奥田 晃章 院長の独自取材記事
奥田整形外科皮膚科医院
(広島市西区/新井口駅)
最終更新日:2025/03/31

広島市西区、JR山陽本線・新井口駅から歩いて7分ほど。広い駐車場のある敷地に「奥田整形外科皮膚科医院」はある。1982年に整形外科の医師である父が開業し、奥田晃章院長は2009年から同院での勤務をスタートした。診療科目は整形外科・リハビリテーション科・皮膚科。皮膚科は奥田院長の妻が火・木・土曜の午前中に診療する。労災保険指定医療機関に指定され、近くの工場で働く人々のケガにも対応する。有床診療所であり、ケガで動けないなど入院治療が必要な患者たちも受け入れる。「地域に頼られる有床診療所を、体力の続く限り維持していきたいですね」と話す奥田院長。入院患者の対応に忙しいはずだが、愛犬の散歩を日課にし「近所に犬友もいます」とほのぼのとした雰囲気だ。専門の脊椎疾患や腰痛、地域の高齢者について話を聞いた。
(取材日2025年2月28日)
地元で40年以上、地域に根差した診療を行う
先生は、お父さまからこの医院を引き継がれたそうですね。

1982年に父が開業し、私は2009年から勤務を始め、その後引き継ぎました。この地でもう40年以上診療を続けていることになります。後を継ぐことは自然と考えるようになっていましたね。大学院を修了後、専門である脊椎疾患を中心にJA広島総合病院など県内の病院で研鑽を積み、当院に戻ってきました。整形外科、リハビリテーション科のほかに、皮膚科も標榜しており、今は私の妻が火・木・土曜の午前中に診療しています。父は今85歳ですが、長く通ってくださっている患者さんの診療は今も続けています。
患者さんはどういう方がいらっしゃいますか?
電車や車を利用して周辺地域の方が来院されていますね。ゆっくり歩けば駅から7分ぐらいでしょうか。車の方は、国道2号線も近く最大20台ぐらい収容できる駐車場があるので、来院しやすいと思います。このエリアには、小さい工場がたくさんあり、ここは労災保険指定医療機関にもなっているので、例えば機械に指が挟まれたなど仕事中にケガをされた方が時々受診されます。またすぐ隣が小学校、その向こうに中学校、高校とあるので、ケガをした児童、生徒さんが先生と一緒に来られることもありますね。もちろん、この近辺のお年寄りの方もたくさん来られています。父の代から40年以上もこの地で診療していますので、父が診ていた患者さんの子どもさんやお孫さんが来られることもあります。
入院設備があるのも特徴ですね。どういった方々が入院されていますか?

開業以来、入院可能な有床診療所として診療を続けてきました。圧迫骨折など体を動かすことが困難で安静が必要な方や、当院で骨折の手術や治療をした方も入院されています。また、他院で人工関節などの手術を受けた方で、退院後にまだ腫れや痛みがあり在宅復帰が難しい方などが紹介で入院されて、リハビリテーションを希望されることもありますね。当院は救急告示医療機関にもなっているので、救急車で運ばれてくる救急患者さんにも対応しており、入院が必要となる方々の受け入れに関しても、お役に立てるかなとは思っています。
スポーツ外傷では腰部治療を多く経験
背骨や腰部がご専門とのことですが、患者さんの主訴はどういったものが多いですか。

高齢の方の場合、変形性脊椎症で椎間板が少なくなって骨がもろくなったり、ねじれてきたりという患者さんは多いですね。そのほか若い方でも、ぎっくり腰やスポーツの障害で来られる方はいらっしゃいます。以前勤めていたJA広島総合病院ではスポーツ障害の腰痛患者に携わる機会が多くあり、野球やサッカー選手の治療を行っていました。そこでは腰椎分離症や疲労骨折が多かったですね。今も当院に、「スポーツ障害で腰が痛い」と言ってこられる学生さん方には、早期の疲労骨折がないかどうか、エックス線検査ではわかりにくいので他院にMRI撮影を協力してもらって診断しています。
スポーツ障害に対しての想いもお聞かせください。
部活動でスポーツをしている子たちに早期腰椎分離症が見つかった場合、本来治療としてはコルセットをして、スポーツをある一定期間休まなければいけないんですね。しかし、長期間スポーツをしないとなると元の競技レベルまで戻すのにも時間がかかる。目の前に大事な大会がある場合、本人だけでなくご家族やコーチからも早期復帰を望まれることが多くあります。このように、スポーツ障害においては早期復帰したい患者さんたちの意思と治療期間に乖離があることが多いんです。限られた診療時間で、患者さんと家族と治療をどうするか話して、答えを出すことは難しいと感じています。しかし、患者さんが部活動や競技にかける想いは相当なものだと思いますので、医学的な面と患者さんの想いをくんで最も納得感の得られる選択を取れるように努力しています。
スタッフの方々の体制を教えてください。

院内に理学療法士は7人いますが、うまく連携できるように努めています。あと、有床診療所を維持するには当直のできる看護師がいないといけないんです。今、8人の看護師がローテーションを組み、とても頑張ってくれています。8人のうち数人は、父の院長時代からいてくれているメンバーで、本当に長く勤めてくれありがたいですね。ただ、有床診療所を維持するために必要な力はそれだけではなくて。事務や看護助手、調理師といったスタッフすべての力で成り立っているんです。本当にありがたい限りですね。
地域ぐるみで高齢者の暮らしを支える
心がけていることは何ですか?

患者さんが何に困っているかを、きちんと聞きとるということですね。本当に困っているのはどこなのか、診察しながら突き詰めています。また、一口に腰痛、しびれといっても要因はさまざまです。整形外科の範囲を超えて、他の診療科目に該当する疾患もあります。また、絶対に見逃してはならないような病態が隠れている可能性もあります。単純に整形外科的な視点だけで見るのではなく、患者さんのお話をしっかり聞いて、必要に応じて病院や他科のクリニックと適切な連携が取れるようにしています。そのほか、ご高齢の方には、生活環境なども気をつけて聞くことが多いかもしれませんね。自宅での手助けが必要な場合は外部の介護スタッフと連携して相談に乗っています。
介護と連携するケースは、どのような流れになりますか?
入院していた患者さんが家に帰られても、以前のような生活が難しい場合があります。その場合は退院時にケアマネジャーや介護スタッフに入ってもらい、地域ぐるみでご高齢の方の生活をサポートする方法を考えています。実際に有床診療所は、そういう介護へのつなぎ役となることが増えていると思います。整形外科的な治療から在宅介護にシフトして、在宅での介護中にまたケガをした場合は病院に戻ってくるというような、そういうやりとりが増えてきたかもしれませんね。
2025年1月にリニューアルされたそうで院内は明るいですね。今後の展望についてもお聞かせください。

窓を大きくしたので、かなり明るくなりました。夕方にはスクリーンを下ろすのですが、下ろした時にスクリーンを通った外の明かりが優しく、雰囲気がいいんです。院内には何か音楽を流したいと思い、ピアノのやわらかいタッチの曲を集めてみました。患者さん方には、リニューアル後の院内を、「ここはすごく落ち着きますね」と言っていただきました。地域の方々に来ていただいて居心地良く感じていただけるなら良かったのかなと思いました。入院の患者さんを抱えているのですぐ近くに住んでいるんですが、犬を飼っていまして、散歩しながらこの近所の方と犬友になったりしているんですよ。この辺の地域全体が温かい感じでいいなという印象があります。そんな地域の皆さんに安心してもらえるよう、これからも今の有床診療所のかたちを続けていき、体力の続く限り貢献していきたいと思っています。