朝山 康祐 院長の独自取材記事
あさやま内科クリニック
(出雲市/浜山公園北口駅)
最終更新日:2024/06/18

出雲市松寄下町の穏やかな住宅街の一角で2024年5月にリニューアルオープンした「あさやま内科クリニック」。朝山康祐院長は「朝山医院」として地域で長い間続いてきたクリニックの4代目だ。義父である先代院長から継承して院長に就任。金沢医科大学医学部卒業後に島根大学病院や国立病院機構宇多野病院などで脳卒中超急性期治療や物忘れ・脳ドックの外来など神経疾患全般の診療に携わり、2023年には島根大学医学部附属病院高度脳卒中センターの助教を務めた経歴の持ち主だ。日本専門医機構認定内科専門医や日本神経学会神経内科専門医の資格も取得している。地域医療に貢献したいと語る朝山院長の医師になったきっかけや、これからクリニックで取り組みたいことなどをじっくり聞いた。
(取材日2024年4月25日)
33歳の4代目が守る地域の医療
これまでにどのようなご経験を積まれてきたのでしょうか。

2017年に金沢医科大学医学部を卒業後、兼六園の近くにある国立病院機構金沢医療センターで初期研修を受けました。2019年からは島根大学医学部附属病院で脳神経内科を専門に、診療にあたりました。脳神経内科の医師は少なかったので、自分が患者さんの疾患に対して責任を持つことが必要とされ、そのために努力した経験が力になりました。翌年には西日本でも特に神経変性疾患の患者さんが多く通う国立病院機構宇多野病院の脳神経内科で勤務し、たくさんの神経難病の症例を担当しました。先輩の医師たちの診療姿勢や知識から日々学ぶことが多かったですね。その後、島根県立中央病院で神経だけでなく内科全般の疾患を担当しました。大学に戻ってからはその経験をもとに、研究や論文執筆に励みました。そしてこの度、先代院長の後を継いで当院の院長に就任することとなりました。
医師をめざしたきっかけはなんだったのでしょう。
両親が共働きで忙しかったため、祖父母が親の代わりとなって私を育ててくれました。そんな祖父は病気を患っていたので、私もよく通院に同行させてもらっていたんです。祖父の担当医の先生がとても親身になって一生懸命に診療にあたっている様子を近くで見ているうちに、医師への憧れが芽生えました。一番身近に感じていた職業でもあったので、小学校低学年くらいにはいつか医師になりたいという思っていましたね。
内科、脳神経内科を専門に選んだのも、お祖父さまの担当医の影響が大きかったのでしょうか。

そうですね。祖父の担当医のように地域で親しみのあるお医者さんになりたいという夢が原点にあります。そのため、身近に感じる内科の道を自然とめざすようになりました。脳神経内科では、脳卒中や脳梗塞、認知症、手足のしびれ、てんかん、パーキンソン病などのさまざまな疾患を扱います。これらの疾患は急を要するケースもありますが、リハビリテーションや後遺症のケアが長期間にわたって必要な場合もあります。そのため、病気の発症から長い時間をかけて患者さんと向き合っていくことになります。そんなかかりつけ医として患者さんの健康に長い期間寄り添うことができれば、私にとって大きな喜びとなると思います。
健康寿命を伸ばすために早期発見・早期治療に注力
院長就任にあたって注力したい診療についてお聞かせください。

数年前から当院で診療する中で、地域で信頼され続ける医療機関であることが伝わってきました。昔からかかりつけ医として通ってくださる患者さんを、責任を持って変わらずに診療していきたいです。神経内科を専門としてきた経験を生かして自分が地域に貢献できることは何かと考え、診療科目に脳神経内科を追加することにしました。高齢の患者さんに多い認知症やパーキンソン病などはもちろんのこと、若い現役世代の方に向けて頭痛の診療にも注力したいと考えています。私自身も頭痛持ちなのですが、症状が重い場合には仕事に行けなかったり、休日に外出できなかったり、身近な症状ですが日常生活に影響する場合も多い疾患です。片頭痛だと自己判断してしまう方も多いのですが、頭痛がある場合は一度医師の診断を受けてほしいです。適切なアプローチ方法が見つかることもありますし、まれに命に関わる病気が発見されるケースもあります。
これからの意気込みや目標について教えてください。
目標はこの地域の住民の健康寿命を延ばすことです。勤務医時代、脳梗塞で利き手を使えなくなったり、入院して寝たきりになったりとつらい思いをしている患者さんを数多く診てきました。寿命を延ばすことをめざすだけではなく、健康な状態で過ごせる時間をできるだけ長く延ばすための医療が重要だと考えています。一度大きな病気にかかると、大きな病院での長期的な治療が必要になることが多いです。しかし、初期段階で大病の原因となる疾患を発見できれば、当院でも十分に対応可能です。大きな病気になる前に治療を行い、健康を維持することが理想ですね。
大きな病気になる前に対処することが大事なんですね。

病気を早期発見するために検査にも力を入れたいと考えています。例えばAIの技術を活用して認知症の発症リスクを診断するための脳ドックなど、新しいシステムの導入も検討しています。今後8月から内分泌代謝・糖尿病内科領域を専門とする医師も当院で働き始める予定です。糖尿病や高血糖、高血圧症、肥満症などの患者さんの診療にあたります。肥満症は糖尿病や脂質異常症や脂肪肝などのリスクを高め、動脈硬化により狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの重大な疾患の原因にもつながりかねません。この分野は特に健康寿命に関わる診療科だと思うので、注力したいですね。
多世代が通いやすいクリニックをめざしてリニューアル
今回のリニューアルではどのようなことを意識されましたか。

和モダンなデザインを取り入れて、すべての世代に愛される空間をめざしました。カフェのように気軽に足を運びたくなるような雰囲気を意識しました。以前は段差が多くつまずきやすかったので、全体をバリアフリーに。診療室への距離を短縮し、駐車場からクリニックまでの道幅も広げて安全性にも配慮しました。車いすの方が使いやすいよう、広いトイレも設置して、皆さんの安心につなげています。さらに感染症対策として、発熱患者さん専用の待合室を設け、パーティションで区切られたスペースをつくりました。これにより感染症の方もそうでない方も快適に過ごせる環境を整えています。また、オンラインでの予約も開始しました。今後はオンライン診療も視野に入れています。若い現役世代の忙しさから病院に通えない人のニーズにも応えたいです。
今後の展望について教えてください。
地域の医療機関として、健康にまつわるあらゆる不安に一つ一つ応えていきたいと思います。大きな病院だと患者さんが多く、どうしても診療時間は限られますが、クリニックではかかりつけ医としてできる限り、どんな些細に思えることにも対応していきたいです。私は今年で33歳です。県内や中国地方でも、私の世代の開業医は少ないと思います。若さと体力を生かして、新しい分野に挑戦したいと思っています。頭痛の予防にアプローチする体操や日々取り組めるエクササイズなどをSNSで発信したり、外部媒体でコラムを書いたり、講演をしたりと、クリニック以外にアウトリーチする活動も行いたいです。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

健康のことで悩みがあればなんでも相談してください。対応できることは全力でサポートしますし、もしここで診られない疾患だったとしても、他の医療機関に適切におつなぎします。不安があったら行く場所として当院を捉えてもらえたらと思います。ただ脳卒中の疑いがある時はすぐに救急車を呼んでください。もちろん当院にご相談いただいても良いのですが、「FAST」という判断基準があります。FはFACEで顔のまひがある場合。AはARMで腕に力が入らない場合。SはSPEACHでうまく話せない場合。TはTIMEでこれらの違和感が見られたらなるべく早く対応することです。何かが起こる前に気がつけるように、日常的に相談できるクリニックでありたいです。