渡辺 雅仁 院長の独自取材記事
マスカット整形外科医院
(赤磐市/瀬戸駅)
最終更新日:2025/06/24

赤磐市の中でも、自然豊かな山間部にある「マスカット整形外科医院」。自然の景観になじむ外観をした同院は、2023年に渡辺雅仁院長が継承した。アットホームな雰囲気で患者を優しく迎え入れ、患者の困り事には親身になって解決に導くことに尽力している同院。同院はあえて予約制を取り入れず、初診の患者も含め来院した患者全員を診ることを心がけている。対応が難しい場合は正直に伝えつつ、適切な医療機関への誘導を実施。地域住民の医療の窓口としての役割も果たすべく努めている。学生時代の恩師との出会いによって、医師人生が大きく変わったと言う渡辺院長。インタビュー中に雑談も交えながら答えてくれた渡辺院長は、終始気さくで、患者からも親しまれているであろう姿が想像できた。
(取材日2025年5月20日)
クリニックを継承し、設備も一新
継承されたクリニックとのことですが、継承までの経緯をお聞かせください。

私自身も最初から開業を考えていたわけではなかったんですよ。前任者が人づてにクリニックの後継者を探しているという話を聞いて、何となく話を聞きに行ったんです。それまではずっと大学関係で働いていて、専門であるリウマチについての知識と技術を深め、手術に取り組んでいました。継承の話を聞くまでは、自分はおそらくずっと大学で働いてリウマチの研究をしていくものだと思っていたんですが、クリニックの後継者が不在だと、この地域に整形外科がなくなってしまうことや、手術前後のケアの必要性を考えた時に、自分がやれることは何かと考えたんです。昔から家庭医学に興味はありましたし、手術ができる医師は私以外にもいると考え、継承を決意しました。
継承後、どのような診療を提供していますか?
基本的には整形外科全般に対応しつつ、リハビリテーションにも注力しています。継承当時にあった設備は、私が継承して以降、ほとんど新しい物に入れ替えました。リハビリの機器も一新したので、久しぶりに来院された方は驚かれますね。骨密度測定も可能で、骨粗しょう症治療にも力を入れています。骨粗しょう症は、自覚症状がなくても健診で受診を勧められて来院される方も多いですね。飲み薬や注射といった治療が提供できますので、健診などで気になった方はお気軽に来ていただければ。それから、足底腱膜炎の症状に効果が期待できる、体外衝撃波治療装置も採用しています。体外衝撃波治療装置は、導入しているクリニックは岡山県内でも珍しいと思います。
こちらのクリニックの強みは何でしょう?

いい意味で、クリニックらしくない雰囲気があるところです。コテージ風の建物は、内装も木のぬくもりが感じられますし、待合室は窓が大きいので外の自然な光がたくさん入ってきます。クリニックの空気は苦手だという方も、リラックスできる雰囲気じゃないかと思いますね。それから当院は“小さな病院”ともいえる機能を持つことをめざし、理学療法士や作業療法士、放射線技師、看護師など多様な職種のスタッフが在籍しています。当院の理念として、「ここに来て良かった」「また来よう」と思ってもらえるクリニックをめざし、スタッフみんなが患者さんに優しく接してくれます。患者さんに「困ったらあそこに行こう」と言ってもらえるようになるとうれしいですね。
あえて予約制を取らず、患者が気軽に来院できるように
遠方から来られる患者さんもいらっしゃるとか。

そうなんです。近隣住民の方が多いのはもちろんなんですが、赤磐市だけでなく、瀬戸内市や東区、中区から足を運んでくださる患者さんもいらっしゃいます。クチコミでいらっしゃる方が多いですね。大学病院に勤めていた時は遠方からの患者さんも珍しくなかったんですが、まさか地域のクリニックでも遠方からいらっしゃる方がいるとは思わず、驚きました。ありがたいです。ご期待に添えられるよう、日々努力していきます。
患者さんと接する上で、気をつけていることはありますか?
患者さんの顔を見て話を聞き、話すことを気をつけています。情報は電子カルテにあるため、どうしてもパソコンのモニターを見ながら話しがちになってしまうんですが、それだと地域のクリニックとしては信頼されないと思うんです。「忙しいから仕方ない」ではなく、忙しいからこそ患者さんのお話を聞きたいと思っています。わからないことは正直にわからないとお伝えしますし、当院でできないことは他のクリニックや病院を紹介させていただきますので。おかげさまで、患者さんからは「話しやすいから来ている」「親身になってくれる」と言ってもらえています。その評判を落とさないように、今後も気をつけていきたいですね。
クリニックの方針について教えてください。

あえて予約制を採用していないことですね。そのためお待ちいただく時間が長くなる場合もあるんですが、来院いただいた方すべてを診るようにしています。予約制を取らないメリットは、急な痛みやケガでも、患者さんが来院さえしてくれれば診られることです。予約制だとどうしても予約した患者さんが優先になるため、急な来院だと順番がかなり後になってしまうことが多くなってしまいます。もちろん緊急性が高ければ先に診ることもあるかもしれませんが、「予約してないから今日はもう無理だ。痛みは我慢して明日にしよう」と思う患者さんは少なくないと思います。当院は、困った人がかかりやすいクリニックをめざしているので、心配事や困り事があれば、その都度お気軽にご来院ください。
ボスに憧れて整形外科の道へ
なぜ医師になろうと思われたのでしょう?

両親が臨床検査技師だったんですが、幼少期の私からすると臨床検査技師も医師も一緒だったんですね。幼稚園の頃から、将来は医師になりたいと言っていました。手術ができて患者さんとも関われる科を考えた時に、整形外科と乳腺外科で悩みました。最終的に整形外科を選んだのは、大学時代の恩師でもあり、現在もリウマチの領域で知られている西田先生に出会ったからです。私はボスと呼んでいるんですが、当時は数百人いる学生の1人だった私の進路相談に、ボスは深夜までずっと付き合ってくれたんです。人間性に惚れましたね。4~5年はボスの外来の手伝いをして、外来のやり方や手術の作法などもボスから学びました。
西田先生から言われたことで、印象に残っている言葉はありますか?
守破離という言葉です。元は柔道の言葉なんですかね。守破離の守は、師匠の教えを守ること。破は文字どおり、教えを破って自分の道を見つけること。離は、師匠から離れて自立していくことだそうです。私は開業もしたので、胸を張って「離」の段階だと言いたいところですが、自分としてはまだまだ「守」の段階だと思っています。今やっていることも、ボスの真似をしているだけだと感じていますから。いつか「離」の段階まで行けたらと思うんですが、道はまだまだ遠そうです。精進します。
今後の展望についてお聞かせください。

何でも相談できて、患者さんが気軽に来院できるクリニックでありたいです。当院は整形外科なので診られる範囲は決まっているんですが、どこに行けばいいか患者さんにお伝えすることはできます。医師から見れば「この痛みは内科」「この症状は皮膚科」と判断できるんですが、患者さんには難しい場合もあると思うんですよね。そんな患者さんの案内役としても、当院が活躍できればと思っています。当院に来る患者さんの中には「咳が止まらないから、とりあえずここに来た」という方もいらっしゃいます。地域の医療のよりどころとして使ってもらえるのは、当院としてもうれしいところです。患者さんの困り事を解決していくためには、今の状態が完成形ではなく、検査機器などの設備や接遇面などももっと整えていく必要があると思っています。現状に満足せず、今後も地域医療に貢献していきたいと思っています。