中村 真幸 院長の独自取材記事
西原在宅検診クリニック
(広島市安佐南区/西原駅)
最終更新日:2025/07/07

広島県安佐南区、西原駅から徒歩3分ほどの場所にある「西原在宅検診クリニック」。2022年8月に「石井内科胃腸科」を引き継ぐ形で、中村真幸院長が開業した。同クリニックは、内科・循環器内科・消化器内科を標榜し、外来診療と往診を行っている。中村院長は日本循環器学会循環器専門医と日本内科学会総合内科専門医の資格を持つ医師。現在も広島ハートセンターに勤務しながら、患者に寄り添う診療を提供している。「急性期治療後の経過観察や、通うのが難しくなった場合は往診で、最期まで責任を持って診てあげたい」と中村院長は話し、往診を希望する患者も増加し続けているそう。患者のために労力を惜しまず、アップデートを続ける中村院長に、クリニックの特徴などについて聞いた。
(取材日2025年3月3日)
急性期治療後の心疾患患者を支えるクリニック
まずは先生のご経歴を教えていただけますか。

2020年から現在まで広島ハートセンターで循環器内科の医師として勤務しています。日本循環器学会循環器専門医と日本内科学会総合内科専門医の資格を持ち、救急現場で循環器救急にも携わりながら経験を積んできました。研修医時代は広島でしたが、2012年頃は愛媛県の市立宇和島病院で、宇和島から四万十市までの広い医療圏域に対応していました。2015年頃は名古屋徳洲会総合病院で、愛知県の春日井から岐阜の東部の医療過疎地まで、ドクターカーに乗って片道3時間、往復6時間かけて患者さんのもとへ向かうこともありました。急性期の治療に専念する中で、患者さんがその後どのような経過をたどられるのか、継続的に関わっていきたいという思いが強くなっていきました。
そんな中、広島に戻ってこられたんですね。
そうなんです。広島ハートセンターで勤務するようになって、急性期治療後の患者さんの継続的なケアの必要性を強く感じていました。そこで2022年8月に「石井内科胃腸科」を引き継ぐ形でクリニックを開設しました。ハートセンターでは心臓リハビリテーションを行い、当クリニックでは心筋梗塞や心不全などの心疾患術後の患者さんの外来管理や訪問診療を中心に、生活習慣病の管理も含めた包括的な医療を提供しています。心疾患のある患者さんは睡眠時無呼吸症候群を併発するケースも多いため、そちらの診療にも対応しています。現在も広島ハートセンターで救急当番や外来、カテーテル手術を担当しながら、クリニックでの在宅医療や外来診療を並行して行っています。
そもそも、なぜ医師をめざされたのですか?

昔、中学校1、2年生の頃に一度手術を受けたことがあったんですよ。その時に医療のお世話になったという経験が大きいですね。高校3年生になった時、自分自身手術をした経験があったということや、周りの同級生も医学部へ進む子が多い環境だったのも影響して、医学部への進学を決めたんです。
最期まで責任を持って医療を提供できることがやりがい
専門に循環器を選ばれた理由を教えてください。

僕自身、理系人間なんです。心臓とか循環器って数式で表しやすいんですよ。電流とか電圧で説明しやすいというか、クリアでわかりやすいんです。それと、心臓と脳にダメージがなければ、人間は簡単に死なないということもあり、人を助けるのに直結しやすい分野だなと感じていました。なので、研修医になる時から、循環器を専門にしたいと思っていました。あかね会土谷総合病院での研修医の時も、本当はいろいろな科を回るべきところ、循環器メインで学ばせてもらいましたね。その後に、広島市民病院でカテーテル治療を経験しました。病院からPHSで呼ばれたら10分以内に行かなくてはいけないというような生活を、2年間続けました。
大変な毎日だったかと思いますが、その中で多くの経験を積まれたんですね。
そうですね。特に印象に残っているのは、医師5年目に上司から「何がやりたいの?」と聞かれて「カテーテル治療です」と答えたことがきっかけで、より専門性を深める道筋が見えてきたことです。宇和島では心臓リハビリに詳しい先生から多くを学び、名古屋徳洲会総合病院ではTAVIなど先進のカテーテル治療を経験させていただきました。こうした経験を通じて、急性期治療だけでなく、その後の患者さんの生活の質を支えるリハビリテーションや継続的なケアの重要性を実感するようになったんです。
こちらのクリニックの特徴を教えてください。

循環器が専門の、知識をアップデートし続けている医師が診療するクリニック、ということでしょうか。開業医では、非常に珍しいんじゃないかなと思います。広島ハートセンターで急性期の心筋梗塞を治療した患者さんは、外来で半年に1回くらい診ていくことになるんです。そういう患者さんが通院できなくなった場合に、僕たちが往診できたら、最期まで診てあげられるんですよね。治療の段階から関わり、最期まで責任を持って診ることができる。どのような結果であっても最期までその患者さんに責任を持てる、というのがやりがいです。ちなみに往診エリアは、安佐南区伴・毘沙門台から山本、安佐北区口田・高陽、東区牛田、中区白島です。
多職種との連携も重視
診療の際、心がけていることはありますか?

往診では訪問介護の方とコミュニケーションをしっかり取るようにしています。アプリを使って、一人ひとり情報を登録して共有します。看護師はもちろん、薬局の方やケアマネジャーの方も見られるようにしています。病院で診ていると、この患者さんは家に帰ったらどうなるんだろうという感覚があるんです。でも患者さんのその後は、急性期だけをやっているとわからない。また、病院にいると、なんで救急車を呼ぶんだろうという場合もあって。けど往診をやっていると、在宅医療では限界だよというのがわかる。病院だけでは診られない患者さんを在宅医療でフォローして、両方の良いところを生かしていけたらと思っています。いったん病状が落ち着いたら、家に帰って診られますよという選択肢を提案できる。どちらかだけしかやっていないと、わからないこともあるなと感じています。
スタッフ体制と診療範囲について教えてください。
現在、広島ハートセンターの医師にも外来を手伝ってもらいながら診療を行っています。今年の4月からは消化器内科の専門家が加わる予定で、これまでも胃内視鏡検査は行ってきましたが、さらに充実した消化器診療を提供できるようになります。受付スタッフは2人、看護師は3人体制で、訪問診療の際には看護師が帯同しています。診療範囲としては、循環器領域を中心に、消化器内科、内科全般を幅広く対応しています。当クリニックではエックス線撮影、超音波検査、睡眠時無呼吸症候群の検査なども実施でき、これらの検査については豊富な経験がありますので安心してお任せください。心臓に関してより詳しい検査が必要な場合は、広島ハートセンターをはじめとした専門病院へ迅速に紹介することも可能です。かかりつけ医としての機能と専門性を両立させた診療を心がけています。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

人には一人ひとり異なるライフステージがあると思います。それぞれのステージに応じた適切な医療を提供できるよう努めていきたいと考えています。救急現場では「昨日までは元気だったんです」というお話をよく伺いますが、多くの場合、気づかないうちに体調の変化が始まっていることがあります。医師として、そうした小さな変化にも気づけるよう心がけています。また、患者さんがどのような最期を迎えたいかを一緒に考えることも大切にしています。思いやりのある医療を提供してまいりますので、どんなことでもお気軽にご相談ください。