吉岡 潤 院長の独自取材記事
吉岡レディースクリニック
(有田郡有田川町/藤並駅)
最終更新日:2021/10/12

きのくに線藤並駅から車で5分。天満川に架かる西三田橋の目前にある3階建ての大きな建物が、「吉岡レディースクリニック」だ。大きなシンボルツリーと季節の花々に迎えられて院内に入ると、ピンクをアクセントにした清潔感のある居心地の良い空間が広がっている。日本産科婦人科学会産婦人科専門医の吉岡潤先生が院長を務める同院は、婦人科を中心に、女性に寄り添った漢方を用いた診療、更年期障害、不妊治療、泌尿器科の疾患、子宮頸がん・子宮体がん検査、乳がん検査など幅広く対応し、あらゆる年代の女性の心と体の健康を支えている。穏やかで気さくな人柄が魅力の吉岡院長に、クリニックの特徴や医師不足が深刻な問題となっている有田地区の産科医療に対する思いなどを語ってもらった。
(取材日2021年5月27日)
漢方薬を併用し、女性特有の不快な症状にアプローチ
まず始めに、先生が産婦人科の医師をめざした理由を教えていただけますか?

私の父が有田市箕島で産婦人科を開業していたので、子どもの頃から将来は父の後を継ごうと思っていました。父は産婦人科だけでなく小児科の診療も行っていたのですが、夜中であろうと朝早くであろうと、患者さんから電話がかかってきたらいつでも必ず対応していました。そのような父の姿を子どもながらに尊敬していましたので、自分も最初から父のように産婦人科の医師になろうと決めていました。もともとは父の開業した病院を継ぐつもりでいたのですが、私が東京の大学から戻って来た頃には、箕島は過疎が進んで若い人がいなくなってしまい、産科のニーズもありませんでした。それで現在の場所で開業することになったのです。
こちらのクリニックでは漢方診療も行っているそうですね。
更年期障害、生理不順、生理痛、不妊症など、漢方は女性の疾患に使われるものがたくさんあります。その中でも三大処方と言われるのが、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、加味逍遙散(かみしょうようさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)です。この3つの漢方だけでも、いろいろな疾患に対応できるんですよ。漢方診療といっても、筋腫などの病気が隠れていないかを確認するために、まずは内診と問診を行います。その結果問題がなければ、気になる症状に合わせて漢方を処方していきます。ただし、生理痛などで来院してきた10代のお子さんなどの場合には、内診は行わずに丁寧に話を聞いた上で処方をすることもあります。気になる症状がある方は気軽に相談に来ていただけたらと思います。
漢方の副作用についてはいかがでしょうか。

漢方は一般的に西洋薬と比べて副作用は少ないと思います。花粉症やアレルギーなどで普段から西洋薬を飲んでいる方にも、漢方は処方が可能です。とはいえ、長期にわたって使い続けたことから、肝機能が低下してしまうことを避けるために、当院では半年に1回は血液検査を行って数値をチェックし、処方を続けるのかいったん中止するのかを判断していきます。
子宮頸がん検査に注力し、早期発見・早期治療をめざす
更年期専門の外来にはどのような主訴の方が多いですか?

冷え性や頭痛、めまいのほかに、イライラや気持ちの落ち込みといった症状を訴えて来院される方が多いですね。このような症状に対しては、漢方を処方することもあります。また、更年期障害の代表的な症状の一つに、突然汗が吹き出てきたり、急に顔が熱くなったりする「ホットフラッシュ」という症状があるのですが、これは女性ホルモンの減少が原因ですので、症状を和らげるために女性ホルモンの補充を行います。
先生は子宮頸がんの検診呼びかけにも力を入れていると伺いました。
子宮頸がんというのは、早期に発見して早い段階で治療を行うことができれば、治療の期待値が高いです。しかも、子宮体がんは一般的な診療ではなかなか見つけにくいのに対して、子宮頸がんは診療で引っかかりやすいため、より詳しい検査に早い段階でつなげることができます。1年に1回、最低でも2年に1回検診を幅広い年齢の方にぜひ受けていただきたいなと思います。検査の結果、より詳しい検査や治療が必要な場合には、和歌山県立医科大学附属病院や日本赤十字社和歌山医療センター、ひだか病院など、近隣の大きな病院にご紹介をしています。また、子宮体がんについては、60代、70代で発病されることが多い病気です。閉経後にがんになることを意外に思う方も多いのですが、不正出血などいつもと違う異常が見られた場合には、できるだけ早く詳しい検査を受けることをお勧めします。
ピルのニーズも高いそうですね。

中学生から50代くらいまでの方に必要に応じて処方しています。以前はピルというと避妊目的が主流でしたが、今ニーズが高いのは、生理不順を伴う月経困難症などの病気を治療するための保険適用のピルです。生理痛が重い、経血量が多い、排卵痛が強いなどの理由から、生理のたびに体調不良に悩まれている方は少なくないと思います。そういった方がピルを服用すると、生理痛の軽減や経血量の減少、排卵痛が起こらなくなることなどが期待できます。上手に活用すればこれまでの苦しみから解放されて快適に過ごせるようになる可能性があるわけです。ただしピルには副作用があり、喫煙によって血栓のリスクが高まるため、当院ではヘビースモーカーの方には処方をしておりません。いずれにせよ、生理に伴う症状でお悩みの方は、ぜひ一度婦人科にご相談されてみてはいかがでしょうか。
産科不足解消のためにできることを探していく
有田地区では産科が少ないと聞きました。

当院も2009年まではお産に対応していたのですが、現在は妊婦検診のみを行い、分娩については総合病院をご紹介しています。有田川町の周辺では、産科不足でお産する場所に苦労されている方が多いことが深刻な問題になっていて、私のところにも何とか産科を再開してくれないかという話もあったのですが、年齢的にも体力的にも私一人で対応するにはかなり難しいというのが正直なところです。とはいえ、安心してお産できる場所がないというのは地域にとっても大変な問題ですので、例えば、開業したいという考えのある産科の先生がいるなら、当院の設備を使っていただくということも含めて、誘致にも力を入れたいという思いはあります。私でお役に立てることがあれば、喜んでお手伝いしていきたいですね。
お忙しい毎日だと思いますが、休日はどのようにお過ごしですか?

釣りが好きなので、休日には海に出かけることが多いですね。釣りの中でも一本釣りが好きで、印南から船に乗って出かけるんですよ。夏の暑い日には夜釣りで太刀魚を釣りに行くこともあります。今の時期だと朝の3時半頃に起きて、昼頃まで釣りをして帰ってくるという感じですね。釣った魚は妻が料理してくれるんですが、とてもおいしいんですよ。以前、84センチの大きな真鯛を釣ったことがあって、その時にはうれしくて魚拓を取りました(笑)。それから、釣り以外の趣味では山登りも好きですね。これまでに白馬や富士山などを登ったことがあって、去年は燕岳にも登りました。登山は妻と一緒に行くのですが、彼女のほうが私よりもずっと健脚ですね(笑)。
最後に、今後の展望についてお聞かせいただけますか?
これからも自分自身の健康に気を使って、長く地域のお役に立てたらと思います。新しい知識や技術もしっかりとアップデートしながら、自分で限界を決めずにいろいろなことに挑戦していきたいと思います。また、有田地区で安全なお産ができるようにするために、私自身にどのようなサポートができるのかも考えていきたいですね。当院には分娩・入院ができる産科の設備も整っていますので、それを活用していただくことも含めて、産科の医師の誘致にも力を入れていきたいですね。