西脇 知永 院長の独自取材記事
西脇内科医院
(奈良市/高の原駅)
最終更新日:2025/11/05
奈良市内の北部、庭つき戸建てが多い閑静な住宅街にある「西脇内科医院」。30年以上も続いた江崎内科外科医院を、2021年に西脇知永(ともひさ)院長が継承し、開院した。モダンな建物は年月を感じさせず、一面ガラス張りの入り口や待合室は明るく開放的だ。西脇院長は、大学時代に神経に興味を持ったことから脳神経内科の道へ進み、中でも特に認知症を専門としている。同時に、認知症の治療には全身のトータルケアも必要だと感じ、内科も診療。市販薬で済ませがちな頭痛の治療にも注力し、若年層へ検査の必要性を呼びかけるなど、幅広く地域貢献をめざす。脳神経内科という専門性の高い分野の医師でありながら、気さくで親しみやすい印象の西脇院長に、開院の経緯や認知症・頭痛の治療などについて聞いた。
(取材日2025年10月3日)
難病治療に長く携わってきた経験を生かしたい
院長が医師をめざされたきっかけは何ですか?

特別なエピソードは何もないのですけれどね(笑)。もともと家系的に医療系にはなじみがあったんです。実際に医学部の受験を決めたのは高校3年生の時で、高校が進学校だったこともあり医学部をめざす同級生が多かったので「じゃあ自分も」という具合でしたね。それで、家が香芝市だったこともあり、近くの奈良県立医科大学に進学しました。
その中で、脳神経内科に進まれた理由をお伺いできますか。
大学で学んでいる中で神経について興味を持ちまして、そこから脳神経外科、脳神経内科、精神科、あとは現場的には循環器内科などが選択肢としてありました。その中で、いろいろなことを考えた結果、脳神経内科に決めましたね。特に認知症を専門としています。難病や治療方法が確立されていない病気は、手術して終わりというものではなく長い付き合いになりますし、患者さんと関係性を構築していく必要もありますので、そういったところにもたいへんやりがいを感じます。これは余談で若い頃の体験なのですが、ギラン・バレー症候群という四肢のしびれや運動機能に障害が出る神経内科特有の難しい病気の治療の様子を目の当たりにした時は、感動しましたし衝撃的でしたね。思っていた分野とは少し違うのだと思いました。難病のイメージが変わった出来事でしたよ。
開院までの経緯について教えてください。

ここはもともと、江崎友通(ともみち)先生が30年以上も診療されてきた江崎内科外科医院で、それを継承する形で2021年に開院しました。開院の経緯としては、大学卒業後、奈良県内の病院に3つほど勤務した後、鹿児島の荘記念病院に移り、そこは基本的に精神科の病院なのですが、認知症専門の外来の立ち上げや認知疾患医療センターの設立に関わらせていただくことになったのですね。その際、医師としての診療や治療だけでなく、マネジメントや経営についても勉強することができました。いずれは奈良に帰りたい気持ちもあったのと、江崎先生が継承者を探されているタイミングも重なり、パーキンソン病など難病治療にも長く携わってきた経験を生かしたい思いで開院に至りました。
認知症だけでなく頭痛の治療にも注力
来院される患者さんはどういった方が多いのですか?

クリニックを引き継ぐ際、江崎先生の診療を週4回や午前中だけにするなどだんだん減らす形にしたので、そのまま引き継いでいる患者さんも半分くらいはいらっしゃいます。あとは、認知症を専門にずっとやってきているので、そういった患者さんも多いですね。それと、認知症の方というのは脳神経内科だけではなくて、全身をトータルでケアするということでは内科になりますので、その必要性から日本内科学会総合内科専門医の資格も取得しています。脳神経内科と内科を診療していますので、お子さんを診ることもありますし、生活習慣病の方も数多く来院されますね。
ご専門である認知症の診断や治療について詳しくお聞かせください。
当院は認知症全般に対応していますが、頭部MRIは置いていないので、それだけは提携している病院に撮りに行っていただくのですが、採血や認知テストなどほぼここで完結して早期診断に努めています。それで例えば、初期段階だったら症状を抑えるための薬などを処方し、日常生活が送れるレベルを保つことをめざします。それと、本来大きな病院でしか導入できない新しい点滴薬があるのですが、大学病院からの指示があれば当院で治療することができます。これはもっと適応範囲が増えていき、さらに開発もされていくと思います。あとは介護サービスやご家族の関わり方なども重要になるので、長い経験からそういったアドバイスを行えるのは当院の強みかもしれません。
頭痛の治療にも注力されているのですよね。

頭痛は、特に若い世代は、市販薬で済ませることが多いですよね。市販薬を多用していると効果が見込めなくなってくるケースがあるんです。頭痛を繰り返す場合は一度受診して、片頭痛であれば今は注射薬や新しいタイプの治療薬も出てきているので、ちゃんと治療すれば日常生活に支障がないレベルにはコントロールがめざせると思いますよ。本当にまれなことですけれど、怖いものでは脳腫瘍ということもありますので、1回は脳の画像検査を受けることをお勧めします。市販薬でごまかしているつもりでいるのは少々危険ですね。
「ともに歩んでいく」という気持ちで患者と向き合う
診療時に心がけていることはなんでしょうか?

できるだけ声を拾っていくというか、ちょっとした言葉に気づけるどうかという、診療での気づきを大事にしていますね。それがなければ誰でもできる流れ作業になり、今やAIができるような時代になってきていますので、ちょっとした変化やいつもと違うなというところを探すようにしています。脳神経内科の分野は薬だけ、手術して終わり、というわけにはいかないことも多いです。難病や治りにくい病気と言われているものに対しては誠心誠意接していくことで、こちらの気持ちも伝わっていき、患者さんにも喜んでもらえているのではないかと考えています。また、パーキンソン病などの難病の場合は、公費や障害者手帳など福祉関係の手続きや介護サービスの準備など複雑な面も多く、病気だけではなくそのご家族のケアも必要だと思います。「ともに歩んでいく」ということを心がけていますね。
休日の過ごし方や趣味をお話いただけますか。
休みの日は子どもと遊ぶかプロ野球観戦が多いですね。中学、高校、大学と野球部だったんですが、野球部の仲間と試合を観に行ったりもします。断然阪神ファンです。でも今は野球をすることはなく、健康のためにはもっぱらゴルフです。ゴルフもやはり野球部の仲間とですね。大学の野球部のつながりはとても貴重で、いろいろな診療科に散らばっているので、先輩後輩誰かを探せば大きい病院を紹介できたり相談できたりするんです。将来的にも医療の連携は大事になると思いますので大事なネットワークですね。何より、学生時代の仲間とは損得なしで付き合えるのがいいですね。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

ご高齢になると施設に入居される方もいますし、どうしても家で最後までという方もいます。この地域の方に関しては、できるだけ自宅でも看取れるようなホームドクターの拠点として、当院を頼りにしてもらえるようになるといいなと思っています。患者さんの希望に合わせ、大きな病院に行きたいという方は連携を取るようにしますし、取りあえず相談したい、という場合にも頼りにしてもらえる場所にしたいですね。分野は脳神経だけではなく、お子さんも診ますし、老若男女問わず全身の健康について相談していただけたらと思います。高齢者に関しては、最期まで診てあげられる体制を作るというのが目標です。地域の方から「西脇内科医院で診てもらえば安心」と信頼される医師でありたいですね。

