江原 重幸 院長の独自取材記事
江原内科クリニック
(神戸市長田区/西代駅)
最終更新日:2021/10/12

山陽電鉄本線の西代駅から徒歩3分、神戸市長田区にある「江原内科クリニック」は、一般内科や生活習慣病を中心に、住民のためのかかりつけ医として、地域に根差した診療を行っている。周囲の中核病院とも提携しており、診療や検査の予約、受診の相談も受けつけている。オンライン診療や長期処方、往診にも対応し、患者に寄り添った診療を常に心がけているのだそう。2015年より2代目院長を務める江原重幸院長に、これまでの経歴やクリニックの特徴、今後の展望などについて話を聞いた。
(取材日2019年9月2日)
父親と同じフィールドで勝負したくて医師を志す
医師になったきっかけをお話しください。

もともと父が医師だったので、追いかけていたわけではないですが、小さい頃から背中を見て育った影響が大きいです。とても奔放な父でしたので自分は違う道に進むつもりでしたが、高校2年生の頃、あらためて医業に向き合った時に感じるものがあり、「せっかくなら父と同じフィールドに立ちたい」と思い、この世界に飛び込むことにしました。違う業界だと同じ景色を見ているかどうかすらわからないままだったと思いますが、先人がいると、つまずいたり悩んだりしたときも必ず乗り越えられる、自分も頑張らなくてはいけないと思えますね。最初父からは「医師にはなるな」と言われていましたが、この仕事についたからこそ、父の生き方の素晴らしさがわかりました。本当に医師を選んでよかったなと感じています。
これまでの経歴についてお聞きします。
大学卒業後は西脇市立西脇病院で研修医として2年勤め、その後は日本生命病院で内視鏡を3年間、秋田赤十字病院の工藤進栄先生のところで大腸内視鏡を1年間勉強しました。その後は、入局している神戸大学の第二内科で5〜6年、明石の仁寿堂医院で2年勤務しました。その頃には父のクリニックを継ぐことを考えていたので仁寿堂医院のサテライトクリニックを任せていただき、代理院長として学びました。2008年には父のクリニックに入り、その傍らで開業の2015年まで神戸徳洲会病院で救急、内科全般を担当していました。神戸徳洲会病院では大阪大学の吉崎和幸教授と一緒に免疫センターを立ち上げ、膠原病、リウマチ、潰瘍性大腸炎、肝硬変などの診療を任されました。その中でメンタルに問題を抱えている方もたくさんいたため、精神科と連携しケアすることを学びました。
クリニックの特徴をお話しください。

設備面においては、採血、エックス線撮影装置、心電図、CAVIという動脈硬化の度数を測る機械、エコー、点滴があります。診療科目は幅広いですが、一言で言うと内科一般です。標榜としては精神科、神経内科は掲げていませんが、自律性医療の精神の要件も獲得しているため、最近ではメンタル面で受診される患者さんが増えてきています。肝臓や精神科の先生とも連携を取りながら、基本的に薬もある程度のものはこちらで処方いたします。自傷他傷の恐れがある入院の必要な患者さんについては大きな病院にお願いしていますが、日常生活の中で困っているといった場合であれば当院で診療し、どうすればいいか、どうしていきたいかを一緒に考えていくようにしています。
患者に向き合うのではなく、横に寄り添う診療を大切に
どんな患者さんが多いですか?

地元の方がほとんどで、60歳以上のご高齢の方が多いです。当院の特徴は、事情を聞いて差し上げることに重きを置いており、「○○病」ということで片づけて同じ治療をせず、話を聞いた上でその方に合った改善策を提示するようにしています。患者さんからは「勝手知ったる他人の家」と言われますね。日々の暮らしの中で、医療のことでカバーできることがあるなら、今までの私の経験や学んできたことをたくさんの患者さんのために生かしていきたい。高血圧にしろ、糖尿病にしろ、なかなか完治しない病気も多く、暮らしの中に根づいているものもあるので、日々をつつがなく暮らすための一助になればと思っています。また近年は、大学病院も含めて在日数を削っている傾向があるので、ご自身で来院するのが難しい患者さんに往診も行っています。
診療の際、どんなことを心がけていますか?
患者さんに向き合うのではなく、横に寄り添うことを診療方針にしています。医師はどうしても上のところにいる人が多く、患者さんが医師の機嫌を損ねないように、言葉を選びながら気を使っているようなケースがありますが、それでは本末転倒だと思うんです。私の場合はひざまずいて聴診器を当てるようにするなど、患者さんよりも目線の低いところから見上げ、少なくとも同じ高さで話をするように心がけています。上から見下ろして話をするのはいいことではないと思いますし、医師の本分は患者さんのお役に立つことだと思っていますので、「間口は広く、目線は低く」を心がけながら患者さんが相談しやすい環境づくりに配慮し、診療にあたっています。
先生が医師になって良かったと思うのはどんな点ですか?

医師になって10年ほどたってから、「学んだことが人の役に立てるなんて、これほど素晴らしい仕事はない」と感じました。患者さんからは「ありがとうございます」と言われるわけですが、私たちはそのために勉強してきたんです。人は一人で生きているわけではなく、生かし生かされている。私の場合は患者さんに生かされていると思っています。私の得た知識や経験がいろんな人に生かせるのは本当にうれしく、患者さんに使い切るまで使い切られることが本望です。特にこの仕事は、治った時はもちろんのこと、治らずとも生涯をまっとうされるとき、満足していただけたかどうかが目に見えてわかります。ありがとうと言ってもらえるのも、間違ったことをしてこなかった証かなとも思います。
地域に根差し、困ってる人の受け皿に
生活習慣病も診療されていますね。

当院の患者さんには特に糖尿病の方が多いですね。糖尿病は食事の問題もありますが、いろいろな事情を抱えて糖尿病になるわけなんです。人間が生きていく上で大切なのはハッピーをたくさん感じていくことですが、ハッピーを簡単に感じることができるのは間食、つまり、おやつなんです。食べることは一番身近な喜びとして幸せを感じられる行為なので、そのため糖尿病を発症する方もおり、そういう方に食事養生といっても話は通じません。まずはその方が抱えている問題を聞いて差し上げ、少しでも患者さんの気持ちが楽になることを優先しています。健康はその人の人柄や暮らしぶりを見ないとわからないので、そこを見聞きできる環境づくりに力を入れています。
今後の展望をお聞かせください。
基本的には患者さんに寄り添う今の診療スタイルで地域に根差し、困っている人の受け皿になることをめざしています。少なくとも江原内科クリニックがあるんだという選択肢を、患者さんに示し続けることができたら本望ですね。この地域にとって当院の位置づけは、おそらく話をしっかり聞いてもらえるということだと思います。すべてを救えるほどの能力はありませんが、知恵を出す努力だけは精いっぱいさせてもらっています。思うようにならなかったり、いろいろ思いを抱えてあてもなく病院に行く方もいらっしゃるので、困っている方の最後の砦とまでは言えませんが、これからもそういう患者さんの選択肢の一つとしてい続けることができればいいなと思っています。
最後に、読者へのメッセージをお願いいたします。

診察室に入ってきていきなり涙を流される患者さんもおられるのですが、私は何とかせねばと努力しますし、お望みであれば気持ちを和らげるお薬を処方したいと考えています。抱えている問題は人それぞれですし、大きな病院ではリスクだと捉えることでも、当院ではお互い頑張れるところまで頑張りたいという思いで診察させていただいています。病気は治るか治らないかという単純なものではありません。だからこそ横に寄り添う関係で愚痴をいっぱいこぼしてもらいたい。話をしていると症状の背景がわかりますし、周囲の方と情報共有することもできます。周りの理解を得られないと孤立し、かたくなになってしまうと病気も治りません。そのために当院があるんです。救うというおこがましい言い方はできないけれど、お手伝いができればという思いで診療しておりますので、お気軽にご相談くださいね。