野田 雄己 院長の独自取材記事
野田眼科医院
(松江市/松江駅)
最終更新日:2025/06/30

くにびき大橋の通り県道21号線から程近い「野田眼科医院」は2025年7月改装オープンを控え、現在は出張所として松江市東朝日町にて診療を行っている。もともとは野田佐知子理事長が院長として30年間地域の目の健康を守り続けていたが、2025年7月より息子の野田雄己院長が継承し、理事長との二診体制での診療をスタートする。大学卒業後、東西のさまざまな病院で研鑽を積み、特に白内障・硝子体手術の経験が豊富だという野田院長。また、クリニックではなかなか対応が難しいとされる難治性の硝子体疾患の診療ができるのも大きな強みである。「母の想いや方針を引き継ぎながら、自分の方針もそこに加えていきたいと思っています」と語る野田院長に、医師としての経歴、クリニックの特徴、地域医療にかける想いなどを詳しく聞いた。
(取材日2025年6月19日)
丁寧さを優先する白内障・硝子体手術の専門家
医師を志したきっかけを教えてください。

母が眼科医で、島根大学病院や外勤先で勤務していたため、小さいなりに母の働く様子を見ていました。そのため、医師は最も身近な職業でした。母は28歳のとき、再受験して医学部に入り、学生時代に私と兄を出産しながら医師になりました。子ども心に、仕事と家庭の両立が大変そうだなと考えました。子どものとき、医師になりたいと思うようになったのは、医師になり母の手助けをしたいという気持ちも大きかったです。
眼科医を選んだ理由を教えてください。
大阪にある近畿大学医学部を卒業後、研修先の病院は浜田医療センターを選択しました。この病院を選んだ理由は、いずれは地元に帰ろうと考えていたため、島根県の医療がどういう状況なのか知りたかったからです。さまざまな科を回り、特に当時の脳神経外科の先生がとても教育熱心な先生でいらっしゃったので、その影響で脳神経外科に進もうと思っていました。脳神経外科と眼科とどちらの科に進むかは最後まで悩みましたが、自分が野田眼科を継承しなかったら、いずれは閉院することになります。やはり、眼科医として地域の方々に貢献することが自分の役割だと思い眼科医を選択しました。
医師としての経歴を教えてください。

眼科に進むと決めたのなら、あえて厳しい環境に身を置こうと思い、神奈川県の総合新川橋病院に勤務しました。ここは現在の白内障手術の基礎をつくった病院で、全国から患者さんが訪れていました。患者さんの手術に求める期待値は当然高くなるため、当時、眼科医として何もできない自分が、その期待に応えられるようになるまで大変な日々でした。私が総合新川橋病院で教わった白内障手術は、手術の時間が早いとか、ダイナミックというものではありませんでした。患者さんにとってみたら両目合わせても2回しかない手術。とにかく丁寧に、時間は結果的に短くなるというものでした。私の先生はとても患者さんに優しく、患者さんのために涙を流す人でしたが、弟子の私にはとても厳しい先生でした。手術をしているときに、この約束を破ると今でも叱られそうなので、この気持ちを今でも忘れていません。ここで白内障と硝子体手術の基礎を教えていただきました。
その後はどこで勤務されたのですか?
縁があって現在でも非常勤で働いている倉敷成人病センターで勤務する話が持ち上がりました。この病院は、岡野内先生という先生が硝子体手術をしている病院でした。初めて先生の手術を見たとき、まるで自分の家族を手術しているような、そんな丁寧な手術でした。倉敷成人病センターは中四国でも多くの硝子体手術を行っている病院で、そこでさまざまな疾患、難症例を経験させていただきました。特に、分層黄斑円孔や黄斑下血腫、網膜分離症などの黄斑疾患に関しては全国的にも知られていて、これらの手術に関して習熟できたことはとても大きな経験になったと思います。これらの病院での経験を地元の地域医療に生かすことができればと思っています。
母の想いを引き継ぎ、地域医療に貢献する
医院を継承された経緯を教えてください。

以前より母の希望もあり、いつかは地元に戻り医院を継承しようと思っていました。また母からは、網膜硝子体手術を担当してほしいという希望も聞いていました。特に網膜硝子体手術に関しては倉敷成人病センターで研鑽を積み、2025年7月の医院リニューアルのタイミングで島根に戻り院長を継承することとなりました。私は当院を継承する立場なので、自分の方針を通すよりは、母の想いや方針を引き継ぎながら、自分の方針もそこに加えるという考え方でいきたいと思っています。
貴院で行っている眼科診療について教えてください。
当院は、白内障・硝子体手術に特化したクリニックをめざしています。当院はクリニックではあまり行うことのない黄斑下血腫移動術や増殖糖尿病網膜症、増殖硝子体網膜症なども治療ができる体制を整えています。全身麻酔の設備も備えており、例えば術中に安静を保つことが困難な認知症の患者さんの手術も対応できるようになります。地元の患者さんの目の健康を守る頼れる眼科の選択枝の一つとなればうれしいです。
院長になられて変更される点はありますか?

診療日は以前と変わらず、月曜から土曜まで、午前と午後に診療しています。なお、水曜と土曜の午後は手術になります。予約制ではなく、来院順での診察ですが、視野検査や斜視・弱視検査、色覚検査を希望される方は予約が必要になります。体制は医師が私と母の2人、視能訓練士3人、看護師5人、受付4人で、看護師はさらに3人増やす予定です。母が担当している小児眼科については縮小していくことになりますが、すでに通院している患者さんが通えなくなくなると困りますので、検査など私ができる部分は担当していくつもりです。
先進の機器を備え、難しい手術にも対応する
クリニックの中でこだわっている点を教えてください。

設備は、白内障手術時の乱視矯正を精密にするためデジタル表示される機器など、先端の物を導入しています。また、近々先端の白内障・硝子体手術装置も導入を予定しています。この機器は今後どんどん世界中で広く導入されていく装置だと思っています。建物はバリアフリーにし、患者さんがリラックスできるように、木を多く使っています。手術室もできるだけ広い空間で、木の素材で囲いました。手術はすべて日帰りなので、リカバリールームが3室とラウンジがあります。ゆっくり休憩していただければと思います。さらに、山陰地方は冬になるととても寒くなり、患者さんもスタッフも足元がとても冷えている状態でした。そのため、全フロアを床暖房にするところにはとてもこだわりました。診察のときも、待ち時間の間も暖かい空間を提供できればと思います。
眼科領域のことで知ってもらいたいことはありますか?
糖尿病と目の疾患は密接に結びついています。血糖値が下がると安心しますが、血糖値が高かった影響は目に出てしまうんです。目がかすむ、視力が低下するなどの症状が出た場合は、糖尿病網膜症の恐れがあります。これは進行すると、飛蚊症と言われる糸くずや蚊のようなものが見えたり、墨がかかったように視野の一部分が暗くなったり、視野が狭くなったりという症状が現れます。さらに悪化すると、最悪の場合は、失明することもあります。「見えづらくなったな」と感じたときはかなり進行している可能性が高いため、糖尿病の人は、半年に1度、最低でも1年に1度は目の検査をしてほしいですね。進行してからでは取り返しがつかなくなることもあります。
今度の展望と読者へのメッセージをお願いします。

現在、硝子体手術に使用する器具や新たな術式の開発に取り組んでいます。今後は、それらが全国の眼科医の先生方の一助になるように努めていくつもりです。そうした試みを通じて、眼科医療に少しで貢献できればと考えています。最後になりますが、当院は、患者さんのお気持ちに寄り添った、きめ細かな診療を心がけています。目に関するお悩みや不安がございましたら、どんなに些細なことでもご相談ください。