西岡 久之 院長の独自取材記事
西岡医院
(橿原市/大和八木駅)
最終更新日:2024/05/29

近鉄大阪線・大和八木駅より徒歩約5分の場所にある「西岡医院」。父の医院を継承した西岡久之院長が「医療機関らしくない外観にしたい」とこだわった、緑の屋根が印象的だ。幼少期から体が弱く、周囲に助けられてきた恩を返したいと医師の道を志した西岡院長。自身の医院を選んで来てくれた患者の思いに応えることが義務だと考え、とことん寄り添った診療を心がけている。また、同院での診療の傍ら、県外の病院でも勤務を続け、学んだことを患者に還元する。「人の笑顔を見るのが好き」とほほ笑む西岡院長に、医院継承の経緯や地域への思いを聞いた。
(取材日2024年3月26日)
助けられた恩返しと、果たすべき医師の務めを胸に
お父さまから継承した医院だとお聞きしました。まずは、院内のこだわりを教えてください。

もともとは、現在の場所から少し歩いたところで父が開業していて、継承を視野に入れて私も医院を手伝っていました。昭和からある古い医院で、待合室はすべて畳でした。冬には真ん中に火鉢が置いてあったんです。その雰囲気が好評だったので、1995年にここに移転した際には待合室を広く取り、一角を畳を敷いたスペースにしました。天井を高くして、弧を描くような形状にしているので、開放感もあります。中庭を眺めながら、落ち着いてゆっくりと過ごしていただける待合室がこだわりですね。また、この辺りは大和三山の景観を守るための条例があるので、主張の強い看板などは設置できません。そのため風景になじむ緑をメインカラーに、医療機関らしくない外観を選びました。
医師のお父さまの姿を見て、自然と同じ道に進むことを決められたのでしょうか。
父の背中を見て育ったことは大きいですが、もっと前から医師になる夢を持っていたと思います。実は、私が生まれた時は大変なお産だったそうで、そのために幼少期も病気がちだったんです。父からは「たくさんの人の助けを受けて今ここにいるのだから、その助けを今度は人に返さなければいけない」と言い聞かされて育ちました。父の言葉の影響ももちろんありますが、自分自身、恵まれた環境に生まれたと感じていたので、その分の恩返しをしていきたいという思いは、子どもの頃から強くありましたね。また大学では、「たくさん医療機関がある中で、なぜここを選んで来てくれているのか考え、患者さんを優しく迎え入れることが医師の務めだ」と教え込まれました。この考えが35年以上、私の診療の軸になっていますね。
お父さまや大学時代の教えから強い軸がつくられた一方で、めざす姿は「気さくな医師」だとお聞きしました。

そうですね。その原点は小学校の時の担任の先生にあると思います。今よりもっと考え方が古かった時代に、その先生は「どんな人も、生まれてくる時は裸。それから育つ環境によって違う姿になったとしても、生まれた時は全員一緒で平等だ」と話してくれて、それが人と接する時の意識の土台になっていますね。特に医師は、偉い人だと思われがちですが、街で患者さんと会った時には、私も普通の人間です。医院を一歩出れば特別な治療はできませんから、「先生」と呼ばれても何となく違和感があるんです。気軽に声をかけていただけるような気さくな医師をめざしているので、診察でも緊張せず、ちょっとしたお悩みもどんどんご相談いただきたいですね。
人の笑顔を見ることが好きな院長が患者とともに歩む
「気さく」と関連するところもありますが、診療で心がけていることを教えてください。

大切にしているのは、治療の背景をしっかり説明することです。短い診療時間の中で一方的に薬を渡すだけでは、飲むのが面倒になったり、つい忘れたりする方もいらっしゃいます。今の体はどんな状態なのか、そのために処方する薬はどんなものか、わかりやすい言葉で説明し、納得してもらえるように心がけています。大学では「治療は患者さんとともに歩むものだ」とも学びました。どれだけ腕のいい医師がいて、上から目線で指示を出しても、患者さんの治療を継続したい、治したいという意欲につながらなければ駄目だと。説明を丁寧に伝えることや、何でも相談してもらえる雰囲気をつくることで、患者さんとともに回復をめざせる医院でありたいですね。
ともに歩む、すてきな言葉ですね。診療スタイルにも表れているのでしょうか。
そうですね。物心ついたときからずっと、人の笑顔を見ることが大好きなんです。しんみりした雰囲気が苦手なので、痛い、つらい、悩んでいるという患者さんを前にすると、どうにか笑ってほしいとパフォーマンスしたくなります。私が駄じゃれや冗談を言うことで、少しでも気持ちが和んでくれたらという思いです。そんなこといいから早く治療してくれとおっしゃる方もいますが、自分の体に不安を感じている人には、できる限り笑顔になってもらえるよう寄り添っていきたいですね。
内科と皮膚科を標榜されていますが、どんな患者さんが多いですか。

父が院長をしていた頃からの患者さんが多いです。父は皮膚科を専門にしていたので「あそこに行くと皮膚をしっかり診てもらえる」と認識していただいているようです。ただ、そのイメージが先行し、私が長年携わってきた内科の分野も診療していると知らない方が多いのが課題です。皮膚科と内科は関わりが深く、例えば血液の流れが悪くなると皮膚の症状が現れることがよくあります。赤みや発疹が出たからと医療機関を受診して検査してみると、実は内科の病気が隠れているケースも往々にしてあるんです。皮膚の症状はもちろん、風邪かな、熱っぽいなといった内科的な症状でも、気兼ねなく足を運んでいただければと思います。
地域のかかりつけ医として頼られる医院になるために
医院運営の傍らで、三重県の病院でも勤務されていますが、相互のつながりやメリットなどを教えてください。

父が亡くなり、完全に当院を引き継ぐことになったのが2013年です。三重県内の病院にはそれ以前から勤務していて、長い間お世話になっています。精神科の病院なので扱う症状が違いますが、当院の診療での「その症状の背景には精神的なものが関わっているのかもしれない」という見立てにもつなげられます。知識の幅が広がったり別の視点を持てたりと、その病院で勉強させてもらっていることが、こちらでの診療にも生かせていますね。先ほどお話ししたように、父の皮膚科のイメージが根づいているので、薬を塗って皮膚の回復につながれば当院での治療は終わり、内科的な症状はまた別の医院を探さなければと思っている患者さんが多い印象です。もちろんより精密な検査や治療が必要な場合は適切に紹介しますが、これまでの経験と知識を生かして総合的な診断につなげますので、皮膚科、内科とこだわらず、「地域のかかりつけ医」として何でもご相談ください。
ところで、好きな物や趣味などは何ですか。
もともとはまったく興味がなかったのですが、バラが好きな妻の影響で、庭いじりをするようになりました。当院の中庭や自宅の庭も、私が手入れしています。また、蒸気機関車やF1カーなど、「人と機械の戦い」を感じるものに惹かれますね。配分を考えながら操作しないと進まない機械を、調整して思ったとおりに走らせる。特にF1レースは時速300キロメートルを超えるスピードの中、次の一手を即時に判断しなければいけません。そこにロマンを感じますし、瞬時に正しい判断をしなければいけないという状況は、医師の仕事にも通ずるものがあると思います。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

地域のかかりつけ医として、もっと頑張っていきたいと思っています。この周辺は他府県へのアクセスも良く、駅前にどんどんと医療機関が増えていく中で、当院を選んで来ていただいた人にはきっと理由があるはずです。その思いにしっかりと応えられるよう、聞き取りや治療内容の説明を丁寧に行い、患者さんとともに歩む診療を大切にしています。初めての方も大歓迎なので、気軽にお越しください。