水川 公直 院長の独自取材記事
水川内科小児科医院
(岡山市北区/備前原駅)
最終更新日:2025/10/10
JR津山線・備前原駅より徒歩約1分の「医療法人イキイキ会 水川内科小児科医院」は、1993年に開業して以来30年以上、地域住民の健康を支えてきた。内科、小児科、循環器内科の3科目を掲げ、幅広い症状に対応している。インタビュー中、水川公直院長は「地域医療の交通整理を行いたい」と繰り返し言葉にしていた。これは、患者の中で自己完結するのではなく、プロの視点から判断して、仮に同院で対応することが難しい症状だったとしても、適切な他の病院へつなぐ役割も担いたい、という意味が込められているそうだ。そんな水川院長に、今回は同院の診療方針や在宅医療への想いを語ってもらった。
(取材日2025年09月08日)
患者一人ひとりに寄り添い、心も癒やせる医療を
これまでのご経歴を教えてください。

中学から高校時代を神戸市で過ごした後、大学は京都府立医科大学医学部に進学しました。卒業後は大学病院の小児科で研修医として勤務。1979年には京都府立医科大学大学院の医学研究科博士課程を修了し、医学博士を取得しました。その後、より基礎医学の研究を深めるために岡山大学医学部へ移り、神経系の組織学や脳内レセプターを中心とした神経疾患に関する研究を続けてきました。また、研鑽を積むべく、カナダのトロント大学やブリティッシュコロンビア大学にも留学し、国際的な研究の場にも身を置きました。そうした経験を経て、1993年にこの地で当院を開業し、現在に至ります。
開業された理由を教えてください。
開業を決めたのは、自分を本当に必要としてくれる場所で力を発揮し、人の役に立ちたいと思ったからです。医師としての実力を生かせる場で、単なる科学としての医学にとどまらず「癒やしとしての医療」を届けたいという思いが大きな理由でした。研究やデータだけを重視するのではなく、人に寄り添う温かい医療を届けたかったんです。そのため診療では、パソコンの画面や写真といったデジタル情報だけに頼らず、患者さんのお話にしっかりと耳を傾け、実際に患部に手を当てて状態を確かめることを大切にしています。まさに「手当て」という言葉のとおり、手を通して伝わる安心感や信頼関係を大事にしたいのです。そうした姿勢を軸にして診療を続けています。
内科や小児科だけでなく、循環器内科の症状にも対応されているんですね。

患者さんのさまざまな悩みや症状に応えられるよう、10年ほど前から循環器内科も診療科目に加えました。いきなり総合病院などの大きな病院に行くのはハードルが高いですが、かかりつけ医がいる街の病院で専門的な診療を受けることができたら、地域の方々が便利じゃないかなと思ったんです。循環器内科は、私の娘であり、日本循環器学会循環器専門医の黒住瑞紀先生が担当しています。毎週木曜日に診療を行っており、高血圧症や狭心症、心筋梗塞といった循環器疾患に幅広く対応しています。胸の症状があるけれど何科を受診したら良いか迷っている方や、心臓や血管に関する不安を抱えている方も、気軽に相談していただければと思います。必要に応じて近隣の専門医療機関への紹介や情報提供も行っておりますので、いざという時にもスムーズな対応が可能です。
24時間医師と連絡が取れる医療体制を
医療理念や診療方針を教えてください。

当院が大切にしているのは、「地域医療の交通整理」を担うことです。どういうことかというと、ほんの些細な症状でも気にせず受診していただいて、そこで対応できることはしっかり行い、必要であれば適切な専門医療機関をご紹介する。患者さんが安心して次の一歩を踏み出せるように、橋渡しをする役割を担う。この一連の流れをスムーズに行うことを「地域医療の交通整理」と表現しているんです。また、私が良い医師の条件の一つとして大切にしているのは、「医院に入る前の不安が、出る時には少しでも和らいでいるかどうか」です。たとえ自分で治療できなくても、状況に合った解決策を示すことで気持ちを軽くできればと思っています。時に大変だと感じることもありますが、必要としてくださる方々の存在が、医師を続ける力にもなっています。
在宅医療にも力を入れていると伺いました。
当院では開業当初から在宅医療に力を入れてきました。私が大切にしているのは「終わり良ければすべて良し」という思いです。患者さんやご家族が、最期を迎える時に「ここで過ごせて良かった」と感じてもらえることをめざしています。その一つが「慣れ親しんだ自宅で暮らし続けたい」という希望に応えることです。今でこそ介護施設がありますが、当時はそうした選択肢が少なかったため、往診を続けてきました。急な変化にも対応できるよう、開業当初から患者さんには24時間私につながるホットラインをお伝えし、今も続けています。症状のことはもちろん、受診すべきか迷うときに相談してもらえることで、安心して日常を過ごしていただけるのではないかなと感じています。患者さんやご家族の思いを丁寧に取り入れ、その人らしい最期を支えることを大切にしています。
診察はもちろん、採血なども先生が対応されているそうですね。

はい、診察だけでなく採血などの処置も私自身が行っています。これは、24時間対応できるようホットラインを設けていることとも関係しています。急変時にはすぐに動ける体制が必要ですし、診察から処置まで一貫して自分で行うことで、スタッフとの間に伝達の齟齬が生じることなく、スムーズに対応しやすいからです。また、患者さんにとっても「先生が直接やってくれる」という安心感は大きいと思っています。そのため、診察から処置だけでなく、往診まで一人で担うのが当院のスタイルです。もちろん効率だけを優先しているわけではなく、患者さんに不安を抱えず安心して治療を受けてもらえるように、という思いから続けている取り組みでもあります。
「地域医療の交通整理」を担う医師としての決意
院内には「上手な医師のかかり方3箇条」が記されたポスターが掲示されていますが、この意図は?

これは、患者さんが医院に入る時に抱えていた不安を、帰る時には少しでも軽くしてあげたいという私の医療理念を形にしたものなんです。そのために大切だと考えているのが「自分の体は自分で守る」「良い医師を自分で選ぶ」「治療は医師との協同作業である」という3つです。病気のことを丸ごと医師に任せるのではなく、ご自分の体に関心を持ち、信頼できる医師を見つけ、一緒に治療に取り組む。そうした姿勢が、より安心で納得できる医療につながると思っています。その想いを患者さんと共有するために、あえて目に入る場所に掲示しているんです。
「良い医師」とは、具体的にどのような医師だと考えていらっしゃいますか?
私が考える「良い医師」というのは、患者さんの立場に立ち、不安を和らげることができる医師です。そのために大切にしている10の視点があります。例えば、症状を丁寧に聞いているか、手を当てて診察してくれるかどうか、診断や検査の必要性をわかりやすく説明しているか、副作用についても隠さず伝えているかなどです。さらに、質問に気軽に答え、専門外のことは他の医師や病院をきちんと紹介できる姿勢も欠かせません。診断書や証明書といった事務的なことも誠実に対応することが大切だと思います。そして何より、医院に入る時に抱いていた不安が、帰る時には少しでも和らいでいるか。私はこの10の視点を患者さんへの約束として、先ほどご紹介した「上手な医師のかかり方3箇条」同様、院内に掲示しています。
最後に、読者へメッセージをお願いします。

読者の皆さんへお伝えしたいのは「どんな些細なことでも気になるときは遠慮せず相談してほしい」ということです。体のちょっとした不調や「これって受診すべきなのかな」と迷うようなことでも構いません。大切なのは、その不安を一人で抱え込まないことだと思っています。もし私自身で対応できないことがあったとしても、信頼できる医療機関へ紹介し、その方にとってより良い方向へつながるように橋渡しをするのが私の役割です。診療で直接治療を行うだけが医師の仕事ではなく、安心できる道筋を示すことも大切だと考えています。気軽に足を運んでいただき、不安を和らげるきっかけにしてもらえたらうれしいです。

