竹廣 敏史 院長の独自取材記事
竹広小児科医院
(高松市/伏石駅)
最終更新日:2024/12/05

琴電琴平線・伏石駅から徒歩2分。1983年開業の「竹広小児科医院」は、35周年を迎えた2018年に医院を新築。2020年には理事長である父の後を継いで、竹廣敏史先生が院長に就任した。日本小児科学会小児科専門医であり、日本アレルギー学会アレルギー専門医でもある院長は一般診療の他、自身の専門領域となるアレルギー診療に注力。実際に食物を摂取することで、アレルギー症状の有無を確かめる「食物経口負荷試験」も数多く行っている。院長がアレルギー診療に力を入れるようになったのは、ミルクアレルギーを原因として、重篤な症状を引き起こした乳児患者との出会いがきっかけだったそう。「アレルギーで悩む子どもたちを救いたい」と、日々研鑽する竹廣院長にさまざまな話を聞いた。
(取材日2024年10月30日)
専門はアレルギー。そのきっかけは一人の赤ちゃん
先生が小児科の医師をめざしたきっかけを教えてください。

両親ともに小児科の医師という家で育ちましたので、幼い頃から身近な職業ではありました。小学校高学年くらいからは、憧れのような気持ちもあったと思います。具体的に医師をめざし始めたのは、高校生の頃でしょうか。文系科目が得意だったのですが、理系の道を選んだ時点で気持ちは決まっていました。ただ、両親から医師になれと言われたことは一度もありません。「なりたい職業に就けばいいし、それが医師でも医師でなくても、応援するよ」というスタンスでしたね。医学部に進んだ後は救命救急に憧れたこともあったのですが、最終的にはやはり小児科にやりがいを感じて、両親の後を継ぐことにしました。
専門は小児アレルギーだそうですね。
病院の新生児センターに勤務していた時、他の病院からおなかが張っている新生児が運ばれてきたんです。ミルクをすぐに吐き出してしまう症状から感染症や腸の病気を疑ったのですが、結果的にはミルクアレルギーだということが判明しました。新生児期に、嘔吐で発症するミルクアレルギーがあることは当時まだあまり知られておらず、ミルクの種類によって症状が変化する赤ちゃんを見て衝撃を受け、「小児アレルギーを専門にしよう」と思うようになりました。新米医師時代には、先輩医師から「小児科を専門にするなら、ジェネラリストとなって全般的な診療を行うか、専門領域を持って深く掘り下げるかの2択になる。どちらの道に進むか、その決定打は実際の診療を通して見つかるはずだ」と言われていましたが、まったくそのとおりでしたね。
クリニックを継がれるまでのご経歴を教えてください。

久留米大学卒業後は九州の複数の基幹病院で勤務し、2014年から、高松赤十字病院で働き始めました。並行して当院でも診察を行っていましたが、2018年の新築移転に合わせて、副院長に就任。2020年から院長を務めています。当院を1983年に開業した両親は、昔も今も私の憧れです。特に、父は県内の小児医療にも深く関わっていた人ですので、父が現役のうちに一緒に働きたいという思いがありました。普段は穏やかな父ですが、重症患者さんの容態は見逃さず、迅速に大きな病院へお送りするなど、鋭い診療感覚を持っています。それを他の先生方から聞くとプレッシャーに感じる部分もありますし、父と同じことはまだできませんが、私は私にできることを着実にやっていこうと思っています。受け継げるところは受け継いで、患者さん一人ひとりと丁寧に向き合っていきたいです。
食物経口負荷試験で食物アレルギーを詳しく検査
こちらでは、どのようなアレルギー検査を行っていますか?

当院ではIgE抗体検査、皮膚プリックテスト、食物経口負荷試験という3つのアレルギー検査に対応しています。前者2つは補助診断として食物経口負荷試験の前に実施し、その結果を踏まえて、どのように試験を行うか判断します。アレルギー科の外来は、金曜の15~16時。食物経口負荷試験は火曜・木曜の午前と、金曜の午後に1人ずつ予約制で行っています。この試験は年間を通して数多く行っていますが、食後に2時間ほど経過観察をしなければいけないので、一般診療との関係上、実施できる数には限りがあります。また、リスクが高いと予想される患者さんに対しては、私が今も週に一度、外来を担当している高松赤十字病院で検査を行うようにしています。
アレルギー検査のタイミングは、いつ頃が良いのでしょうか?
通常は離乳食開始後ですが、お子さん全員に検査が必要なわけではありません。何かを食べてアレルギー症状が出始めたら、IgE抗体検査、皮膚プリックテストでアレルゲンと疑われる食物を調べます。最終的には食物経口負荷試験で診断を確定し、食べても症状が出ない、安全な量を見極めるという流れです。もちろん、例外もありますよ。例えば患者さんのきょうだいが重症の食物アレルギーを有している時には、ご家族からのご希望があった場合、離乳食開始前でも検査を行うケースがあります。その場合は「偽陽性などの結果が出ることもある」と、ご家族に検査のメリットやデメリットを説明し、ご納得いただいてから検査に入ります。食物アレルギーは、炎症を起こしバリア機能が低下した皮膚からアレルゲンが侵入することで発症する可能性が指摘されていますので、離乳食が始まるまでに、湿疹をしっかりとコントロールしておくことも重要です。
アレルギー検査に限らず、近年は検査を希望される患者さんが増えているそうですね。

検査だけに頼らない診療も必要だと思いますが、インターネットでたくさんの情報が得られたり、さまざまな簡易検査キットが使えるようになっていたり、保育園や学校から検査を求められたりする現状から、検査をしてほしいという患者さんは増えました。キットや薬が十分でない場合もありますので、ご家族の不安なお気持ちは理解した上で、検査の適切なタイミングをお話しするようにしています。当院では血液検査の他、検尿、検便、新型コロナウイルスなどの感染症の検査、また超音波、エックス線、肺機能検査が可能です。各種検査を通じて、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎などの肌症状、季節の変わり目に増える喘息、インフルエンザをはじめとした感染症などの早期治療につなげていきたいです。
患者へのホスピタリティーを考えたクリニックづくり
2018年の新築移転に際して、どういった工夫をされましたか?

老朽化に伴って新築した建物は、まるで帽子をかぶっているかのような屋根が特徴です。この外観には、「未来ある子どもたちを優しく包む、大きな屋根のような存在になりたい」という想いを込めました。感染症対策のため、院内では感染症の疑いがある患者さんとそうでない患者さんの動線を分け、診察室や待合室、トイレも別々にしています。電子カルテの導入など、院内のデジタル化を進めたのもこのタイミングです。食物経口負荷試験に関しては時間がかかりますので、看護師が常駐するサブの診察室で行います。経過観察の間は医師が30分おきに症状をチェックしつつ、一般診療も同時並行で進めています。
診療する際のモットーを教えてください。
できるだけ、患者さんがストレスを感じないような診療を心がけています。アレルギーの患者さんには時間をかけて説明する必要がありますし、重症患者さんは早急に基幹病院にご紹介しなければなりません。しかし、そうなるとどうしても待ち時間が長くなってしまうことがありますので、そういった場合には、タイミングを見ながらスタッフがお声がけをしています。アレルギー検査や、治療の内容を選ばなければならない時には、患者さんが理解・納得した上で選択できるよう、事前にしっかりと説明を行っていますね。また、当院では副院長である母が、予約制の育児相談も受けつけています。小児科医であり、3人の子育てを経験した母親でもある立場から皆さんのお力になれると思いますので、どうぞお気軽にお声がけください。
将来の展望と読者へのメッセージをお願いします。

当院には一般診療だけでなく、アレルギー検査を希望する患者さんも多く来られます。医師や看護師が一丸となって、皆さんのお役に立てるよう、診療体制をさらに拡充していきたいです。時間がかかる食物経口負荷試験についても、もっと受け入れられるような仕組みづくりをして、アレルギーで苦しんでいる子どもたちの力になりたいと思っています。この大きな屋根の下で、子どもたちの笑顔を未来へとつないでいけるように。お子さんの体調不良はもちろん、気になることがあれば何でもご相談いただきたいです。