蓮池 俊明 院長の独自取材記事
蓮池内科診療所
(神戸市兵庫区/湊川公園駅)
最終更新日:2025/10/28
湊川公園駅から徒歩5分ほど歩いた場所にある「蓮池内科診療所」。院長の蓮池俊明(としあき)先生は祖父の代から続く医師一家の3代目で、2010年に同院を継承して以来、地域の健康を支え続けている。蓮池院長は大学病院や中核病院で研鑽を重ねた循環器内科のエキスパート。循環器疾患や一般内科に加え、高血圧症や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病まで、幅広い診療に力を注いでいる。「死の淵にある人を助けることが医師の第一の仕事だと思い医師になったが、それだけではないことがわかりました。日々の変化にこまめに気づき、病気の予防、早期発見ができるかかりつけ医でありたい」と話す蓮池院長に、同院での取り組みや、患者や地域に寄せる思いなどを語ってもらった。
(取材日2025年10月1日)
専門知識と経験を地域の人々に届ける
こちらは先生で3代目になるクリニックだそうですね。

祖父がこの地で開業し、その後を父・蓮池堯明(たかあき)が継ぎました。父は内科から小児科まで幅広く診療し、地域に根差したかかりつけ医として地域の人たちから親しまれてきました。私自身もそんな父の背中を見て育ち、自然と医師を志すようになったんです。大学卒業後は大学病院の心臓集中治療室や、すぐ近くの川崎病院で循環器疾患を中心に内科診療に携わってきました。循環器の治療の中でもカテーテル治療を専門にし、心筋梗塞など命に関わる患者さんの現場に多く立ち会いましたが、そうした場面に向き合うたびに「もっと早く手を打てていたら、こうした状況は防げたのではないか」という思いが強くなっていったんです。患者さんにより身近な存在として寄り添い、予防や早期治療に結びつく医療を提供したい。そんな気持ちから2010年に当院を継承することを決めました。
こちらで診療されて15年ほどになりますが、引き継ぐ際に先生の中で葛藤はありましたか?
ずっと専門にしてきたカテーテル治療を続けたいという気持ちはもちろんありました。ただ、いずれは年齢を重ねれば手の動きも衰えてくるし、いつまでもこの治療を前線で続けるのは難しいと思う自分もいたんです。それに私は生まれも育ちも当院のある神戸の荒田町ということもあり、最後は地元に戻りたいという思いがずっとありました。そんな折に川崎病院で勤務することになり、医師として神戸に帰ってきたんです。すると、近所で開業されている先生方や地域の患者さんが温かく迎えてくださったんですね。ですから、当院を引き継ぐことに大きな迷いはありませんでした。むしろ、地域に恩返しをしたいという気持ちのほうが強かったですね。今も父の代から続いている保育所や幼稚園、小学校の学校医を務めていますし、介護老人福祉施設の嘱託医もしています。これからも地域に根差し、皆さんの暮らしに寄り添うクリニックでありたいと思っています。
こちらにはどのような患者さんが来られますか?

この地域は震災を乗り越えた家屋が多く残っていて、昔から住んでいる方が今もたくさん暮らしていらっしゃいます。そのため、ご高齢の方がとても多いんです。当院では一般内科から循環器内科、小児科まで幅広く診ていますが、地域の特性もあって今は高血圧症や糖尿病といった生活習慣病で来られる方が圧倒的に多いですね。私は循環器内科を専門にしていますので、狭心症などの虚血性心疾患や不整脈といった心臓病の治療や管理も行っています。もちろん風邪などの一般内科の診療もしますし、予防接種や各種検査も行いながら幅広く対応しています。
「なぜ」を伝える、患者に寄り添う診療
診療の際に心がけていることを教えてください。

患者さんをお待たせしてしまうのは心苦しいのですが、それでもできる限り一人ひとりとお話しする時間を大切にしています。よく「診察室では先生に話しかけづらい」「先生を前にすると緊張する」という声を耳にしますよね。だからこそ、当院では何でも気軽に話せる雰囲気を感じていただけるよう普段から意識しています。例えば、私のほうから「昨日の夕飯は何を食べました?」とか「ご家族の体調が良くないそうですね」といった具合に、できるだけ声をかけるようにしています。そうした何げない会話をきっかけに、「ご家族の具合が悪くて夜眠れず、そのせいで血圧に変化が出ている」といった背景に気づけることもあります。患者さんとの距離が近いからこそ、見えてくることが本当にたくさんあるんですよ。
患者さんへの説明や治療で大切にしていることは何ですか?
患者さん一人ひとりに寄り添った説明や治療を大切にしています。例えば「血圧が高いから下げましょう」と漠然と伝えるのではなく、「なぜ血圧を下げる必要があるのか」「なぜこの薬ではなく、こちらの薬が適しているのか」といったことを丁寧にお話しするようにしています。患者さんご自身が納得して治療に向き合えることが何より大事ですからね。私は比較的はっきり伝えるほうで、良い結果が出た時は一緒に喜びますし、逆に悪い時にはごまかさずにきちんとお伝えするようにしています。その上で「これからどんな治療ができるのか」「どう病気と向き合っていくのか」を患者さんと一緒に考えていく姿勢を大事にしています。
患者さんにはどのように伝える工夫をされていますか?

患者さんの多くが高血圧症や高血糖、脂質異常症といった生活習慣病を抱えています。これらを放置すると動脈硬化が進み、心臓や血管の病気、認知症の原因にもつながるといわれています。ですから血圧を下げ、糖尿病をしっかりコントロールすることが大切ですが、その必要性はなかなか患者さんに伝わりにくいこともあります。最近では血圧を130mmHg未満に抑えることで寿命や生活の質を保てるといわれていますが、なぜ数値の基準がそうなっているのか、その背景をきちんと説明するには専門的な知識が欠かせません。認知症に関しては、原因の3分の1は脳の血管障害による脳血管性認知症です。つまり、血圧を適切にコントロールすることで、将来的に認知症のリスクを減らせる可能性があるわけです。私は今の数値や状態だけをお伝えするのではなく、「このまま進んだらどうなるのか」といった将来の見通しも含め、できるだけ具体的に説明しています。
「鬼手仏心」の思いを胸に地域医療に向き合う
先生を頼りにして来院される患者さんが本当に多いと伺っています。

ありがたいことに、他の病院に通われている患者さんが血圧の相談に来られたり、ご紹介で「心臓を診てほしい」と来院されることも少なくありません。こうして頼っていただけるのは本当に光栄なことです。当院の設備自体は心電図やホルター心電図、動脈硬化測定検査など、決して特別なものではありません。ただ、心電図を診るAI診断が発達してきたとはいえ、やはり機械だけではわからないことも多いんですね。私は循環器を専門にして35年以上になるので、機械では拾えない微妙な違和感を判断できるのも、日々の診療で培ってきた経験の力だと感じています。また、長年通ってくださる患者さんの中には90歳を超える方もいらっしゃいます。そうした方々には最期まで診させていただきたいという思いで往診にも伺っています。
先生は勉強会にも積極的に参加されているそうですね。
循環器のことについてはこれまでの経験で理解していますが、逆に専門外の知識を深めるために、新薬の使い方といった勉強会には積極的に参加しています。医療は常に進歩していくものですから、自分自身もアップデートし続けることが大切ですし、その学びを患者さんへ還元できるよう努め続けたいです。私の家には「鬼手仏心」という家訓があります。これは「手は鬼のように厳しく人の体を傷つけることがあっても、心は仏のように慈愛に満ちていなければならない」という意味です。医師は時に患者さんのために痛みを伴う処置をしたり、あえて厳しい言葉をかけたりすることがありますが、その根底には必ず患者さんを救いたいという思いがなければならない。そんな気持ちを忘れずに、日々の診療に向き合うようにしています。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

当院では患者さんのお話をしっかりと聞き、丁寧に対応したいと考えています。高血圧症や糖尿病、脂質異常症などの病気は日常からの管理が非常に重要です。循環器を専門とする医師として患者さん一人ひとりに合った検査、治療を行い、できる限り納得していただける診療を心がけています。もちろん、一般内科の診療も行っていますので、体調のことや日常生活でのお悩みなど、気になることがあれば気軽にご相談ください。

