沼田 恒実 院長の独自取材記事
沼田皮膚科クリニック
(広島市中区/胡町駅)
最終更新日:2021/10/12

広島電鉄の胡町電停または銀山町電停より徒歩1分。複数の医療施設が入るビルの2階に「沼田皮膚科クリニック」がある。広々とした院内は、白を基調とし清潔な印象だ。沼田恒実院長は広島大学医学部を卒業後、同大学の附属病院皮膚科に長年勤務。その間、ロンドン大学の皮膚科学研究所にて皮膚アレルギーの研究に携わった経験を持つ。広島市の市街地にある同院には、市内だけでなく県内各地や山口県、島根県、四国からも患者が訪れる。アトピー性皮膚炎をはじめ、じんましん、接触性皮膚炎などの疾患が多いという。「アレルギーで悩む人も治療が確立され、薬も開発・改良されてきているので、多くの疾患は治すことをめざせる時代になってきました」と語る沼田院長。同院での診療スタイルや治療方針について話を聞いた。
(取材日2021年7月7日)
診療ブースは8室。多くの患者が通う皮膚科クリニック
開業までの経緯をお聞かせ願います。

広島大学医学部を卒業してから、同大学の医学部で皮膚科の助手や講師を務めていました。主にアレルギーについて研究をしていたのですが、ロンドン大学に皮膚のアレルギー専門の著明な先生がいて、その先生のもとでアレルギーを勉強することになり約2年半ほど現地で学びました。帰国後はまた広島大学の皮膚科に戻り、アレルギーの外来を受け持っていました。1992年に開業して、最初は八丁堀電停前にクリニックを構えましたが、手狭になり、2012年にこちらへ移転しました。
診察ブースが8室あると聞きました。
そうですね。1番目と2番目のブースが初診の方で、5番目がレーザー治療の方。そのほかのブースでは再診の患者さんを診察します。まず、ブースに患者さんが入られると、看護師が話を聞き、メディカルクラークと看護師が入力してカルテに記載します。問診終了後、私が診察します。当院には、広島市内の方をはじめ、県内各地や山口県、島根県、四国からも来られますが、以前は院内が診察待ち患者さんでいっぱいになって診察までに時間がかかったため改善を考えていました。患者さんには服を脱いでもらうなど準備の時間もいるので、患者さんが動くよりも、私が動いたほうが早いということで。最初から計画していたのではなくて、増えていく患者さんに対応しながら、徐々にこういうかたちに効率化されていった感じですね。看護師やスタッフも、よく動いてくれます。
どういう悩みを持った患者さんが来られますか。

大学でアレルギーの外来を担当していたので、その関連でアレルギー疾患の患者さんが多く、アトピー性皮膚炎やじんましん、かぶれとも呼ばれる接触性皮膚炎といった悩みが主です。また、アトピー性皮膚炎のお子さんが良くなったことがきっかけで、その子のご両親やおじいちゃん、おばあちゃんまで、家族皆さんが当院へ来られることもよくあります。そういった場合には、脱毛症の人もおられるし、顔のしみや、イボのようなもののご相談など、さまざまです。そのほか、足の爪の水虫などもあります。皮膚科は、頭の先からつま先まで体全体を診る科です。患者層は本当に幅広いです。
アレルギー疾患の治療は薬とうまく付き合うことが重要
アレルギー疾患の患者さんは増えているのですか。

アレルギー疾患の患者数自体は増えていると思います。しかし今は、研究が進み発症の機序の解明や治療もどんどん確立されてきており、アトピー性皮膚炎の患者さんも、適切に治療を行えば治すこともめざせる時代になってきました。薬もすごく良くなってきていますし。だから、そういう意味で状況は落ち着いてきているのではないかと思います。
アトピー性皮膚炎の患者さんには、どういった治療をされていますか。
アトピー性皮膚炎の治療に関していうと、まずスキンケアが非常に大事になるのですが、昔はステロイドの外用薬でアレルギーを抑えていくのが主流でした。しかし今は、ステロイド以外に保湿剤や、ステロイド以外の抗アレルギー外用薬も増えています。注射薬もあるし、光を使った治療法もあります。そういったことを背景に、アトピー性皮膚炎の治療方針も変わってきました。今は、幼児期にアトピー性皮膚炎を発症した患者さんが適切な治療を行えば、小学校に行くまでには普通の生活ができるくらいには回復をめざすこともできるようになってきました。
アレルギーの子どもを持つ親は、どんな注意が必要になりますか。

以前は、ステロイドの外用薬を副作用の強い薬と思い、副作用が出るんじゃないかと不安になるお母さん方がたくさんいらっしゃいました。ステロイド薬に対して信頼感が持てず、必要量を使用せず、自己判断で薬をやめられてしまう方も多くおられました。そのような不適切な使い方では、また悪い状態に戻ってしまいます。結果、苦しむのは、子どもさん自身です。ステロイドを含めた外用薬をどういうふうに使えばいいのか、わかってきました。薬の強さには段階があるので、皮膚科では患者さんの症状の変化に合わせて、だんだん弱いものにしていくという使い方をしています。皮膚の細胞は2週間~数週間のサイクルで生まれ変わっています。ある程度の時間、きちんと薬を続けることが大切だと思います。
患者とともに、きれいな皮膚をめざす
先生が医師をめざされたきっかけや、皮膚科を選ばれた理由は?

高校生になるまでは、何も考えていませんでした。人を助ける仕事をしたいと漠然と思っていて、法学部に行こうかなと思っていたんです。けれども、人を助けるには医学かと思うようになり。高校2年の頃、文系から理系へ方向転換して医学部に進みました。医学部で皮膚科を選択したのは、皮膚科だと、全身を診ることができるということが理由です。そして、腫瘍を取るなどの外科手術があり、皮膚に症状の出る膠原病など内科的な疾患も診ます。対象年齢も赤ちゃんから高齢者までと幅広く、男女性別も問わないということで、欲張りだったんだと思います(笑)。なんでもやりたい、何でもできる科がいいということで選びました。
医師として喜びを感じる瞬間は? 診療で心がけていることも教えてください。
以前担当していた、アトピー性皮膚炎の症状がひどかった女の子が、治って普通に生活できるようになり、結婚して「子どもがアトピーみたいなので連れてきました」と遠方からわざわざ診療に来られた時はうれしかったですね。それから、高校生まで診ていた子たちが大学生になり、関東や関西に出ていくんですけど、行った先でも病院を紹介してきちんと通うよう指導し、夏休みなどに良くなった状態を見せにきてくれるのも、やはりうれしく感じます。皮膚を健康にするには、時間を要します。ちゃんとスキンケアを続けていくことが大事です。それを、患者さんに納得してもらうように心がけています。
最後に読者へメッセージをお願いします。

皮膚は全身の状態を映す鏡であり、体を保護する器官でもあります。肌の具合が悪いと精神面にも影響して、気持ちが暗くなります。もし皮膚に何か不調があれば、早く皮膚科を受診してください。そして、健康な皮膚を維持していきましょう。少し良くなったからといって、スキンケアなどの日頃のお手入れを途中でやめないように。きれいな皮膚をめざして、老若男女の患者さんすべてのサポートをしていきたいと思います。