田中 寛樹 院長、田中 真一郎 名誉院長 の独自取材記事
田中整形外科クリニック
(西宮市/苦楽園口駅)
最終更新日:2024/06/12

阪急甲陽線苦楽園口駅からすぐの場所にある「田中整形外科クリニック」。名誉院長である田中真一郎先生が、1994年に開業した、長年地域に密着したクリニックだ。2023年から田中真一郎先生とともに診療にあたっていた田中寛樹先生が、2024年4月に同院を継承。手足のしびれ・神経痛・肩凝り・椎間板ヘルニア・腰や膝の痛み・五十肩などの一般的な整形外科診療から、寛樹院長の専門である手の外科診療まで幅広く対応する。診察室、エックス線検査室、リハビリテーション室、さらにMRI検査室までをワンフロアにそろえ、一度に診断と治療ができる環境が整うのも同院の特長だ。「めざすのは街のお巡りさんのようになんでも相談できるクリニック」と話す両先生に、その診療姿勢や今後の展望についてじっくりと話を聞いた。
(取材日2024年4月5日)
整形外科疾患に広く対応。骨粗しょう症の予防にも注力
4月に院長を継承され、今の意気込みを教えてください。

【寛樹院長】医院とともに「何でも聞ける街のお巡りさんのようなクリニック」というポリシーも継承し、患者さんとしっかり対話をしながら幅広い整形外科疾患に対応していきたいと考えています。また、予防医療にも力を入れていきます。中でも骨粗しょう症の予防ですね。骨粗しょう症は、沈黙の疾患とも呼ばれ無症状のまま病状が進行し、いつの間にか骨折していることもあります。健康診断で骨密度の項目が要検査に該当して当院を受診される方も多いのですが、その時には数値がだいぶ落ちている可能性も考えられます。一度落ちた骨密度の数値を元に戻すのは難しいので、そうなる前に定期的に検査に来ていただけるよう、幅広い年齢層に積極的に骨粗しょう症の知識を伝えていきたいですね。具体的には、当院のリハビリテーション室で骨粗しょう症に関する市民公開講座などを開ければと考えています。
こちらではどんな症状で来られる方が多いのでしょうか?
【寛樹院長】背中、首や肩甲骨、肩や膝、腰などの痛みなどの幅広い症状のある方が受診されます。「肩が上がらない」「腰が痛い」「膝が曲がらない」とお悩みの方はぜひご相談いただければと思います。また、私は肩から指先までを含む手の外科が専門で、大学院では末梢神経の再生に関する研究をしていたので、神経分野における手のしびれや痛みの治療も得意です。当院に来られるのは年配の方が多いのですが、近くに保育園や学校施設があるので、未就学児から小中高生のけがなどの飛び込み受診にも対応しています。
院長の専門である手の外科治療についてもお聞かせください。

【寛樹院長】手の痛みは、特に更年期以降の女性に多いですね。指が痛い、曲げにくい、こわばるといった症状の中にはリウマチが隠れていることもあります。指に痛みがなくても、形に違和感があれば整形外科の診療範囲です。こうした症状は、近年の新たな知見によると女性ホルモンが一因の疾患も疑われます。その他、骨折や捻挫、切り傷にも対応していますので、受診先に迷われる方もご相談ください。
MRIも導入されていますね。
【真一郎名誉院長】精密検査のために病院を受診する患者さんの負担を軽減し、かつ速やかに診断ができるようMRI検査装置を2001年に導入して、2021年に新鋭の機種へ入れ替えました。MRI検査は、エックス線検査ではわかりにくい詳細な骨や筋肉の状態、脊髄の状態の把握につながることが強みです。当院ではエックス線検査を基本として、より詳細な検査が必要と判断した場合に活用しています。MRIがあれば椎間板ヘルニアや膝の半月板損傷や靱帯損傷などの患者さんの、適切な治療方針を決めるための判断材料になります。お子さんの安全にも配慮された検査であり、他にも骨粗しょう症の方に多い圧迫骨折の診断、がんによる転移性骨腫瘍の発見にも役立っています。
医師と理学療法士が連携し、ニーズに沿ったリハビリを
理学療法士によるリハビリテーションにも力を入れているとか。

【寛樹院長】当院では理学療法士とともに患者さんの状態に合わせたオーダーメイドの医療を提供しています。医師と理学療法士の間でしっかりとすり合わせを行い、患者さんをより良い状態に導くことができるよう努めています。1人の患者さんを2人の専門家が診るという感覚ですね。場合によっては、患者さんが理学療法士に話された内容に沿って治療の軌道修正もします。このようなきめ細かな取り組みもあり、他院で手術を終えた方のリハビリテーションを依頼されることも多いです。
理学療法士の教育にも注力されているそうですね。
【寛樹院長】月に2回、院内で勉強会を開いています。内容は、私が研究をしていた末梢神経の再生の他、腱の構造と働きや骨粗しょう症の予防、運動指導などですね。予防・治療双方において、食べ物の節制だけでなく運動も大事です。特に腰痛の中には体幹を鍛えるトレーニングで改善が見込めるものもあります。専門的に体の構造などを学んだ上で運動指導にあたればより良いケアにつながるので、スタッフも「患者さんのために」とみんな熱心に日々研鑽を積んでくれています。整形外科疾患の症状には腰痛や肩関節周囲炎をはじめさまざまなものがありますが、当院には幅広く対応できるスタッフがそろっています。
診療で心がけていることを教えてください。

【寛樹院長】患者さんのお話をじっくり聞くことです。患者さんのお話の中には診断の鍵がありますので、じっくりお聞きした上で診断に生かしています。また医療は日進月歩していますので、新たな分野にも目を向けなければなりません。院長としてこの地で医療をお届けする立場となりましたので、長年研究してきた知識を生かした診療を届けていきたいですね。真一郎名誉院長の豊富な経験による堅実な診療と、私が大学病院で培った新しい知見による柔軟なアプローチ。この2つを融合させ、より良い診療の実現をめざします。
【真一郎名誉院長】常に患者さんを第一に考え診療を行うことです。そのためには知識のアップデートが欠かせません。時代によって患者さんの症状の傾向は変わりますから。これからも研鑽を積むことを怠らず、開業初期よりこだわってきた診断力をさらに磨いていきます。
歴史とともに培った診断力で地域密着の医療を
今年で開業30周年を迎えられますね。

【真一郎名誉院長】ありがとうございます。地域の方々の話をじっくりと聞いた上で困り事を解決したいと思い、開業を決意しました。開業当初は自分が大学で培った先進の医療技術を提供しようと意気込んでいたんですよ。しかし一般的な腰痛や膝の痛み、肩こりなどで来られる方が多く、日々診療にあたる中で手術するほどではないけれど困っている方が多くおられ、一人ひとりの悩みに寄り添った治療をすることが当院に求められているとわかりました。開業から半年後に起きた阪神淡路大震災で、地域の方々に助けていただいたことも大きかったですね。地域に根差したクリニックになろうと幅広い疾患について研鑽し、今では多くの症状にも自信を持って対応できるようになりました。患者さんに育てていただいたと感じています。それが「街のお巡りさんのようなクリニック」というポリシーにもつながっています。
今後の展望をお聞かせください。
【寛樹院長】インターネット社会といわれる今、あらゆる情報を自分で調べることができます。ただ、医療においては正しい情報が手に入るとは限りません。その道の専門家として患者さんへ正しい知識を広めるお手伝いをしていきたいです。
【真一郎名誉院長】新鋭の医療も取り入れ、経験だけでなく科学的根拠に基づいた診断を大切に、地域の方がより安心して通えるクリニックをめざしていきます。
読者へのメッセージをお願いします。

【寛樹院長】長年苦楽園地域で愛され、さまざまな方に支えていただき今の当院があります。その歴史を引き継げることはたいへん光栄ですし、今後もさらに地域に貢献していきます。真一郎名誉院長が築き上げた当院の良さを残しつつ、新たな治療法も積極的に取り入れたいと思います。
【真一郎名誉院長】体のどこかが「昨日と違う」と思ったら受診してください。寝違えだと思っていたら、実は首のヘルニアだったということもあり得ます。気づかないうちに変形が進み、受診時には治療が難しい状態になっていることのないよう、痛みが小さい間に来ていただきたいですね。豊富な治療方法を提案しますので、お気軽にご来院ください。