廣瀬 龍壽 院長の独自取材記事
みらいクリニック
(岡山市中区/東岡山駅)
最終更新日:2022/12/22

岡山市の住宅街に位置する「みらいクリニック」。地域に根づいた「万袋内科胃腸科医院」を2022年4月に継承した院長の廣瀬龍壽先生が力を入れているのが在宅医療だ。きっかけは廣瀬先生が以前に勤務をしていた病院で在宅医療に携わっていたことと、新型コロナウイルス感染症流行下で対面での看取りが難しい状況になったこと。自然なかたちで最期の時間を過ごすことができるよう、患者と家族が望む医療を提供している。外来ではプライマリケアを中心に一般内科を診察。看護師らスタッフとともに地域のかかりつけ医として適切な医療を届けるため日々尽力する廣瀬先生に、医師をめざしたきっかけや在宅医療に対する想いなどを聞いた。
(取材日2022年10月6日)
患者のために大事なことは何度も繰り返し説明する
住宅街にある医院ですが、患者さんは住民の方が中心ですか。

そうですね。この辺りにお住まいの方が多いです。歩いていらっしゃったり自転車でいらっしゃったりする方もいますね。年代は高齢の方が多いですが、最近は新型コロナウイルス感染症の検査やワクチンの接種、企業検診の再検査を機に、当院をかかりつけ医としてその後も通われる方も増えてきました。平日の受付を18時30分まで行っていますので、働き世代の方にとっても通いやすいのだと思います。
どのような症状の方が多いのでしょうか。
年代の中心は高齢者の方になりますので、糖尿病や高血圧、生活習慣病全般といった慢性疾患の方が定期的な受診で来院されることが多いですね。中には定期受診の際にいつもとは違う腹痛や頭痛などを訴えられる患者さんもいらっしゃいますので、適切な診療をするようにいつも気をつけています。また、なるべくわかりやすい言葉を用いて何度も繰り返し説明をするようにしています。特に検査結果の数字の意味などは前回の診察時と同じ内容であっても、再度しっかりと説明をします。患者さんによっては知ってるからいいのに、という方もいらっしゃいますが、皆さんが前回の診察内容を覚えていらっしゃるわけではありませんからね。あとは耳が聞こえづらい方もいらっしゃるので、なるべく紙に書いて説明をするようにしています。
他にも気をつけていらっしゃることがあれば教えてください。

なるべく患者さんが話しやすいような、和やかな雰囲気でいるよう心がけています。それでも医師が診察の際に聞き取れる患者さんの情報はごくわずかだと思います。だからスタッフには積極的に患者さんに話しかけるように伝えています。医師には直接言いづらいことや診察時に言い忘れたことなどがあると思いますので、スタッフと話をして聞き出すことができればと思っています。また何げない会話の時に本音が出ることもあるので、雑談でも何でもいいから楽しく会話ができる明るい環境づくりをめざしています。
患者と家族の要望をくみ取りながら提供する在宅医療
在宅医療の要望は増えてきているのでしょうか。

そうですね。慣れ親しんだ自宅で過ごしたいということもあると思いますし、病院に長期間入院することが難しくなってきていることもあると思います。大きい病院のようにすぐに画像診断や精密検査というのはできませんが、本当はもう少し入院を続けたいのだけれど、退院することになり困られている患者さんやご家族は多いので、必要な医療をご自宅で受けることができる在宅医療はとても重要だと考えています。当院では症状がそれほど進んでいない患者さんへの訪問は月に1回、少し医療を必要とされている患者さんへは2週間に1回、症状の変化が激しい方であれば週に2、3回伺うようにしています。症状によっては毎日でも様子をうかがう場合もあります。
どのような医療を提供されているのでしょうか。
通院されていた時と同じような医療を提供できるようにしています。積極的な治療を望まれる患者さんやご家族の方もいらっしゃいますし、自然のまま苦痛のないようにしてほしいという方もいらっしゃいます。どういう治療を望まれているかということを患者さんとご家族の方としっかりとお話をしてから診療を始めています。ただ気持ちというのは変わるものです。最初は入院を拒否されていた方が、やっぱり大きな病院で積極的な治療を受けたいと思われるようになることもあります。最初に伺った治療スタイルを突き通すのではなく、その都度どういう医療を求められているのかを確認し、私たちが提供できる医療レベルと合致していればそのまま続けますし、それ以上のことを求められていらっしゃれば大きな病院を紹介しています。
在宅医療に携わるきっかけを教えてください。

患者さんが入院されている場合、いくら患者さんの状態をご家族の方にご説明していても、死に直面するのが急に感じてしまうということがありました。でも在宅医療を受けていれば、ご家族の方も徐々に覚悟が固まっていくんですね。いよいよ、という時でも段階を経てきているので、いい最期だったと言われるご家族の方もいらっしゃいます。悲しみは等しいですが、一緒に過ごすことである程度は心づもりをすることができます。また新型コロナウイルス感染症の流行により、入院をしていると対面でのお看取りが難しくなったというのも理由の1つです。ご自宅で患者さんを看取っていくような体制をつくりたいと思い、在宅医療に携わることを決めました。今は外来の診察対応でなかなか在宅医療の患者さんの数を増やすことはできないのですが、今後は体制を整えてもっと積極的に取り組んでいきたいと思っています。
地域住民のかかりつけ医として幅広く対応をしていく
医師をめざされたきっかけを教えてください。

実は一度会社員として証券会社で勤務をしていました。その時に父親がなくなったり、若くして会社の同期が亡くなったりして、死というものが自分の身近なエピソードとして積み重なったことがきっかけです。自分でも何か人助けができないかと考え、医師をめざしたいと思い医学部へ入学しました。すでに結婚をしていて子どももいましたので、家族が理解してくれたことにとても感謝をしています。
こちらは2022年に継承されたのですよね。
2022年3月から前院長と一緒に診察をさせていただき、1ヵ月後の4月に継承をしました。これまでの経験から在宅医療を提供することを考えていましたので、開業をするなら都心よりは郊外で、医療を必要としている地域でと思っていました。そんな時に前院長が引退されることを伺い、住宅街にあるので住民の方にとって相談しやすい身近な医院だと思い継承を決めました。実際、診察を受けられるわけではないのに、通りがかったということで立ち寄ってお話をされていく患者さんもいらっしゃいます。40年くらい続いている医院ですので、それまでの地域の方々との信頼関係を絶やさないように引き継いで、さらに発展させていきたいと思っています。通院されていた患者さんが施設に入られる時に、主治医としてそのまま担当してほしいと言われるとうれしいですね。
これからの展望をお聞かせください。

とにかく明るい医院にしたいと思っています。患者さんが話しかけやすい環境、親しみやすい雰囲気をつくれるようにしていきたいです。また医療は医師1人でできるものではありません。チームで行うものだと思っています。私とスタッフ、そして患者さんの関係が良くないと治療はうまくいきません。スタッフもその想いを理解してくれ、医療に対しては厳しい姿勢でやるべきことをやり、患者さんには笑顔で接してくれています。これからも周辺の病院や先生方とも連携を取りながら、積極的にもっと幅広い層の方を診察していきたいと思っています。患者さんの体を総合的に診察する地域のかかりつけ医として、未来に向かって地域の方々と歩んでいきたいですね。