多くの合併症を引き起こす糖尿病
健診で早期発見し適切な治療を
千頭医院
(明石市/林崎松江海岸駅)
最終更新日:2025/10/15


- 保険診療
血中の糖をエネルギーに変えるインスリンの不足によって、慢性的に血糖値が高くなる糖尿病。自覚症状がほとんどないだけに放置しがちだが、高血糖の状態が続くことで、通称「しめじ」や「えのき」とも呼ばれる糖尿病神経障害、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、そして壊疽、脳卒中、虚血性心疾患などの合併症を引き起こすことも。それだけに、定期的な健康診断で糖尿病を早期に見つけ、治療へつなげることが重要だ。基本的には食事と運動の指導、そして薬物療法が用いられるが、「千頭医院」で糖尿病内科を専門とする堀松寛子副院長は、血糖値を長期間にわたって安定させるためには「一人ひとりに合った負担の少ない治療が大事」と訴える。今回は寛子副院長と、循環器内科が専門の堀松徹雄院長の2人に、日々取り組んでいる糖尿病治療について教えてもらった。
(取材日2025年9月29日)
目次
命に関わる合併症を引き起こす糖尿病。血糖のコントロールのため、適切な検査と治療を
- Q糖尿病の種類や、罹患しやすい人について教えてください。
-
A
▲糖尿病内科を専門としている堀松寛子副院長
【寛子副院長】糖尿病は1型、2型、その他に分類され、中でも多いのは2型です。糖尿病の怖いところは、長期の高血糖状態がさまざまな合併症を引き起こすこと。神経や目、腎臓などの細小血管が障害される三大合併症と、太い血管が障害され足の壊疽、脳卒中、虚血性心疾患などが起こる動脈硬化症の2つに分かれます。神経障害では足の親指に症状が出ることが多く、まず感覚が鈍くなり、悪化すると足裏、足首、手にまでしびれや痛みが広がります。症状が進むと痛みがわかりにくくなり、心筋梗塞などが起こっても発見が遅れることも。血糖値に関わるインスリンの分泌量は体質に左右されるので、家族歴のある人は注意が必要です。
- Q糖尿病は自覚症状がないと聞きます。治療につなげるポイントは?
-
A
▲血液検査を迅速に行うことができ、診断もスムーズ
【寛子副院長】糖尿病もそうですが、高血圧や高コレステロールなどの生活習慣病は自覚のないまま進行し、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めます。そのため、健康診断を毎年受けてチェックすることが大切です。合併症が進むと、糖尿病性網膜症による視力の低下、足の感覚が鈍くなる神経障害など、何らかの症状が現れ、そこで糖尿病に気づく方もいます。合併症を発症していなくても、例えば「いくら水分を取っても喉が渇く」といった口渇などは、高血糖で起こる症状ですから注意が必要です。中には心筋梗塞や脳梗塞を発症して初めて糖尿病が見つかるケースも。だからこそ、糖尿病を早期に見つけ、治療につなげるための健康診断は欠かせません。
- Qどのような診療方法があるのでしょうか?
-
A
▲患者一人ひとりに合わせて、食事や運動の指導を行う
【寛子副院長】基本の食事と運動の指導を行って、状況に応じて薬物療法という流れになります。食事指導では患者さんの食生活を伺い、できる範囲で習慣を変えていけるよう支援します。例えば間食を減らしたり、夏場の水分補給にスポーツドリンクを多飲される方には、カロリーがない飲み物に変更するよう促します。また、管理栄養士から一日の食事の目安を説明することもあります。運動指導では、ウォーキングが取り組みやすいので、一日の歩行距離をアドバイスしたり、室内でできる運動をご紹介したりします。薬物療法には、経口血糖降下薬、インスリン注射、GLP-1受容体作動薬注射などがあり、それぞれの患者さんに合わせた処方を行います。
- Qこちらのような糖尿病専門の医療施設を受診するメリットは?
-
A
▲合併症管理やフットケアにも注力し、早期発見早期治療に努める
【寛子副院長】院長は日本循環器学会循環器専門医で、糖尿病患者さんに多い循環器疾患を専門的に診ることができます。足の血管が詰まっていないか、膵臓や肝臓に問題がないかなど、合併症や併発症を診るための検査はほぼすべて院内で完結。腹部エコーによる糖尿病原因の精査、ABI検査での動脈硬化評価、頸動脈エコーによる進行確認などの検査が可能で、合併症管理に役立てています。また当院はフットケアにも取り組んでおり、巻き爪やたこの相談や靴選びの指導なども行っています。糖尿病の方の中には、壊疽が起こっているにもかかわらず、ちょっとしたケガだと軽く考えている方もいらっしゃるので、足の丁寧な診察が早期発見につながります。
- Q訪問診療でも糖尿病を診ていらっしゃるそうですね。
-
A
▲訪問診療でも連携を取り、糖尿病患者を診ている
【徹雄院長】当院は数多くの患者さんの訪問診療に対応しています。病院での治療を終え、在宅療養したいという方の中には糖尿病の方も少なからずいらっしゃいます。入院中は、1日4回注射する強化インスリン療法を行う例もありますが、在宅では看護師が常にいるわけではありません。そこで、当院では、糖尿病が専門の副院長と相談し、症例ごとに在宅でも負担が少ない糖尿病治療を行っています。近年は、GLP1作動薬や混合型インスリン、週1回の持続型インスリンを併用し、少ない注射の回数で治療できるケースが増え、患者さんの満足度も高く介護・看護の面でも良い効果を生んでいます。