井上 誠司 院長の独自取材記事
井上医院
(岡山市中区/高島駅)
最終更新日:2025/02/12

高島駅・東岡山駅より車で約10分の閑静な住宅街にある「井上医院」。1977年の開業以来、約半世紀にわたって地域に親しまれる産科・婦人科のクリニックだ。井上誠司院長は、大学病院の産婦人科とNICU(新生児集中治療室)で母子それぞれの治療を担当し、豊富な経験を持つエキスパート。産科では、専門スタッフによるチーム医療により、母子の健康を守る自然なお産をめざし、患者一人ひとりが安心して妊娠生活や出産に臨めるようにサポートする。婦人科では、地域の女性の一生涯の健康を第一に、一般婦人科診療、子宮がん検診、妊娠を希望する患者へのサポート、更年期障害の相談など、幅広い世代の女性の悩みに寄り添っている。穏やかな口調と笑顔が印象的な井上院長に、同院の特徴や医療にかける思いなどをじっくり聞いた。
(取材日2024年12月26日)
母子ともに健やかに安心できるお産をめざして
クリニックの歴史や、院長のご経歴についてお聞かせください。

当院は1977年に父が開業した医院です。私は、岡山大学病院、三豊総合病院、広島市民病院で産婦人科の診療に携わり、NICUでの診療経験も積みました。医師を志した当時は、何科の道に進むかは未定でしたが、大学時代に幅広い科を回る中で、産婦人科・NICU・小児科の現場で、未熟児を助ける医師たちの姿に感銘を受けて、産婦人科の医師となることを決意しました。そうした経緯もあり、研修医時代から、産婦人科だけでなくNICUの研修も並行して学びました。また、2008年からは岡山大学病院産婦人科の助教に就任し、産科・NICUの診療を兼務。2014年から当院で勤務し、父から代替わりする形で院長に就任しました。
とてもきれいな院内ですね。
2015年にリニューアルをしました。外観はあまり変わっていませんが、院内は全面的に改装して生まれ変わっています。私が院長に就任する前の当院は、内科も標榜しており、内科の患者さんの入院もあったのですが、現在は、産科・婦人科に特化したクリニックですので、お産で通院・入院される方のニーズを考慮して、快適に安心して過ごせるように院内へと改装しました。シャワー・トイレを備えた特別個室を設けるほか、普通個室には洋室と和室があり、個室の場合はご家族の方も付き添いで宿泊できます。医師・スタッフと患者さんの動線の改善なども考慮して、外来と入院のフロアだけでなく、院内は全体的に一新しています。
クリニックの方針や理念はありますか?

まずは妊婦さんと赤ちゃんの安全を第一に考えています。その上で、産婦人科は医療の提供だけではなく、サービスの向上やホスピタリティーも大事ですので、患者さんの満足度向上に取り組んでいます。時代のニーズに合った診療とサービスを提供するため、昨日より今日は何かしら一つでも前に進んでいきたいですね。産科では「自然で安全なお産」をモットーとしています。当院は無痛分娩は実施していませんが、陣痛への恐怖心が強い方や高血圧の傾向がある方などは、和痛分娩の対応ができます。無痛分娩は腰から管を入れる硬膜外麻酔をしますが、和痛分娩は痛みを和らげるために点滴の鎮痛剤を用います。自然分娩と比較すれば痛みの緩和が期待できます。事前に和痛分娩の準備をして、実際に陣痛が始まってからやはり自然分娩に切り替えたいという場合などにも、柔軟に対応しています。
医局時代に培われた専門性を生かし母子どちらにも対応
妊娠生活や出産のサポート体制についてお聞かせください。

産婦人科は、医師だけでなく助産師が中心となって妊婦さんをサポートします。妊娠時期に合わせた保健指導はもちろん、それ以外にも相談したいことは「助産師なんでも相談」にて個別指導でのご対応が可能。妊娠中の不安や心配事など、医師には相談しにくくても、女性の助産師には気軽に質問できるという場合もあると思いますので。このように、重要な役割を担う助産師なので、スタッフの知識・スキルのアップデートには注力しています。当院のスタッフは新生児蘇生法に精通しているので、状況に応じて対応することが望めます。私自身がNICUで働いていた経験もあるので、これらは当院ならではの強みの一つだと思います。
NICUでのご経験が、現在の診療にもつながっているのですね。
産科の経験だけでなく、NICUにいる未熟児などの赤ちゃんの治療を実際に数々経験しました。こうした経験は、なかなか産婦人科医全員が通る道ではないため、貴重な知見を得られましたし、当院を継承してからも、そのスキルが生きています。例えば、新生児の血管はとても細いため、点滴をすることがたいへん難しいのです。そのため、街のクリニックで生まれた赤ちゃんに点滴が必要な事態が起こった際、一般的には赤ちゃんだけ大学病院などへ搬送することになります。赤ちゃんとお母さんが離れ離れになってしまう母子分離ですね。そうした場合も、当院であれば他の医療機関へ案内することなく赤ちゃんへの点滴ができます。生まれたばかりの赤ちゃんとお母さんはできれば離れたくないでしょうし、私たちも可能な限り一緒にいてほしいと願っています。
その他、妊婦さんや産婦さんへのサービスはありますか?

当院では、妊婦さんの体調管理や赤ちゃんのお世話の指導などを目的とした「母親学級」を、集団ではなく個別開催しています。妊婦さんといっても千差万別。初産の方と経産婦さんとで気になる点は違うと思いますし、年齢や性格もお一人お一人異なりますので、多様な患者さんに一律で伝えるのではなく、ニーズに合わせた個別指導を実施するようになりました。集団の講義では質問があっても手を上げにくくても、個別であれば質問もしやすいと思いますので。産後のフォローは、通常は産後1ヵ月の検診で産婦人科は卒業しますが、産後3ヵ月でベビーマッサージを開催しています。産後に不安を抱えるお母さん方に、医院を卒業後にもう一度来院する機会を設けて複数人で集まってもらうことで、不安解消や母親同士のコミュニティーが広がればと考えて始めました。その他、マタニティーヨガ、栄養指導、産後エステなどもあります。
地域の女性の一生涯の健康をサポート
こちらでは、出生前検査も受けられるのですか?

はい。木曜日の午前中に遺伝カウンセリングの外来があるため、まずはカウンセリングを受診いただきます。「流産が心配」「高齢妊娠が心配」「家族に遺伝に関する疾患を有する方がいる」などの心配事がございましたらご相談ください。遺伝についても専門としている院長の私が、必要な情報を提供します。私が遺伝カウンセリングに入る関係で、毎週木曜日の産婦人科の外来は女性医師が担当します。
婦人科ではどんな相談ができますか?
月経や不正出血、おりもの、かゆみ、避妊、不妊症、更年期障害、ワクチン接種、子宮がん検診、子宮・卵巣や乳房のチェック、ブライダルチェックなど、幅広く対応いたします。初めて婦人科を受診する場合、ハードルが高いと感じる患者さんも多いと思いますが、例えば生理痛や生理不順で、学校や仕事など日常生活に支障を来す場合は、年齢に関わらず一度ご相談いただきたいですね。中学生・高校生で受診日を心配される患者さんもいますし、例えばすごく大事な部活の大会や受験の当日に生理が来てしまい、本来の力を発揮できない……というのもつらいことだと思いますから。当院はオンライン診療も対応しているため、例えば通院中に遠方に引っ越された場合でも、継続して受診することもできますね。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

地域のかかりつけ医として、何でも相談できる心のよりどころであれたらと考えています。開業からの長い歴史の中で、当院で生まれた赤ちゃんが成長して、また子どもを授かって来院してくれて……と親子2代・3代と通い続けてくださる患者さんもいらっしゃって本当にうれしいですね。産婦人科は、初めて受診する際は勇気がいるかもしれませんが、何かあれば我慢せずに、気軽に来ていただければと思います。ホームページからウェブ予約もできますので、不調にお悩みだったり普段と体調が違ったりしたら、気軽に予約してみてください。
自由診療費用の目安
自由診療とは低用量ピル:2200円、ブライダルチェック:1万1000円