小黒 亮輔 院長の独自取材記事
浜田クリニック
(奈良市/学園前駅)
最終更新日:2026/01/14
近鉄奈良線・学園前駅より徒歩5分。地域に長く親しまれてきた「浜田クリニック」は、2025年11月に小黒亮輔(おぐろ・りょうすけ)院長を迎え、新たな体制で地域医療を支えるべく新たなスタートを切った。老年内科や総合診療部門で研鑽を積み、「人全体を診る医療」を信条とする小黒院長のもと、原因のはっきりしない不調や加齢に伴う心身の変化にも丁寧に向き合う診療が特徴だ。「この症状は当院では診ない、とは言わないようにしています」と語るとおり、多診療科を横断しながら患者一人ひとりの生活背景に寄り添う姿勢も同院の特色。今回は小黒院長に、診療スタイルや地域医療への思いについて話を聞いた。
(取材日2025年12月26日)
心身の不調や悩みをトータルで診る
まずは院長就任の経緯から聞かせてください。

当院は開院以来、地域の皆さんのかかりつけ医として診療を続けているクリニックです。一方、私は大阪大学医学部を卒業後、神経内科の分野を学び、その後は同大学医学部附属病院や関連病院で研鑽を積みました。同時に大学院に進み、老年医学や総合診療についても学びました。多くの方の診療をする中で「自分は一つの専門分野を突き詰めていくよりも、一人の人にじっくり向き合っていく医師になりたいな」と思ったからです。その思いは、直近で10年間勤めた病院で外来・入院・訪問診療を通して大きく育っていきました。そんな時、大学の同期である当院の理事長から「クリニックの院長をやってみない?」と誘われたのです。クリニックなら病院よりももっと患者さんの生活の近くで診療ができます。「思い描いていた診療をするにはここしかない」と、院長を引き受ける決意をしました。
クリニックの特徴を聞かせてください。
神経疾患に精通した総合診療医として、患者さんの心身の不調を幅広く診ています。総合診療はわかりやすくいうと、患者さんが抱える心身の不調や悩みをトータルで診る分野です。初期診断から専門の医師への連携、在宅医療まで、患者さんの既往歴や生活背景、家族や地域全体を視野に入れながらサポートしていきます。当院には、循環器内科、糖尿病内分泌内科、神経内科、消化器内科、眼科を専門とする医師が在籍していますが、まずは私が初期診療を行うケースが多いですね。患者さんは高齢の方が多いですが、近隣にお住まいの方や仕事帰りの方なども足を運んでくださいます。「こんなことで相談していいのかな?」と思う必要はありません。どなたでも気軽に相談に来てくれたらうれしいです。
診療で心がけていることはありますか?

患者さんの話をしっかりと聞いて、納得と理解を得られるように説明することですね。誰もが病気になりたいわけではないし、治療や服薬をしなくて済むならそのほうがいいでしょう。しかし、不調や病気をそのままにしてしまうと、将来的により重い病気や生活の質の低下につながることもあります。ですから、なぜ治療が必要なのか、治療を行わなかった場合にどのようなリスクがあるのかを、具体的にイメージしてもらえるように話をしています。生活習慣病など自覚症状が少ない病気の場合、治療をしなかった場合のリスクをどこまでイメージできるかによって治療への向き合い方が変わります。性格も生活背景も一人ひとり違いますから、その人らしい治療ができるように考えています。
年齢を重ねることで起こる多様な不調にも対応
具体的にはどのようなお話をされているのですか?

例えば、「長生きなんかしなくていい」とおっしゃる患者さんは少なくありません。ただ、その言葉の裏にある「自分の最期のイメージ」は、現実にはなかなか実現が難しいことが多いのです。最期の日まで元気に過ごし、眠るように亡くなるのであれば、確かに積極的な治療をしない選択も一つでしょう。しかし、そうした経過をたどれる方はごくわずかです。例えば高血圧を放置すれば脳卒中を起こし、半身不随や認知症につながることもあります。そうなれば「最期まで自宅で穏やかに」という希望はかないにくくなります。だからこそ、患者さんが思い描く将来の姿に近づくためには、今どの不調に向き合い、何を予防すべきなのかを一緒に考えていきましょうとお話ししています。
年齢を重ねることで起きる不調についても、積極的に相談を受けているそうですね。
年齢を重ねれば、誰もが何らかの不調や衰えを自覚するものだと思います。その中で、特定の病名には当てはまらない多様な不調を総称したものを「老年症候群」といいます。転びやすくなった、物忘れが増えた、疲れやすい、食事がしにくいなどの変化はある意味仕方がないことなのかもしれません。しかし、それらすべてが「年のせい」で片づけられるわけではなく、治療や工夫によって改善がめざせるもの、進行の抑制が見込めるものも多く含まれています。高齢になると、転びやすくなったことをきっかけに外出を控え、その結果筋力が低下し、刺激の少ない生活によって認知機能が衰え、食欲低下や便秘へとつながるなど、不調が連鎖していきます。そうした悪循環を防ぐためにも、年齢を理由に諦める前に、一度きちんと状態を確認することが大切だと考えています。
不調の連鎖を止めるためには、どうすれば良いのでしょうか?

まず、かかりつけ医に相談してみることです。気になる症状があれば我慢せずに受診し、必要に応じて検査や専門家の診察を受けましょう。原因となっている疾患が見つかれば、適切な治療を受けることができますし、不調が改善すれば再び前向きに生活を楽しめるきっかけになるかもしれません。また、医療だけでなく社会的なつながりを保つことも重要です。人は一人では生きていけない社会的な生き物です。家族や周囲の人が声をかけ、会話や食事をともにしたり、外出や趣味を支えたりすることが、心身の健康維持につながります。薬や手術だけが病気を治すのではありません。医療と生活環境の両面から支えることが、不調の連鎖を断ち切る第一歩になります。
住み慣れた場所で暮らし続けるためのサポートを
かかりつけ医の存在も、健康に過ごすためのポイントになりそうですね。

現在の医療は高度に専門分化が進み、より専門的な治療が受けられるようになった一方で、一人の患者さんが複数の診療科を受診しているケースも少なくありません。すべての診療がうまく連携していれば問題はありませんが、実際には情報が分断されてしまい、治療方針がちぐはぐになったり、薬が増えすぎてしまったりすることもあります。そうした状況を整理し、全体を俯瞰して支える役割を担うのが、かかりつけ医だと考えています。私は皆さんのかかりつけ医でありたいと思っていますので、当院を受診くださる患者さんには「なんでも相談してね」と繰り返し伝えています。「薬ってこんなにたくさん必要なの?」といった些細な相談でも、全然構わないんですよ。
今後は訪問診療にも注力されるそうですね。
一人の人の健康に関わり続けるためには、外来診療だけでは限界があります。年齢や病状の変化によって通院が難しくなる方も少なくありませんから、そんな時にはこちらから患者さんがいる場所へ出向く訪問診療が重要になると思います。自宅という普段の環境で診ることで、その人らしい生活や家族の状況も含めて把握でき、より現実的で無理のない医療を提供するヒントにもなります。当院の周りには坂道も多く、外出自体が大きな負担になる方もいらっしゃると思います。そんな声にできる範囲で応えていきますので、どうぞ遠慮なくご相談ください。「通えなくなったから終わり」ではなく、「通えなくなった後」のことも一緒に考えていきます。
最後に、今後の展望や地域の皆さんへのメッセージをお願いします。

現在私は、診療の傍ら、より多くの総合診療を行う医師の教育に携わっています。人を総合的に診られる医師を育てることは、地域医療の未来をつくることにつながると考えていますし、その過程は自分自身を律し、成長させてくれるものでもあります。良い医師が増えれば、その力は必ず地域へ還元されますので、続けていきたいですね。地域の皆さんには、とにかくなんでも相談してほしいと改めてお伝えしたいです。これまで誰にも相談できなかったこと、相談したけれど解決しなかったことでも構いません。当院ではお薬を出すだけでなく、生活背景や社会的な状況も踏まえたアドバイスを行い、皆さんの暮らしに寄り添っていきます。これからも地域の身近な相談窓口として、皆さんが安心して年齢を重ね、住み慣れた場所で自分らしく暮らし続けられるよう、長く伴走していきたいです。

