佐用 義孝 院長の独自取材記事
高松紺屋町クリニック
(高松市/高松駅)
最終更新日:2025/02/10

ことでんバス「紺屋町」停留所から徒歩4分。高松市中心部を横切る、美術館通りの沿道にあるのが「高松紺屋町クリニック」だ。設立は2016年。佐用義孝(さよう・よしたか)院長の明るい笑顔と飾らない人柄に惹かれて、診察室に足を運ぶ患者も多い。日本糖尿病学会糖尿病専門医である佐用院長は、専門性を持つスタッフらとサポートチームを組んで糖尿病の診療に取り組んでおり、2階の健診センターでは企業健診、人間ドックなども数多く受け入れている。病気の予防・早期発見・早期治療を通じて患者の生活の質を担保し、地域住民の健康寿命延伸に貢献する佐用院長に、生活習慣病や健康維持に対する考え方を聞いた。
(取材日2024年12月6日)
目の前の患者と話をしながら、苦痛を軽減したい
社会人を経験してから医師をめざしたと伺いました。

神戸大学の理学部を卒業し、兵庫県で公務員として働いていた時に家族が病気で亡くなったんです。その時に担当してくださった先生がとても良い方で、医師という職業を意識しました。ちょうどその頃、周囲に30代後半で仕事をしながら歯学部に合格した人がいると聞いたこともあり、熟慮の末、26歳で受験を決意。本当は母校の医学部に3年生から編入したかったのですが、医学部で必須のドイツ語を履修していなかったので単位が認められず、一般受験をすることになりました。仕事が終わった後にラジオ講座を聴くなどして勉強し、28歳で香川医科大学(現・香川大学医学部)に入学。医学部はとにかく覚えることが多い上、同級生は私よりも10歳若く、記憶力や体力の差を実感しましたね。すべての骨の名前をラテン語で覚える時も、同級生の3倍は時間がかかりました(笑)。
糖尿病を専門に選ばれたのはなぜでしょう?
糖尿病を専門とする恩師の知見にふれ、これからは食の欧米化や生活スタイルの変化によって、糖尿病の罹患者が増えるだろうと予測したからです。まさか、ここまで増えるとは思いもよりませんでしたが。「糖尿病は万病のもと」ですから、さまざまな合併症に対してもアプローチできればと考えました。医師には研究者が似合う人もいれば、臨床が得意な人もいます。そして、私にできることは目の前の患者さんと向き合って、話をすることだと思っています。「医師の仕事の基本は“手当て”」といわれるように、患者さんの体に手を当てるだけ、話をするだけでも患者さんの気持ちは違うのではないかと。糖尿病の治療は血糖値などのデータに目を奪われがちですが、私は患者さんと話をすることで、その人の持つ苦しみを少しでも軽くしたいんです。
クリニックを設立された経緯をお聞かせください。

定年後も医師を続けることを考えると、クリニックで自分の思う医療を実践するほうがやりがいがあるだろうと考えて、近隣の皮膚科クリニックを移転承継し、副院長に就任しました。ご縁のあったこの場所は、以前の勤務先である高松赤十字病院からも近く、退院後などの症状が安定した方を受け入れるには好立地です。2024年9月までは、院長を務めていた蓮井美規子先生が皮膚科の診療も行っていました。私が設計から携わった院内は、明るく落ち着いた雰囲気です。トイレも、車いすで入れる広さを確保しました。患者さんは40代、50代の方から高齢者まで幅広く、外国籍の方が増えている印象もあります。疾患は糖尿病をはじめとした生活習慣病のほか、甲状腺疾患や肥満症、さらには多種多様な感染症を患った方が受診されています。
糖尿病を中心に、生活習慣病の患者をサポート
こちらで行われる、糖尿病の治療について教えてください。

糖尿病を専門として経験を積んできた医師と、糖尿病の専門的な知識を持つ看護師、臨床検査技師、管理栄養士がチームを組んで、患者さんをサポートしています。患者さんの状態や生活環境はチーム全体で把握し、それぞれの立場から見た改善策を提案する。そんな、患者さん一人ひとりに合わせたオーダーメイドの治療を行っています。できるだけ薬に頼らないようにと考えていますが、患者さんによって要望は異なりますので、その都度、話し合いが必要です。新型コロナウイルス感染症の流行が収束に向かったら、看護師がより時間をかけて事前の問診を行い、私に情報を共有するようにしたいですね。休止している糖尿病教室なども、状況を見ながら再開したいです。
甲状腺疾患の患者さんも多いとか。
健診で甲状腺の検査を行う病院は増えており、甲状腺の大きさなどを指摘されて受診する方が多いです。当院でも、新しく来られた糖尿病の患者さんに対しては必ず甲状腺の血液検査を実施し、異常が見つかれば超音波検査も行います。甲状腺疾患は症状が出にくく、発見が遅れやすい病気です。遺伝的要素もありますので、ご家族に既往歴がある方は一度受診されると良いでしょう。ただし病気が見つかった後も、すぐに投薬治療や手術が必要とは限りません。無症状の甲状腺異常は経過観察で済む場合も多く、経過観察で良いと判断した場合は、年に1回程度の超音波検査をご提案します。超音波検査で、甲状腺の大きさが2cmを超えたことがわかれば細胞診検査をお勧めしています。
2階に健診センターを設けた理由は?

この辺りは官公庁や大企業の出先機関が多く、転勤族の方もたくさんお住まいです。そういった方々の健康管理を担えればと、2階に健診センターを設けました。高松市の特定健康診査や生活習慣病健診、企業健診、人間ドックなどのメニューがあり、年齢や性別、生活習慣に合わせた検査も豊富です。加えて、第1金曜を除く金曜の14時~18時には、健診後のフォローアップを目的とした外来を用意しています。精密検査が必要な場合はもちろんですが、検査項目の数値が気になる時や、経過観察中で結果に不安が残る時もあるでしょう。当院以外で健診を受けた方でも構いませんので、まずはご相談ください。大切なのは、健康診断の結果を放置しないこと。特に、BMIが30を超えている方は要注意です。肥満によって、高血圧症、脂質異常症などの健康障害を来している方は「肥満症」といって、ガイドラインに沿った治療の対象者となります。
精一杯頑張って、今を生きることを大切にしてほしい
診察の際に心がけていることはありますか?

病気のことだけを聞くのではなく、必ず雑談もするようにしています。食べることが好きな人にはおいしいお店を聞きますし、好きなお酒の種類やゴルフのスコア、お孫さんの話もカルテに書いておくんです。治療には直接関係しないかもしれませんが、患者さんと信頼関係を築くためには大切なことだと思います。それからもう一つ、これは恩師の教えですが、当院へ来てくださった患者さんには「ありがとうございます」と、感謝の言葉を伝えています。慢性疾患の患者さんは、特に通い続けていただくことが重要ですから。中には総合病院時代から数えて、20年近いお付き合いの方もいらっしゃいます。
先生ご自身の健康法があれば伺いたいです。
以前は通勤時に往復1時間ほど歩いていましたが、引っ越して歩く距離が短くなったので、運動量を減らさないようにできるだけ階段を使っています。仕事終わりには、家と逆方向へ歩いて距離を稼ぐこともありますね。休みの日は港に向かって歩いたり、そのまま海辺のレストランで妻と一杯楽しんだり(笑)。歩く時はおなかに力を入れて胸を張り、早足で歩くのがポイントです。姿勢は非常に大事なもので、姿勢の良い人は健康な人が多いと思います。私は患者さんが診察室に入って来られる時の姿勢にも目を配って、診断につなげていますよ。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

人間がいつ死ぬのかは、誰にもわかりません。だから人生は楽しいし、精一杯頑張って、今を生きることが大切だと思うんです。患者さんには、いつも「ピンピンコロリでね。ネンネンコロリはだめですよ」と伝えています。人生の最後の10年間を、どう過ごしたいかということです。自分の好きなことをするのか、あるいは病気で入院して寝たきりになるのか。今、40代や50代の方々が食べたいものを食べて、運動しない日々を続けていたら、楽しい老後は過ごしにくくなるでしょう。生活を見直すことで生活習慣病が防げるなら、努力したほうが得だと思いませんか? 3食バランス良く食べて、運動すること。生活の中で、こまめに体を動かすことが一番です。意図的に立ったり、歩いたりする時間を増やすだけでも違うと思います。私は患者さんがご自分の意志で、楽しく生活を改善する方法を一緒に考えていきたいです。
自由診療費用の目安
自由診療とは人間ドック/3万1350円〜5万2900円