羽根田 泰宏 院長の独自取材記事
どれみこどもとアレルギーのクリニック
(出雲市/出雲市駅)
最終更新日:2025/09/09

出雲市駅より徒歩10分ほどの場所にある「どれみこどもとアレルギーのクリニック」は、小児科とアレルギーの診療を専門とするクリニックだ。院長の羽根田泰宏先生は島根大学医学部、松江赤十字病院、島根県立中央病院などの小児科で約20年間、小児診療と小児のアレルギー診療に携わってきた人物。2025年5月に、前院長である父・羽根田紀幸先生に加わる形で、同院の院長に就任した。名称・建物ともにリニューアルしたクリニックでは、「患者であるお子さんはもちろん、そのご家族もサポートしていく」を掲げ、さまざまな工夫を凝らした場所となっている。先進の検査設備を整えて質の高い診療を提供し、特に小児アレルギーの専門的な診療に注力している。そんな泰宏院長に、クリニックや診療の特徴について話を聞いた。
(取材日2025年6月19日)
子どもと家族の両方をサポートするクリニックづくり
こちらのクリニックは歴史が長いそうですね。

当院は60年以上にわたって地域医療に貢献してきました。1960年に祖父が開業した「基常小児科」を父が引き継ぎ、その父も高齢になってきたため、今年から私が院長を務めることになりました。患者さんたちにとっては、祖父が開業した場所で継承したほうがわかりやすかったのですが、建物の老朽化と、何よりも駐車場が狭いことが難点だったので、基常小児科から近く、広い駐車場を確保できる場所に名前も新たにクリニックを新設しました。現在の駐車場は33台止められるので、天気の悪い日でも通院しやすくなったと思います。父は現在、当院の副院長に就任して、私とともに2人体制でお子さんたちの診療にあたっています。
クリニックの理念を教えてください。
「患者であるお子さんはもちろん、そのご家族もサポートしていく」というのが当院の理念です。これは、2014年から開業まで勤務していた島根県内の中核病院での経験から痛感したことです。大学病院には重い病気で長期入院しているお子さんたちがたくさんいたのですが、その子たちを支えているご家族や周囲の大人たちがとても苦労されている場合や、子どもを入院させられない事情を抱えるご家族もいらっしゃいました。そんな姿を目にする中で、本質的な課題の解決には、子どもだけではなく、それを支える大人たちのサポートが不可欠だと感じました。そのためには、早い段階で子どもたちと関わる「開業医」として、病気の予防なども含めて親子をサポートするのが重要だと考えていました。
院内にはさまざまな工夫が凝らされていますね。

ご家族の利便性を考えると、感染症患者用と非感染症患者用の2つの入り口を設けることは譲れない条件でした。これにより感染リスクを抑えられるため、普段の受診はもちろん、予防接種や健診も2日前の予約で曜日や時間の制限なくいつでも自由に受けられる体制を整えることができました。また、感染症や発熱症状のある患者さん用に、待合室と診察室を兼ねた個室を7部屋設けました。電子決済なら室内で会計もできるので、受診から診察、会計までを室内で完結できるようにしています。システムは、オンライン予約や電子カルテ、自動精算機などでDX化しています。クリニック全体の設計では、専門家に相談し、お子さんがリラックスして診療・治療に臨める空間になるように、心理的な観点での工夫も随所に取り入れました。
出雲・松江の小児アレルギー治療の基盤をつくる
こちらの小児科診療の特徴を教えてください。

父の代から診療レベルを維持していくことを矜持としています。そのために必要な検査機器をそろえ、科学的に裏づけされた診断を下し、お子さんとご家族に確かな情報を伝えることを心がけています。迅速検査や尿検査、簡易血液検査も実施していますが、一度で15種類の呼吸器の病原体を20分で判定できるPCR検査機器、患者さんの痛みや負担が軽減できるAI搭載インフルエンザ画像診断機器など、診断に有用な新鋭機器も導入しています。また、私自身が島根大学附属病院や島根県立中央病院での勤務経験があり、それらの病院のスタッフと顔が見える関係です。気になる所見があった際に、直接相談できる間柄なのはありがたいですね。他、お薬に関しては、適切なもの・量での処方を心がけています。ただ、お薬が出なくて不安になる親御さんもおられます。その場合には「なぜ薬を飲まなくても良いのか」をご説明することも大切にしています。
特にアレルギーの治療に注力されているそうですね。
日本アレルギー学会アレルギー専門医として食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、気管支ぜんそく、アレルギー性鼻炎など幅広く診療しています。正確な診断を出すために、詳細な問診をもとにした血液検査や、プリックテストという皮膚で行う検査、気管支喘息などの患者さんの肺や気管支を詳細に評価することができる呼吸機能測定装置、一酸化窒素ガス分析装置を導入し、専門的な診療が行える体制を整えています。初診の場合は、問診や検査などで主訴を明確にした上で診察し、例えばスキンケアや部屋の掃除といった日常における指導は専門性の高いスタッフが行っています。患者さんもわからないことを聞きやすく、丁寧な説明を受けられる上に、スタッフの向上心育成にもつながりますからね。
先生は島根県のアレルギー医療の基盤をつくったと伺いました。

島根大学医学部付属病院に赴任した当時、小児科のアレルギー疾患を専門に診る所が少ないなと感じました。しかし、県内にアレルギー疾患のお子さんがいないわけはなく、「これは日本全国の基準に合わせなければならない」と考えて動き始めました。まず、専門的な治療を受けることで日常生活がもっと楽になると伝えるために、年に1回の市民公開講座や、教育機関の管理者に向けた勉強会などの啓発活動を行いました。これらは今も継続しており、ともに今年で10回を超えました。同時にエビデンスの確認や、それに基づく学術活動も怠らないよう気をつけました。他、治療面では、県内で広く食物経口負荷試験を実施できるよう、マニュアル作りや配布など、可能な限り属人的にならない治療環境を整えたつもりです。そうして出雲・松江圏内での小児アレルギー治療のプラットフォームづくりが一段落したところで、開業に踏み切ったという経緯もあります。
高水準の小児医療の維持をめざして
先生はなぜ小児科医をめざしたのですか?

最初に目にした職業が小児科医だったので、医師をめざすこと自体は自然な流れだったと思います。小児医療の道を選んだのは、子どもたちの50年60年先へ影響していく、いわば「未来の治療」という点でやりがいのある仕事だと感じたからです。痛いときには泣くしし、うれしければ喜んでくれる、とても素直でストレートな子どもたちにも魅力を感じました。そこからアレルギー疾患を選んだのは、山口県や愛知県での勤務時代の恩師たちの影響です。アレルギー疾患はわからないことが未だ多くある領域です。見えない世界に対して仮説や推論を立てて証明していくような論理的な分野なので、自分にも何かできるかもしれないという面白さがありました。QOL(生活の質)に大きく関係する領域でもあるため、身近なところで疑問を解決していけるのも魅力の一つです。
読者へのメッセージをお願いします。
健診や予防接種のために通院するのは重要なことで、相談できる医師やスタッフが見つかることもありますし、医療機関そのものになじんでいくことができます。当院には専門知識が豊富で、患者さんとのご縁を大切に考えているスタッフがおります。所要がない時でも気軽に遊びにいらしてくださいね。また私はアレルギー疾患の専門家であると同時に日本小児科学会の小児科専門医であり、副院長は小児循環器や心疾患を専門としていますので、幅広い診療、病院通院中や退院後のサポートにも対応しています。どんなことでもまずはご相談ください。
今後の展望を教えてください。

一つは、小児診療と小児アレルギー診療のレベルを高水準で維持していくこと。もう一つは、島根県内でアレルギー疾患に関わる仲間を増やすことです。当院のスタッフはもちろんですが、外部にもアレルギー診療に詳しい人を増やして、その人からまた次の発信をしていけるようになればと。そうした連鎖の流れをつくることも、自分の努めであると思っています。開業して間もないのでトライアンドエラーを繰り返す日々ですが、各オペレーションをさらに整備し、将来的にはお子さんの急な発熱などにご両親もふくめてサポートする体制を整えることができればと思っています。