小川 力 副院長の独自取材記事
翼医院
(高松市/昭和町駅)
最終更新日:2025/11/05
高松駅より車で約6分の場所にある「翼医院」は、1989年に現院長の小川翼(よく)先生が開業したクリニック。内科、消化器内科、循環器内科を標榜していたが、2025年に息子の小川力先生が副院長に就任してから、肝臓内科も新設された。力副院長は、近畿大学医学部を卒業後に同大学付属病院にて消化器内科、肝臓内科、内視鏡検査、超音波検査に従事し、その後は高松赤十字病院にて肝疾患をはじめとした消化器全般の病気に向き合いながら診療や研究、超音波検査に取り組んできた。特に肝臓と超音波検査は数多くの経験を持つエキスパートだ。院長との二診体制で待ち時間を少なくしつつ、得意の超音波検査で診断を早く行い、患者の不安な時間を短くしようとする小川副院長に詳しい話を聞いた。
(取材日2025年9月17日)
院長と副院長の二診制で患者と向き合う
副院長に就任されるまでの経緯を教えてください。

当院は1989年に、私の父である翼院長が開業しました。私は近畿大学医学部を卒業後、同大の工藤正俊先生の消化器内科に入局、肝臓や超音波に関する分野を中心に学び、関西の病院で勤務していました。約20年前に院長の体調が悪いといううわさを聞いて高松へ戻ったのですが、父は元気いっぱいで(笑)。診療は院長1人で対応できたため、2007年から18年間、高松赤十字病院の消化器・肝臓内科に勤務しました。私に医者になれとも、医院を継いでほしいとも言わずに、好きな道を選べと言ってくれていた院長の口から「戻ってきてくれたらうれしい」という言葉を初めて聞いたのは2、3年前です。そこから本格的に継承を考え始め、2025年6月に当院の副院長に就任しました。現在は院長とともに日々仲良く診療にあたっています。
院長との二診体制だそうですね。
経験豊富な院長と、新しい知識と技術を習得した私の二診体制で、診察時には患者さんに医師の希望もお聞きしています。肝臓や消化器疾患の方などは私が診ることが多いですが、「診察が早いほうで」というご希望も多いですね。病院勤務時代から、診療の待ち時間についていつも患者さんに申し訳ないと思っていました。長時間待たせたからこそ、しっかり診ようと思うとさらに待ち時間が長くなるのがジレンマで。急性疾患やがん、アルコールの患者さんなどは病院で、安定期の患者さんはクリニックでと役割分担ができれば、待ち時間の負担も減らせます。今後は肝臓の診察ができて超音波検査も可能なクリニックとして、安定期の患者さんを多く診ていきたいですね。二診体制で待ち時間も減らせたため、喜んでくださる方が多いですし、外来では十分にお話しできなかったのが、血圧やご家族の話などもできるようになってうれしいですね。
どんな患者さんがいらっしゃいますか?

当院の標榜科目は内科がメインでしたが、私が副院長になってからは肝臓内科、消化器内科も標榜しています。患者さんは高齢者が中心ですが、意外と若い方も多い印象です。CT検査による被ばくを避けたいからと超音波検査を希望される20代の方もいらっしゃいます。症状としては心疾患や糖尿病などの生活習慣病、私が副院長になってからは肝機能障害や脂肪肝の患者さんがかなり増えました。どの方に対しても「この患者さんが自分の親だったらどうするか」と考えるようにしています。自分の親ならこの検査を追加するか、検査も後日ではなく今日したいよなと考えると、治療方針も迷いにくいです。
当日に肝腫瘍の結果がわかる造影超音波検査を導入
先生が肝臓を専門にされたきっかけを教えてください。

私が人生で一番影響を受けたのが、近畿大学時代の恩師で、肝臓と超音波を極めた工藤正俊教授です。幅広く診られる消化器が希望で、工藤先生の医局に入らせていただきました。最初は内視鏡を専門にしようと考えていたのですが、工藤先生が「最初から○○専門にならず、全部を診なさい。すべてを網羅してから選びなさい」という考えで。工藤教授は肝臓内科と超音波内科を極めた方だったので、私も自然と興味を持つようになりました。高松赤十字病院では内視鏡を専門にしたかったのですが、肝臓専門の先生が少なかったため、そちらがメインとなり、今は肝臓と超音波検査が大好きになりましたね。肝臓の患者さんは血を吐くこともあるので、胃の内視鏡も必要で、だからこそ「全部を診なさい」と言われたのでしょう。求められる範囲が広く大変ではありますがやりがいも大きく、やって良かったと思っています。
超音波検査の体制を充実させたそうですね。
私が診療を始めるにあたり、高性能の超音波装置を導入し、専用の検査室を用意。電動ベッドを設置してあるので観察しやすく、高齢の患者さんも楽に検査を受けられます。腹部以外にも心臓・乳腺・甲状腺・血管などの検査も可能で、女性の臨床検査技師の希望にも対応します。また、特徴的なのは超音波造影剤を使用した造影超音波検査です。開業医はもちろん、病院でもあまり行われない検査ですが、日赤時代に多くの経験を積んできました。造影超音波検査ができれば、肝腫瘍の良性か悪性かを当日中にある程度判定できるため、患者さんにメリットがあるため導入しました。検査は朝9時からですが、希望があれば朝7時半からの検査も可能です。父が始めたのですが、患者さんは空腹で検査しやすく、検査後に仕事にも行けます。私たちにとっても9時からの外来の患者さんを待たせることなく、ゆっくりと検査できるので、お互いに良いシステムだと思っています。
医師として、印象的なエピソードはありますか?

「医師が諦めたときが患者が亡くなるときだ。熱くいけ!」ということを言われたことがあります。今の時代にそぐわないかもしれませんが、私も常にそのつもりで診療にあたっています。勤務医時代のある時、私の診察を受けた18歳の男性が、検査で胃がんであることが判明しました。本当にいい子で、私を兄のように慕ってくれ、厳しい状態でしたが、頑張って治療をしたんですけれど……。今でも忘れられないです。
患者に安心感を与える診療の提供をめざす
プライベートはどう過ごされていますか?

勉強会に行き、恩師の教授に会って最新の治療について聞いたり、子どもの野球を見たりと楽しく過ごしていますよ。健康のためにはそろそろ痩せなければと思っています。かつては恩師と一緒に20kgのダイエットに成功したこともあり、患者さんたちにも「食事制限と運動で痩せられるよ。ただ、継続することが難しいんだ」と伝えています。クリニック勤務になり、自分の時間を少しは確保できるようになったので、ストイックに毎朝ウォーキングをしている父に怒られないうちに頑張ります。患者さんにもこれまでは「痩せてね」としか言えませんでしたが、時間に余裕ができたので「脂肪肝にはオリーブオイルを使った地中海料理がいいとの報告もありますよ」など、具体的にアドバイスできるようになったのがうれしいですね。特に肝機能障害や脂肪肝には食事の指導は大切ですから。
今後の展望について聞かせてください。
技師さんが超音波検査をすることも増え、医師の超音波検査離れが進んでいるようですが、実は超音波は第二の聴診器といわれるくらい大切なものです。今後も学んできた超音波検査の技術を、皆さんに還元していきたいと考えています。例えば肝臓に影がある場合やすい臓がんなどの場合、通常ですと開業医に病院への紹介状をもらってCT撮影に行ってと、診断までかなりの通院日数と時間と手間がかかってしまいます。しかし当院には経験豊富な臨床検査技師が在籍しているため、当日に結果を出すことができます。良性の場合は患者さんもホッとして帰って行かれるでしょうし、医療者側のやりがいにつなげられると思うんです。造影超音波検査と早朝超音波検査は私が担当していて、その場合はモニターでここが肝臓だよなどと検査をしながら説明も可能です。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

医療機関は患者さんに安心感を与えることも大事だと思っています。当院ではそのために、専門の臨床検査技師による即日結果のわかる造影剤を使った超音波検査を実施しています。肝臓と乳腺の腫瘍に関しては保険が適用されますので、不安のある方はぜひいらしてください。肝臓内科と造影超音波を得意としていますので、精密な治療を提供する自信もあります。また、基幹病院へ直接紹介することもできます。経験豊富な翼院長と、新しい医療を勉強してきた副院長の私との二本柱で、これからも初心を忘れず、皆さんの検査と治療に携わっていきたいと思います。

