飛梅 元 院長の独自取材記事
トビウメ小児科医院
(高松市/三条駅)
最終更新日:2024/07/12

琴電琴平線・三条駅から徒歩約5分。1973年に開業した「トビウメ小児科医院」は、初代院長の息子である飛梅元(とびうめ・はじめ)先生が2024年4月に継承。同時に、クリニックから徒歩数分の場所にあった病児保育施設の敷地内に移転し、医療支援と病児保育支援を同一箇所で実現。患者の利便性を向上させている。大規模病院で、総合的に小児疾患の診療にあたってきた飛梅院長が得意とするのは、小児アレルギー疾患の診療。今後は喘息や花粉症、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなどを抱えた子どもたちの心強い味方となって、クリニックの歴史をつないでいく。「診察室では、親御さんが話しやすい雰囲気作りを大切にして、どんな子育てのお悩みにも耳を傾けています」と穏やかに話す飛梅院長に、幅広く話を聞いた。
(取材日2024年5月30日)
父の思いが詰まったクリニックと病児保育室を継承
先生はどんなきっかけで小児科医の道に進まれたのですか?

父が小児科医だったということが、一番の理由ではないでしょうか。2人いる兄も、それぞれ小児科医と歯科医師の道を選んでいます。ただ、私は最初から小児科医をめざしていたわけではありません。幼稚園の頃は獣医師に憧れていましたし、当初は医学部ではなく工学部に進学して、応用化学を勉強していました。化学の力を応用して、暮らしを豊かにする応用化学も魅力的な学問でしたが、自分がその研究者として生きるイメージは湧かなくて。心のどこかで、父のクリニックを守りたいという思いもあったのでしょうね。工学部はその後中退して、医学部に入学し直しました。卒業後は大学病院や大阪の市立病院などで10年以上経験を積み、高松赤十字病院での勤務を経て、2024年の春に継承したばかりです。50年の歴史があるクリニックですので、患者さんはお子さん、お孫さんと3世代で通ってくださっている方が多いです。
継承に伴い、クリニックを移転・リニューアルされたと伺いました。
80代の父と私では診療スタンスがまったく異なりますから、継承を機に近接地へ移転して、雰囲気もガラリと変えました。ここはもともと、病児保育や一時預かり保育などに使用していた建物なんです。病児保育室はそのまま残しつつ、クリニックに改装しています。内装は白を基調として、明るくシンプルなデザインにこだわりました。特に、待合室はお子さんとそのご家族が穏やかに過ごしていただける空間に仕上がったと思います。天井には爽やかな青空を描き、大きな窓からは広々としたテラスが見えるようにしています。感染症患者さん専用の待合室も、別室に2組分ご用意しました。内部的には、スタッフ同士の情報共有や患者さんへのご説明などに役立つ電子カルテを導入。待ち時間が少しでも短くなるようにと、オンライン上での予約受付や問診票のダウンロードも開始しました。
病児保育室について、詳しく教えてください。

当院の大きな特徴の一つが、2001年に父が開設した「病児保育室・子どもの家」です。何でも一番であることが好きな父らしく、当時はかなり先駆的な試みだったようです。現在は0歳から9歳までのお子さんを10人までお預かりして、専任の保育士3人と看護師1人でお世話しています。建物の正面から向かって左側が病児保育室、右側がクリニックという設計で、病児保育室とは渡り廊下でつながっていますので、緊急時には早期の対応が可能です。当院にも子育て中のスタッフがいますが、体調不良の子どもを慌ただしく迎えに行く様子を見ていると、病児保育室は今の時代に不可欠な施設だと感じます。これからもクリニックと病児保育室の2施設で地域の子育て世帯を支え、周辺に複数ある小児科クリニックとも協力しながら、子どもたちの成長を見守っていきたいです。
子どもの食事や体調を把握し、早期受診につなげる
こちらでは、小児アレルギー疾患の診療に力を入れていますね。

いずれは父のクリニックを継ぐことを前提として、開業医に相談されることが多い、小児感染症や小児アレルギー疾患を中心に診療経験を積んできました。花粉症や食物アレルギーを訴えるお子さんは年々増えていますので、当院の強みの一つになると思っています。例えば、桃を食べたお子さんから「喉がイガイガする」と言われたら、普通は桃に対するアレルギー反応だと考えますよね。ですが、実はこれは「交差反応」と言って、食べ物のタンパク質と花粉のタンパク質の構造が似ているために起こる症状なんです。食物アレルギーではないので、重症化することはほとんどありません。食物アレルギーの特定には、一定の知識と経験が必要です。当院では、お子さんの症状と血液検査の結果、そこに私がこれまで培った知見を加味して診断を進めます。より高い精度の検査が必要な場合には、アレルギーが疑われる食物のエキスを用いた皮膚検査もお勧めしています。
食物アレルギーの可能性を考えて、子どもが食べたものは記録をしておくべきでしょうか?
そうですね。食べたものがわかっていれば、来院後に記憶をたどる必要がなく、原因の特定も早まるでしょう。ひと昔前までは、アレルギーの可能性がある食べ物はすべて除去するのが治療のスタンダードでした。けれども、検査で陽性になった食べ物を軒並み除去してしまうと、食べられるものが減って、子どもの発育にも影響が出る恐れがあります。そのため、現在は「食べられるものは食べる。食べられる閾値(いきち)を探す」という方針に切り替わっています。検査によって、お子さんが持つアレルギーを幅広く把握しておこうとする親御さんは多いですが、実際に症状が出た後で対応を考えていくというやり方も、間違ってはいないと思いますよ。
クリニックを受診する子どもたちの主訴を教えてください。

発熱や咳で受診するお子さんが多いです。「熱は下がっているのに咳が続く」というお話を聞くうちに、喘息だと判明することもあります。朝方や夜などで咳が続くようでしたら、受診を検討するようにしてください。発熱はなく、食欲もあるけれども、くしゃみや鼻詰まりや目のかゆみがある場合には、花粉症と診断される可能性が高いです。見たことのない湿疹が出ている、同じところをかきむしっている、耳の下が切れているといった症状があれば、アトピー性皮膚炎の可能性を考慮して、早期に小児科を受診してください。気になる症状は写真や動画で撮影して、クリニックへ持参していただけると参考になります。加えて、症状が現れた時期などの情報もあれば、治療はスムーズに進むのではないでしょうか。
一人で悩んで自己判断をせずに、どんなことでも相談を
診察の際は、どのようなことを心がけていますか?

親御さんが、お子さんの症状を伝えやすい雰囲気を作ることが一番大切だと考えています。小さなお子さんから具体的なお話を聞くことはできませんし、私が威圧的に接したら、親御さんも気後れしてご相談やご質問ができないでしょうから。慣れない場所で過ごすお子さんを怖がらせないためにも、親御さんをリラックスさせるような雰囲気、コミュニケーションは欠かせません。今は1ヵ月健診から小児科に来られる方が増えていますが、小児科に通う年齢を過ぎるまで、親御さんと一緒に成長を見守ることができればうれしく思います。
お忙しい毎日だと思いますが、お休みの日はどう過ごされていますか?
私はスポーツが好きで、大学時代はスキー、卒業後は社会人チームなどでサッカーをしていました。忙しさもあって、帰郷後はまったくやらなくなってしまいましたが……。今は4歳の娘をいろいろな所に連れて行っては、一緒に遊んで過ごしています。もしも、お子さんが家にこもってゲームや動画にばかり熱中していたら、外で体を動かして、元気に遊ぶことも大切だと伝えていただきたいです。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

地域の皆さんが、気軽に受診していただけるクリニックをめざしています。小児アレルギー疾患だけでなく、あらゆる小児科疾患の診療に対応しますので、気になる症状があれば気軽にお尋ねください。目の不調や外傷などは専門の診療科をお勧めしますが、何科を受診すべきか迷う場合にも、アドバイスをさせていただきます。「指しゃぶりをやめない」、「薬が上手に飲めない」、「言葉が遅い」、「一人でトイレに行けない」といったご相談も大歓迎です。インターネットで検索しながら一人で悩んでいても、なかなか問題は解決しません。尽きない子育てのお悩みは、世間話でもするような感覚で、私や経験豊富なスタッフに話していただきたいですね。