片山 陽介 院長の独自取材記事
産婦人科・内科 片山医院
(赤磐市/玉柏駅)
最終更新日:2025/05/23

岡山県赤磐市にある「産婦人科・内科 片山医院」は、長年地域に根差した医療を提供してきた。現院長の片山陽介先生は、2022年に先代である父親から同院を継承。地域でも少ない婦人科医としての役割を担いながら、患者に寄り添う丁寧な診療を続けている。広島市立広島市民病院で培った多様な経験をもとに、内科も含めた柔軟な対応力と、相談しやすい雰囲気づくりを通じて地域医療を支える存在となっている。「何も問題ないということがわかるだけでも受診する意味は大きい」と、患者からの小さなサインも見逃さず、幅広い世代の健康を支え続ける片山院長に、継承の経緯やこれまでの経験、診療時に心がけていることなどを聞いた。
(取材日2025年4月23日)
「地域の砦」として受け継いだクリニック
クリニックを継承された経緯を教えてください。

もともとは父が30年以上にわたって続けてきた医院ですが、父が体調を崩して他界したことをきっかけに、一度は閉院となりました。当時、私は広島市立広島市民病院で勤務しており、正直なところ地元で開業することについてはあまり考えていませんでした。しかし、両親の希望があったこと、そして地域に産婦人科が少なく、妊婦健診を受けるにも遠方まで行かなくてはならない状況を目の当たりにし、「少しでも役に立てるなら」と思い、地元へ戻る決意を固めました。地域の方々からも「医院がなくなって困った」という声を多くいただき、それが自分自身の背中を押してくれたように思います。産婦人科はこの地域では数が限られており、必要とされる存在であることを改めて実感しました。再開にあたっては、建物のリフォームを実施。開業当初から残るシンボル的なステンドグラスはそのままに、清潔感と快適さを兼ね備えた空間へと整えました。
どういった患者さんが多いですか?
患者さんは主に生理がある年齢層の方が中心です。若い方では月経不順、更年期前後の50歳前後の方も多く来院されます。また、高齢の方でも不正出血や膣の違和感といったトラブルで受診されるケースもあります。父の代から通ってくださっている患者さんも多く、昔はお産も扱っていたため、「お父さんに取り上げられた」と話してくださる方もいらっしゃいます。父の代でお産は終了しましたが、当時取り上げたお子さんが成長し、今度はご自身のお子さんを連れて来院されることもあり、地域との深い結びつきを日々実感しています。当院が一時閉院していたこともあり、「もうやっていないと思っていた」という声を聞くこともありますが、看板やクチコミなどを活用して、再認識してもらえるよう工夫しています。
院長として戻ってこられた際、地域に対して感じたことはありますか?

この地域は産婦人科が非常に少なく、妊婦健診を受けられる施設も限られています。出産施設の減少が進む中、地元で安心して通える環境を守りたいと考えて、当院では妊娠32週目まで健診に対応しています。以前は地域の開業医でもお産を取り扱っていましたが、今では大きな病院への集約が進み、出産できる場所は少なくなりました。広島市民病院時代に「もっと早く来ていれば」と感じる症例を多く見た経験から、少しの不安でも気軽に相談できる場が必要だと痛感しました。産婦人科は専門性が求められる分野で、地域にないと本当に困る存在です。当院が、妊婦さんや地域の方々にとって身近な相談先となり、安心を届けられる存在でありたいと願っています。32週目以降の分娩先については基本的に患者さんご自身に選んでもらい、希望があれば紹介状をお出ししています。婦人科以外の症状も、状況に応じてスムーズに最適な機関へ移行できるようサポートしています。
さまざまな症例を経験したことにより培ってきた対応力
医師としてのスタートから現在に至るまでのご経験について教えてください。

産婦人科医になろうと思ったのは、研修医時代の頃です。父の影響も多少ありましたが、病気の発見から治療、そしてその後のフォローアップまで一貫して携われる点に魅力を感じたからです。他の科では診断と治療が分かれることも多いですが、産婦人科は自ら完結できるところに惹かれました。特に婦人科がんでは、診断、手術、化学療法、再発チェックに至るまで一連の流れを担える点に大きなやりがいを感じています。当院を継ぐ前に勤めていた広島市民病院は患者さんの数が非常に多く、日々さまざまな症例に対応してきました。地方ではなかなか出会えないような疾患にも向き合うことができた経験は、現在の診療にも大きく役立っていると実感しています。
現在の診療においてどのような点が強みでしょうか?
広島市民病院は非常に患者数が多く、小規模な病院での20年分に相当する症例を10年で経験できるような環境でした。珍しい疾患にも対応してきたため、症状の初期段階での気づきや、さまざまな悩みを抱える患者さんへの対応力は大きな強みだと考えています。広島時代にはもっと早期発見できる手段はなかったのか、と感じる場面も多く、現在は「まずは話を聞かせてください」というスタンスを大切に、問診の段階からわずかな違和感にも注意を払い、見逃さないよう努めています。また、木曜日にはボディーケアルームとトリートメントルームを開設。外部スタッフによるボディーケアやマッサージを提供しています。出産後も続く女性特有のお悩みに寄り添い、安心して相談できる場を整えるようにしています。
一般内科も診療されているのですね。

地域柄、婦人科の受診時に風邪や腹痛、生活習慣病の相談を受けることも多く、高齢の方には感染症対策も含めた幅広い対応が求められます。特に新型コロナウイルス感染症が拡大した時期には、地域の方が安心して受診できるよう、一般内科としての診療体制も積極的に整えました。現在も、遠方の病院まで行く負担を減らすため、希望に応じて必要な処方を行うなど、柔軟な対応を心がけています。そのため、男性の患者さんが来院されることもあります。
安心して相談できる場所であるために
患者さんと接するときに心がけていることを教えてください。

患者さんを第一に考えることを大切にしています。説明もできるだけ丁寧に行い、納得してもらえるよう心がけていますし、患者さんの要望にも極力応えられるよう努めています。婦人科は特に羞恥心や不安を感じやすい診療科。男性医師であることに抵抗を感じる方もいらっしゃるため、リラックスして何でも話せる空気づくりを意識しています。「こんなことを相談して良いのかな」と迷うようなことでも、遠慮せず話してもらえたらと思います。
婦人科検診の重要性について、どう考えていらっしゃいますか?
婦人科検診を受けていない方はまだまだ多いのが現状で、症状があっても受診をためらう方が多いと感じています。しかし、子宮や卵巣の異常は血液検査だけではわからないことが多く、検診によって初めて見つかる場合もあります。だからこそ、違和感がなくても年に1回は検診を受けていただきたいと考えています。特に子宮頸がんは若い方にも増加傾向があるため注意が必要です。症状が出てからでは進行してしまうケースもあり、「何もなかった」と確認できること自体が受診の大きな意義になります。子宮頸がん検診は自治体でも推奨されていて、患者さんには「子宮がん検診を受けているから大丈夫」と思われがちですが、それだけでは子宮や卵巣の全体像は把握できません。当院ではエコー検査も併用し、より精密な検診を行うようにしています。
最後に、今後の展望や読者へのメッセージをお願いします。

婦人科に限らず、内科的な症状や地域の医療機関との連携も含め、「何かあったらまず相談できる場所」であり続けたいと思います。ピルの定期処方や週1回のオンライン診療も行っているのも、仕事帰りに通院するのが難しい方にも対応できればという考えから。婦人科はデリケートな悩みが多いからこそ、通いやすさや相談しやすい雰囲気づくりが重要だと思います。今後は産後のケアや更年期の不調、睡眠時無呼吸症候群といった見過ごされがちな症状にもしっかりと対応していきたいです。地域にもっと貢献できる方法はないかと日々模索していますが、婦人科のスペシャリティーを生かし、「どこに相談したら良いかわからない」と感じている方の力になれたらと思っています。少しでも気になることがあれば、ぜひ気軽に相談に来てください。
自由診療費用の目安
自由診療とは子宮頸がん検診:3500円、低用量ピル:1シート2500円