阿部 泰尚 院長の独自取材記事
阿部内科医院
(神戸市須磨区/名谷駅)
最終更新日:2022/11/15

静かな住宅街が広がる須磨区神の谷にある「阿部内科医院」。地域がニュータウンとして開発された当初から40年余りにわたり親子2代で住民の健康を守ってきた内科医院だ。現在は父親である前院長から継承した阿部泰尚院長がメインとなり、専門である糖尿病・老年内科を主軸に内科領域全般を診療している。「患者さんがその人らしく生きられるようサポートしたい」と話す院長は、にこやかな笑顔と温和な人柄が印象的。その阿部院長を中心に検査技師・看護師・管理管理士によるチーム医療で患者に寄り添いながら支え、各種検査やアプリによる血圧・血糖の自己管理も取り入れ、合併症を未然に防ぐための工夫がされている。そんな阿部院長に診療のこだわりや注力する診療について話を聞いた。
(取材日2022年9月26日)
糖尿病・老年内科の専門家が患者に適した医療を提供
この医院が開業したのはいつですか?

1982年に父が開業しました。開業を機に5歳の時にここに引っ越してきて、この医院の2階で暮らすことになったんです。当時はこのニュータウンがまだできかけていた時で、こんなに家も多くなかったので、よくこの辺りで虫捕りをしていましたね(笑)。父の専門が糖尿病だったので、糖尿病を含む内科全般の診療で地域の人たちを診ていました。今も開業当時の患者さんが多く、昔からの付き合いの長い方もいらっしゃいます。2017年にここで診療を行うようになったのですが、自分が子どもの頃にお世話になった地元に戻ってきて、今こうして医療貢献できることは私にとってとても幸せなこと。戻ってきて良かったなと思っています。
継承するまでの経歴をお聞かせください。
大学卒業後は神戸大学医学部附属病院の老年内科という医局に入りました。そこは老年内科で、糖尿病・消化器内科・認知症・感染症など幅広く学べる環境だったんですね。その後、高槻病院の内科で研修医として一般内科、国立国際医療センターで後期研修医として感染症を学び、2007年に大学病院の老年内科に戻り、過去に感染症をやっていたということで翌年には感染制御部の副部長を務めることになりました。そこで3年間務めた頃、ちょうどDDP-4阻害薬など糖尿病の新しい薬がいろいろと登場したのをきっかけに、糖尿病内科と感染症の二本立てでは難しいと感じ、将来的に父の医院に戻ることも考えて糖尿病に本腰を入れ始めました。その後は、淀川キリスト教病院の糖尿病・内分泌内科で最後の1年間副部長を務め、2017年に副院長としてこの医院に戻り、翌年に院長を継承しました。
診療体制について教えてください。

現在は、診療は私がメインとなり、父にはワクチン接種を主に手伝ってもらっています。ほかに循環器内科、一般内科、糖尿病専門での小児科など非常勤の先生にも定期的に入ってもらい、日によっては二診制で行っています。私が内科、糖尿病、老年内科が専門なので、1型・2型の糖尿病や、認知症や生活習慣病などの総合的な内科診療に注力しつつ、風邪などの一般内科疾患や健康診断・海外渡航者のワクチン接種まで幅広く対応しています。糖尿病の治療では、外来でインスリンやGLPー1アナログ製剤による治療を受けてもらうことも可能です。患者さんは地域の方がほとんどで、高齢の方が半数以上ですね。糖尿病の患者さんは全体の4割強ぐらいです。
チーム医療と各種検査で合併症予防も手厚くサポート
診療の特徴は何でしょうか?

多職種で患者さんを見守れるようチーム医療を行っていることが特徴の一つですね。医師・検査技師・看護師・管理栄養士のチームで患者さん一人ひとりに合わせてサポートするよう努めています。検査結果のフィードバックや、服薬のフォローや説明・メンタル的なフォロー・日々の食事や運動を確認してアドバイスをし、患者さんのモチベーションが下がらないよう声かけをすることが、病気の悪化や合併症のリスクを下げることにつながるので、長期的なサポートが必要な慢性疾患の治療ではとても大切だと考えています。また、チーム医療を大きな概念で捉えると、医療の連携においても近隣の病院との連携だけでなく、診療所と診療所の「診診連携」にも重きを置いています。信頼できる地域の腎臓内科・整形外科・眼科などを専門とする開業医の先生と連携し、相談を受けたり必要に応じて紹介をしたりと、地域での医療連携体制も確立しています。
合併症を未然に防ぐためにどのような検査を行っているのでしょうか?
糖尿病の三大合併症として糖尿病性網膜症・糖尿病性腎症・糖尿病性神経障害が挙げられるのですが、それぞれ悪化すると失明や人工透析・動脈硬化・足の壊疽(えそ)などのリスクが高まります。それらを防ぐためには、定期的に受診と検査をすることがとても大切。当院では、血糖値・HbA1c・検尿の検査は検査当日に結果を報告するようにしています。検査としてはほかに、血液検査・頸動脈などのエコー検査・腰椎や大腿部で測るDXA法・心電図・神経伝導検査・動脈の硬さを測るCAVI検査・血液壁に蓄積した最終糖化産物を測定する検査(AGEs)・体脂肪や筋肉量などの測定・血糖自己測定(SMBG)、フラッシュグルコースモニタリング(FGM)など、さまざまな検査を用意しています。
アプリなども利用して患者さんと医療者が日々のデータを共有しているそうですね。

日々の血糖値や血圧、体重などのバイタルデータや食事内容・運動内容を患者さんが記録し、それを患者さんと医療者がアプリで共有できるクラウドサービスを活用しています。患者さんが自己管理することにも役立ちますし、医師が見て治療に反映したり、管理栄養士が見て食事に関するアドバイスを返信したり。情報を患者さんと共有することで、日々の生活や体調がわかり目標を定めるなど、患者さんの健康に対する意識が高くなるので、治療の継続にも役立っていますね。
糖尿病の治療において、どんなことが大事ですか?
糖尿病の患者さんは骨が弱く骨折の危険が大きいです。また骨が丈夫でも筋肉が弱かったら骨折もしやすく寝たきりになるリスクも高いので、サルコペニアやフレイルという加齢による筋力の低下を起こさないように骨や筋肉の評価が重要になります。当院では、骨粗しょう症の検査や体脂肪や筋肉量などの測定でしっかり評価した上で、筋肉量が落ちないように、常勤している管理栄養士がエビデンスに基づいた適切な栄養指導と運動指導を行っています。
その人らしく暮らしながら長生きできることをめざして
オンライン診療や訪問診療にも対応しているそうですね。

治療を受けたいけれど時間がない、足腰が弱っているなどで通院しづらい方もいらっしゃるので、生活習慣病で通院していて状態が安定している方を対象にオンライン診療を導入しました。また最近では、コロナ罹患者の中で自宅療養中で受診ができない方、もともと通院していたが受診するのが嫌になった方を対象に、火曜と木曜の午後を利用して患者さんのご自宅に定期的に訪問しています。この地域もこれからさらに高齢化が進み、訪問診療や往診の件数も増えていくでしょう。今後もそれらの状況に応じて、地域に求められることを可能な限りやっていきたいと思っています。
診療の際、心がけていることはありますか?
一人ひとりの患者さんに対して時間をかけて丁寧に診察をするように心がけています。不安な思いを抱えて通院される患者さんが、少しでも安心し、納得して治療を受けれられるように、患者さんの話をとことん聴き、わかりやすい説明をするようにしています。納得してもらった上で、薬を出したり治療を進めるようにしていますので、気軽に何でも相談していただけたらと思います。
患者さんへの想いと読者へのメッセージをお願いします。

仕事や趣味を続けたい、自分の足で歩きたい。そんな「その人らしい人生を送る」ためのお力添えをしたいと、それを心がけて日々診療しています。地域の人が安心して長生きできるよう、ここが町の人にとって「頼れる場所」になれたらいいですね。読者の皆さんへのメッセージとしては「糖尿病はちゃんと治療を続けていれば怖くない」ということ。合併症の怖さばかりが強調されがちですが、そのリスクを下げるには、治療を中断したり未受診で放置したりしないことが大事で、「大丈夫」と思って放置し続けてしまうと、症状のないまま悪化して合併症を発症してしまいます。それこそが「怖い」こと。健康診断の結果などをそのまま放置している人や、治療を自己判断で中断してしまっている人など、気になることがあれば気軽にご相談ください。