白髭 明典 副院長の独自取材記事
原尾島クリニック
(岡山市中区/岡山駅)
最終更新日:2025/08/04

岡山中区役所から原尾島番町線沿いを東に進むと、「原尾島クリニック」の緑色の看板が見えてくる。1996年に入院施設を備える診療所として開業した同院は、現在は内科をはじめ、皮膚科、アレルギー科、心療内科、整形外科、リハビリテーション科と、専門的な医療を幅広く提供。併設する通所施設や居宅介護支援事業所、隣接の歯科医院とも連携し、地域医療を支えている。今回取材に応じてくれたのは、白髭勇一院長の息子で副院長を務める白髭明典先生。明典副院長は、長年、大学病院や総合病院で内科診療に携わり、特に消化器内視鏡を専門としてきた。同院でも専門性を生かしながら、胃カメラや大腸カメラによる検査やポリープ切除などに力を入れている。そんな同院での取り組みについて語ってもらった。
(取材日2025年6月11日)
地域住民にぬくもりのある医療を提供する有床診療所
クリニックの概要をお聞かせください。

この近くにあった原尾島病院で理事を務めていた父が、内科と整形外科部門を独立させるかたちで、入院設備を備えた有床診療所として開業したのが、当院のスタートです。開業は1996年ですが、それ以前から父が診療していた患者さんも含め、3世代にわたって家族で受診してくださる方もいらっしゃるなど、地域に根差した医療を提供してきたクリニックです。現在は、内科、皮膚科、アレルギー科、心療内科、整形外科、リハビリテーション科の診療を行い、隣接する歯科医院とも連携しています。また、デイケアやデイサービスといった通所施設と居宅介護支援事業所を併設し、リハビリテーションや生活のサポート、介護のお悩みのご相談なども行っています。
診療理念を教えてください。
地域の皆さんにぬくもりのある優しい医療を提供し、地域の健康を支えることです。常に患者さんの立場で考えて、細心の注意を払い、心を込めて診療することが当院のモットーで、院長が開業当初から実践していることです。院長は、本当に仏のように穏やかに患者さんと接していて、自分にはなかなかまねできないですが、目標にしています。スタッフには、おもてなしの心を大切にしてほしいと伝えています。明るく優しく、患者さんに寄り添う対応をすることで親しみを持っていただき、テーマパークのように「また来たい」と思っていただけるようなクリニックをめざしています。
どのような患者さんが入院の対象になりますか。

当院では、大きな病院に行くほどでもない方や、大きな病院では入院できないが通院治療が難しい方などを幅広く受け入れています。肺炎・腸炎・やけど・褥瘡(床ずれ)などの治療、がん患者さんの終末期・緩和治療、糖尿病教育入院、検査入院、リハビリテーションや療養を目的とした入院など、多岐にわたります。例えば、内視鏡検査や大腸ポリープ検査は日帰りでも可能なケースが多いですが、入院が必要なこともあります。圧迫骨折で身動きが取れないため在宅治療ができずに療養入院になる方、リハビリテーションのために入院する方もおられます。また、新型コロナウイルス感染症の患者さんの入院にも対応しました。入院の食事はレトルト食品ではなくこちらで調理し、 管理栄養士による個別対応も可能です。医師、看護師、理学療法士、管理栄養士、介護専門員など多職種が連携・介入し、退院までスムーズにお過ごしいただけるよう、入退院支援に努めています。
苦痛に配慮した内視鏡検査など精密な検査・治療を提供
ご専門について、お聞かせください。

ゆくゆくは父のクリニックを継承することを考えて、消化器内科を専門に選びました。中でも自分の専門分野として注力したのが、消化器内視鏡です。いわゆる胃カメラや大腸カメラですが、検診で異常がないか調べるだけでなく、ポリープの切除も行うため、内科であっても手術も可能な点に魅力を感じたんです。20年以上、基幹病院で臨床経験を重ね、内視鏡の専門的な技術を磨いてきました。同時に、幅広く内科診療に携わり、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医に加え、日本消化器病学会消化器病専門医と日本内科学会総合内科専門医の資格も取得しました。クリニックにはさまざまなお悩みの患者さんが来院されますから、将来を見据え、研鑽に励みましたね。
早期発見のために、苦痛の少ない精密な内視鏡検査を行っていると伺いました。
胃カメラは、痛みを軽減するため極細のやわらかいカメラを鼻から挿入します。大腸カメラは、肛門からカメラを挿入する際に検査部位を膨らませるために送気して観察しますが、体内への吸収が早い炭酸ガスを使用し、腹部の膨張感などの苦痛の軽減に努めます。いずれも、粘膜表面の毛細血管や微細構造を強調表示する狭帯域光観察を搭載したカメラで撮影し、大型モニターで拡大表示して観察できます。大腸検査前に腸を空にするための腸洗浄剤を使用される際は、周りの目を気にせずに済むようトイレつきの個室をご用意しています。より苦痛の少ない検査をご希望の方は、鎮静剤を使用した状態での検査もできます。検査後は1時間ほどベッドで休んでいただいてからのご帰宅となり、当日は乗り物の運転はお控えいただくため同伴者が必要ですが、付き添いの方がおられない場合は検査後の1泊入院も可能ですので、事前にご相談ください。
内視鏡以外でも、先進の機器による精密な診療を提供されていますね。

マルチスライスCTによる大腸CT検査も実施しています。細いチューブを肛門から5cm程度挿入して、大腸を膨らませるための自動炭酸ガス注入機も使って撮影し、大腸カメラが困難な方にも対応しています。マルチスライスCTは全身に対応しているので、骨折を調べたり、内臓脂肪型肥満か皮下脂肪型肥満か調べたりなど、さまざまな検査を行っています。皮膚科では、アトピー性皮膚炎、乾癬、白斑などの紫外線治療を行うエキシマライト光線療法機器を導入しています。整形外科では、骨塩定量装置、頸椎けん引装置、腰椎治療装置や、振動による筋力強化・バランス能力向上をめざした装置を用いての治療を行っています。
複数の診療科や歯科、介護まで多職種が連携
クリニックにはどのような強みがありますか。

クリニックでありながら専門性の高い医療を提供していること、複数の診療科が連携できることです。内視鏡検査や大腸ポリープ切除などは、これまでに多くの経験をしてきた自負があり、入院施設もあるため、病院に行かなくても精密な検査・治療が可能です。もちろん、大きな病院での検査や治療が必要な場合は、迅速にご紹介し、適切な医療が受けられるサポートをします。皮膚科は日本皮膚科学会皮膚科専門医が、心療内科は経験豊富なベテランの医師が常駐するなど、各診療科とも、患者さんに寄り添いつつ質の高い診療に努めています。その中で、内科の患者さんが肌荒れなどの症状があったら皮膚科へというように連携を図ることも可能です。皮膚科で湿疹がなかなか治まりにくい患者さんを、「内臓に起因するのでは」と、内科で検査すると、がんが発見されるということも考えられますからね。
今後の展望をお聞かせください。
消化器内視鏡検査を積極的に受けることを呼びかけていきたいですね。大腸カメラは、健康診断の検便で異常が見つかって初めて検査する方が多いと思いますが、大腸がんは、よほど進行しないと症状が現れないので、発見が遅れがちです。何もなくても、定期的に検査することをお勧めします。胃カメラも、胃がんの早期発見のためにも、定期的に受けてほしいですね。特にピロリ菌の保菌者は胃がんの発生リスクが高まるので、注意が必要です。胃カメラの際にピロリ菌の有無も調べられます。どうしても消化器内視鏡検査は、苦痛や恐怖心から敬遠する方も少なくありませんが、当院では、検査のハードルを下げるためにも、負担を軽減する検査を心がけ、精度の高い検査で病変を見逃さず、早期発見できるように尽力していきます。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

長年この地で診療を行ってきたクリニックとして、これからも地域の皆さんの健康を支えていきたいと考えています。当院では、複数の診療科で専門的な診療を提供し、健診や内視鏡検査をはじめとする各種検査を実施、入院設備を備え、リハビリテーションや在宅医療にも対応しています。風邪でも、健康に関する心配事など、どんな些細なことでも気軽に相談に来ていただきたいですね。「あそこに行けば大丈夫だ」と、地域の皆さんに頼っていただけたら、こんなにうれしいことはありません。