といって、医師も専門分野を中心に診るようになってきました。でも父の姿を思い出すと、専門分野にこだわらず、患者さんの要望にできる限り応えて差し上げることの重要性を感じます。そういった姿勢は、見習わなくてはいけないと思いますね。
医院の建物は、継承時にリニューアルされたと聞きました。こだわりを教えてください。

整形外科で、足が不自由な方や車いすの患者さんが多いですから、院内はバリアフリーに。また、動線を工夫して、診療室やリハビリテーション室がどこにあるか一目でわかるようにしました。この他にもこだわったところと言えば、リハビリテーション室ですね。私は建築鑑賞が趣味なので、アメリカの建築家が手がけた、ある学校建築のデザインを取り入れさせてもらいました。三角屋根にたくさんの柱が立ち並んでいるのが、それです。大きな窓から光が入り、天井も高いので、患者さんからは開放感があると言われます。来院された際は、ぜひご覧になってください。
骨粗しょう症の検査が気軽に受けられる体制を整備
医院には、どのような患者さんが訪れていますか。

この辺りの地域は高齢化が進んでいることもあって、高齢の方が中心ですね。男女別では、女性のほうが多く来院されます。主な症状は、高齢の方だと膝や腰の痛み、中高年層だと骨粗しょう症、若い世代だとスポーツによるケガです。私は関節やリウマチを専門にしていますので、特に関節痛やリウマチの方がよく来られますね。
骨粗しょう症については、骨密度検査を行われているそうですね。
骨密度検査の方法はいくつかありますが、当院ではデキサ法を採用しています。これは微量のエックス線を当てて計測する方法で、精度の高さに期待できるのが特徴です。地域の高齢化に伴い、骨粗しょう症の方は増えています。予防や治療のためには、地域のクリニックですぐに計測できる体制が整っていたほうがいいと思うんです。そのため当院では、予約なしで検査を受けつけ、当日中に結果までお伝えします。また、骨密度検査は診療放射線技師が計測、解析を行うことが多いのですが、当院では私自身が行っています。もちろん患者さんへのご説明も私がしますので、一貫して対応できるのが強みと言えますね。
診療する際に、心がけていることを教えてください。

患者さんのお話に、しっかり耳を傾けることですね。当たり前かもしれないんですけれども、大事なことだと思っています。基幹病院に勤めていたときは、ゆっくりお話をお聞きするのが難しかったんです。でも、今は地域のかかりつけ医として、十分に時間を取ってコミュニケーションを取るよう心がけています。世間話もよくしますよ。農業に携わっている方には、「田んぼの具合はどうですか」などと農作業について尋ねたりします。患者さんにリラックスしていただけるよう、雰囲気を和ませることも大事だと思っているのです。
印象に残っている患者さんとのエピソードをお聞かせいただけますか。
腰の痛みを訴える、90歳ぐらいの方を診察したことがありました。エックス線写真を撮ると、背骨が骨折している。圧迫骨折かなと思って「どこかでケガをされましたか」とお聞きしたんですが、少し話が不自由な方だったので、初めは何をおっしゃっているかわかりませんでした。それでも根気強く話を聞くと、その方は若い頃シベリアに抑留されていて、強制労働中に、背中に材木が当たって大ケガをされたそうなんです。抑留でつらい思いをした上、帰国後も差別を受けて、苦労の絶えない人生だったそうです。私が「よく頑張られましたね」と言うと、静かに涙を流されました。この時に、患者さんのお話をよく聞くのは大事なことだと改めて思ったんです。患者さんとしっかり対話することを心がける、きっかけになった出来事でもありますね。
運動器のトラブルは、早めに予防・治療を
休日はどのように過ごしていらっしゃいますか。ご自身の健康法などもあれば教えてください。

建築に加えて、史跡や神社・仏閣、古墳、お城などを見るのも好きで、面白いものがないかなとぶらぶら散歩をしています。お城というと、天守閣やお堀があってというものをイメージする方が多いと思いますが、私は険しい山に築かれた山城も好きなんですよ。時間があるときには、山城跡の登山にもチャレンジしています。健康法については、週1回、トレーニングをしています。1回1時間半ほど、みっちりやっていますね。ウエートトレーニングやランニング、さらに体幹トレーニングなど、いろいろなメニューを組み合わせてやっています。
読者の皆さんにメッセージをいただけますか。
30~40歳代の方は、これから骨や筋肉、関節など運動器のトラブルが増えてきます。若いうちは想像がつきにくいですが、老化は必ずやってきます。運動を習慣化するなど、早めの予防を心がけてください。また、過度なダイエットは骨粗しょう症のことを考えると、後々良くない結果を招きますので控えましょう。50~60歳代の方は、そろそろ体のあちこちが痛くなる時期に入ります。でも「年のせいだから仕方がない」と放置するのはよくありません。今や人生100年時代。介護に頼らず元気に生活できるようお手伝いしますので、痛みやつらさを感じるときは早めにご来院いただければと思います。
最後に、今後の展望をお聞かせください。

医療の世界がどんどん進歩する中、取り残されないためには、常に勉強しなければいけないと思っています。ただ、手術などさまざまな治療をしても、完全には治らないときがあるのも事実です。完治に至らなくても、残った機能で補いながら少しでも症状を緩和させるというのがリハビリの発想です。これからも患者さんの声にしっかり耳を傾けつつ、新しい知見も取り入れながらできうる限りの治療を行っていきたいと思っています。